社長インタビュー

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1996年を迎えて

社長 宮崎 明

 景気回復の遅れに伴い、相変わらず厳しい競争が繰り広げられている建設業界。 それに勝ち抜くために、当社はどう対処していくのか、そしてそれに向けて我々社員は何をなすべきか、 1年の新しいスタートにあたり、社長にお話を伺った。
(聞き手:広報室長)


建設業の社会的使命を実感した1995年

◎昨年1年を振り返って、ひとことお願いします。
 昨年はオウム事件、急激な円高、不安定な政治情勢など、社会的にも経済的にも不測な出来事の多い1年でした。 特に1月17日に起きた阪神大震災は戦後最大の被害をもたらしました。 私自身、震災の翌日に現地に乗り込み陣頭指揮をとったのですが、 最も印象に残ったのは現地の社員はもちろん、全国各地から駆けつけた社員の皆さんの応援を得て、早急かつ高度な復旧対応ができたことです。 皆さんの文字通りの不眠不休の活動は、得意先はもとより、社会一般からもお褒めの言葉をいただき、我々の仕事の重要さ、責任の重さを自ら体感することにもなりました。 また被害調査報告書、振動実験台を使った公開実験などは、マスコミを通じて報道され、さまざまな分野から高い評価を受け、制震・免震、耐震診断、補強の問い合わせも数多くありました。 その結果、“地震技術の鹿島”としての認知を得、研究・開発の成果をあげています。地震ではじまり、地震に終わった一年ではなかったでしょうか。

商品化できる技術の開発を

◎当社の大きな財産は技術開発にあるわけですが、当社の技術開発についてのお考えをお聞かせください。
 当社は非常に優秀な技術陣を持っています。それが阪神大震災の時に証明されたことは周知のとおりです。 しかし、その優れた技術も飯の種にならなくては企業としては困ります。『技術の商品化』を常に頭において開発に臨んでほしいですね。 売り込みができないような技術じゃ駄目です。また、要素技術の研究開発に止まるだけでなく、それを組み合わせた技術も生まれなくては。 組み合わせて商品化するという意識が、部分的にあるものの当社にはまだまだ足りない。 そういう仕組み・組織を社内に作り、技術開発グループが営業のニーズを聞く、つまり、横のつながりから商品化に結びつく技術を開発するシステムが必要ですね。 また、技術開発の担当者は、社内でアンケートをとるといった受け身の姿勢でなく、自分で現場に出向きニーズなりシーズを吸収しようという心構えをぜひ持ってください。
 当社の技術力が優れていると言っても、免震構法の例を見ればわかるように、すぐに他社も追随してくる。 しかし、先に売り出したところが当然優位性を持ちます。2番目以降じゃあまり意味がない。当社は、技術が完全なものにならないと発表したがらない。 いくら素晴らしい技術を開発していても、実証実験も何もかも全て終わらせ、完全なものにしてからでないと表に出さないという姿勢は、 今ほど競争が激しい時には、せっかくの開発技術の成果を半減させてしまう場合もあることを考慮する必要があります。 長野のスピードスケート場のように、施工しながら技術開発し、その成果を発表していくケースがもっとあってもいいと思います。 必要に迫られての効果、効力も期待できますからね。未完成交響曲でもいいのです。なるべく早く発表し、アピールすることが大事だと考えます。

時代の流れをつかめ

◎建設市場の動向はいかがでしょうか。
 建設省の発表によると、2010年まではインフラストラクチャーを中心とする社会資本整備をする必要があり、建設市場は上昇の傾向にあるとされています。 それ以降になるとヨーロッパのように、新規投資よりも維持管理やリニューアルの割合が多くなるでしょう。 昨今のリニューアル工事の増加をみると、この兆候がすでに表れてきている。いつまでも新規工事にばかり目を向けていては、市場構造の変化に取り残されてしまいます。 10年、20年先を見越して、今から変化に対応できる体制づくりが必要となっています。 こうした認識に基づいて、建築技術本部にリニューアル室を設置しました。一昨年設立した、当社の関連会社であるカジマ・リノベイトもそういったマーケットを狙ったものです。

元気で明るい鹿島をめざして

◎社長は、“元気で明るい鹿島”をつくろうと呼びかけられていますが、このキャッチフレーズの狙いとお考えを伺いたいのですが。
 まず、社員の皆さんには健康であってほしい。健康は財産です。健康でないと、ネアカにもなれません。
 景気も、会社の経営状態も決していいというわけではない。こういう時だからこそ、社員の皆さんに会社を盛り上げていってほしいと思います。 当社の社員は、ジェントルマンではあるけれど、おとなしい、野性味が足りないと言われます。もっと、荒々しく暴れてください。 女子社員も含めて、仕事に対してだけでなく、何事にも積極的に取り組んでほしい。どんな小さなことにも、暖かみを持って接していれば、必然的に行動が輝いてきます。 輝くためには自分を磨くことが必要です。働く人の行動がきらきら輝いていれば、美しい職場、すなわち活気に満ちた前向きな職場になります。 そんな職場が私の理想です。

写真は鹿島月報より転載

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