環境を守り、文化を育む新技術AIRS

オゾン層によくないフロン、漏れが気になるアンモニア

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 冷凍・製氷に使われる冷媒には、 主に日本や、 アメリカで用いられている フロン系と、 ヨーロッパで多く使われている アンモニア系の2種類がある。 そしてそれらを使った冷凍機で 不凍液(ブライン)を循環させたり、 フロンやアンモニア液を 直接流したりして冷却を行っている。
 よく知られているように フロンガスはオゾン層を破壊し、 皮膚がんの急増、 農作物の被害へとつながっていく。
 このフロンガスの影響で、 オゾン層が 年々地球規模で薄くなっていることは、 周知の通りである。 西暦2020年までには フロンガスの生産・消費を 全廃することが国際会議で決まっており、 世界中の企業で フロンを使わない方向へと 移行が進んでいる。 現在では代替フロンもあるが、 生体に及ぼす影響については まだ研究途上にあると言われている。
 また、 パイプの中を循環する アンモニアや不凍液は、 地震や配管の劣化によって液漏れし、 土壌汚染や水質汚染の原因となるおそれもある。 ヨーロッパでは これらが漏洩した施設周辺では、 悪臭、 刺激臭が漂い、 周辺の樹木が枯れ、 住民の頭痛や 眼痛の原因ともなっている所もあり、 充分な管理運営が必要である。

日本の技術で新しいものを

 冬季オリンピックの種目でもある ボブスレーや リュージュのコースも、 これらの環境汚染の原因となっている 物質を使って作られている。 早急にフロンやアンモニア、 不凍液を使わずに ボブスレーやリュージュの施設を作る 技術を構築しないと、 スポーツとしての、 存続自体が危ぶまれる。 そう考えた国際ボブスレー連盟、 国際リュージュ連盟の関係者は 1992年6月、 リレハンメルで行われたボブスレー ・ リュージュ国際会議で 新しい技術の検討を提案した。
 1992年8月、 国際ボブスレー連盟、 国際リュージュ連盟、 IOCの命を受け、 日本ボブスレー ・ リュージュ連盟(JBLF)の代表が 当社を訪ねて来た。
 人類が健康で 豊かな生活を送る基盤となるべき スポーツの施設建設が、 環境や自然を破壊してはいけない。 それが、 鹿島とJBLFの共通の願いであり、 夢となった。 なんとかしてその夢を実現しよう。 夢の実現のために、 当社の持てる技術力を発揮しよう。 鹿島のエンジニアたちが立ち上がったのは、 それから間もなくのことであった。

空気と水と電気だけを使って

 空気を圧縮し、 急に膨張させてから温度を下げる。 古来、 この原理を応用して、 冷却のために 様々な技術開発がされてきた。
 それがなぜ現在使われていないのか。 一言で言うと効率が悪いからである。 フロンやアンモニアを使った方が、 水と空気だけで作るものよりも 効率よく冷やすことができる。 しかし、 前述のように 環境破壊につながる要因も多く持っていた。 このような技術だけに頼ったスポーツ施設では、 今後の存続が危ぶまれ、 つまりはそのスポーツと それに付随する文化が 滅びる運命となるのである。
 できるだけ環境に優しい物質を使って、 いかに冷却システムを作るかが、 当社に課せられた課題だった。 新しい技術の開発であると同時に、 スポーツ文化が環境に対して 何ができるかという挑戦でもある。
 当社がJBLFから依頼を受けたのが 1992年9月。 翌10月には 水と空気と電気によって 冷却システムを作ることが決まった。 設備設計部、 技術研究所、 営業第二本部、 土木設計本部などのエンジニアが集まり、 冷却装置だけでなく、 システム全体での性能アップを目指して 研究開発を進めるべく、 プロジェクトチームが発足した。 それと並行して 原理装置の検討・製作を開始し、 1993年6月の札幌国際見本市に出展した。
 1994年6月には、 プロトタイプを製作、 当社技術研究所で、 盛大な実演展示発表会を行った。 また、 1994年10月には ドイツのニュールンベルグで行われた 「国際冷凍空調展」 へ出展。 世界の注目を集めた。 プロトタイプのAIRSは、 現在性能耐久試験を実施している。 AIRSは確実にその名を世界に広めている。


写真は鹿島月報より転載

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