特集:新エネルギー最前線

風力発電 地域の風をトータルコーディネート
風力発電は,風という自然条件に左右されることから,安定したエネルギーの供給が難しい。 事業を成功させる最大のポイントは,施設をどこに建設するかである。当社は風況シミュレーションを用いた適地の選定から,景観や環境へ配慮したシステム設計,事業提案,建設まで,風力発電のトータルコーディネートを行っている。

飛躍的な普及が進む,風力発電
 今日,新エネルギーの中でも風力発電は,急速な伸びを見せている。環境への負荷がほとんどなく,施設のランニングコストやメンテナンス費用もわずかであることから,ヨーロッパ諸国やアメリカなどを中心に急速に普及している。
 わが国においても近年,北海道や東北地方などの山岳部や沿岸域で,導入が着実に増加しており,新しい計画も次々と立てられている。2000年12月末,日本での全体発電量は14万5,000kWだったのに対し,今後2010年までに300万kWに達すると予想される。また,風車も年々大型化している。上空の良好な風を捕らえ効率の良い発電を行うために,最新の風車は高さが100mにも及ぶ巨大な構造物となる。今後1,500kWクラスの大型風車2,000基の建設が見込まれている。

岩屋ウインドファーム全景
岩屋ウインドファーム全景。当社は風車の基礎工事と組立て用の敷地造成工事,資材運搬用の仮設道路,管理棟などを施工している

日本最大規模の風力発電基地
 寒立馬の放牧で有名な青森県下北半島の東先端に位置する尻屋崎。ここは平均8.9m/sの強風が年間を通じて吹き付ける,風力発電の適地である。現在,この岩屋地区の尾根約3kmにわたって,巨大な風車25基の建設が進められている。この「岩屋ウインドファーム」は,完成すると日本最大規模の風力発電基地となる。ここで設置されている風車の高さは68m,直径62mのプロペラが,定格出力1,300kWの電力を生み出す。総発電容量は32,500kWで,これは約18,000〜20,000世帯の年間消費電力量に相当する。2001年12月に発電開始の予定である。

ロータの組立状況
ロータの組立状況
ロータの取り付け状況
ロータの取り付け状況
地図 大型ウインドファームの先駆けとなった東北電力
  大型ウインドファームの先駆けとなった東北電力竜飛ウインドパーク。当社は風車の基礎工事を担当した

風況シミュレーションにより適地を選定
 風力発電の立地には,年間の平均風速が6m/sを越し,風向も安定しているなど,風況が良いのが第一条件である。わが国は,地形が複雑で風の把握が難しく,風力発電には向かないとされてきた。そこで,当社が開発した風況シミュレーション技術が威力を発揮する。これは最新の風の数値予測技術を応用したもので,高層の気象データと地形・土地利用データから日本全国の風の良い有望地点を短時間に把握することができる。この技術を利用することにより,適地選定や風況調査にかかる時間,費用を大幅に低減することができるようになった。

風況シミレーション技術


風況シミュレーション技術
風況シミュレーションは,ネスティングと呼ばれる手法を用いる。まず,気圧分布や標高データ,人工排熱量などのデータをもとに数100km四方の広範の風向・風速などの風況をコンピュータにより求める。次にその結果に基づき,繰り返し計算を行うことで範囲を狭めていく

事業化から地域総合開発への提案まで
 地域の風の恵みを最大限活かすためには,周辺施設への最適な電力供給を考え,エネルギーコストの低減を図ることが重要である。そのためには周辺施設の電力需要や送電線容量を考慮し,経済性が最も良い風車規模を設定した発電システムを構築することが不可欠である。山岳域や沿岸域の大規模な風力発電施設の大型ウインドファームでは,風車の輸送・建設の可否が事業の決め手となる。また風力発電施設が地域と調和するには,景観,騒音,電波障害,生態系への影響など多方面からの検討も必要である。
 当社は,長年培った地域開発事業のノウハウに加え,土木,建築,機械据付,及び電気設備の総合エンジニアリング力を用いて,様々な風力発電事業の提案を行っている。下水処理・廃棄物処理施設や地域コミュニティーセンターなど地域のインフラ設備との組合せでは,施設の運営にかかる電気代を大幅に軽減するとともに,既存配電線への連携により余剰電力を売電するなど,実効性のある提案を数多く行っている。

風観シミュレーション技術
大型ウィンドファームでは,高さが100m近くにも及ぶ巨大な風車が林立するため,地域の景観や生態系に配慮した計画が必要である。当社が開発した景観シミュレーション技術により,周辺環境と調和した施設計画を立てることができる


シミュレーション例
シミュレーション例。上空からの眺めや,人の目線など,様々な景観を検証することができる

当社が提案する風力発電事業例

下水処理施設
下水処理施設 ばっ気のためのブロアやポンプなどの動力費の低減が課題であり,水処理と風力発電のシステム化により,施設のライフサイクルコストの低減が実現できる
 
漁港の再開発
漁港の再開発 風力発電とコージェネレーションの併用システムを提案。地場物産・加工施設及び温浴施設の電気・熱の大部分を新エネルギーでまかなう




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