■建物を最上階から施工
Grow-UPシステムは、従来の建築工法とは全く異なる建築生産システムである。建物を最上階より一層ずつ完成させ、これを順次プッシュアップの上、下階を連続繰り返して施工していく自動化工法である。つまり、今回適用の決まった千種社宅家族寮の場合、最上階の9階を地上部分の生産工場で造った後、順次下階を生産工場で造っていく。
このGrow-UPシステムは、当社にとって市場需要の多い9〜15階程度の高さで、建物幅と高さの比が3以下の中高層ビルをターゲットにしている。また今後このシステムを応用することによって、既存のビルを増築する場合に、屋上階ではなく、1階部分に新しい階を継ぎ足したり、既存の建物の下に免震装置を組み込んだりといったことも可能になる。
■Grow-UPシステムの特徴
多くの可能性を持った革新的工法であるGrow-UPシステムの特徴は次のとおりである。
(1)建物の1〜4階を固定化した生産工場とすることにより、自動化を取り入れた製造業的手法による情報化施工が実現できる。
(2)構造形式は鉄骨造のみならず鉄骨鉄筋コンクリート造にも適用可能で、他社の自動化工法と比べ汎用性が高い。
(3)高所作業がなくなり、安全性が向上する。
(4)在来工法と比べ、工期は30%短縮、コストは同等以下に押さえられる。
(5)仮設的に覆われた生産工場から、完成された建物が建ち上がるため、近隣へ良好な環境が提供でき、また産業廃棄物排出量も半減できる。
■新しい生産システムの構築を目指して
現在、産業界のあらゆる企業が抜本的な生産性の向上を目指してリストラクチャリングに取り組んでいる。その手法のほとんどはコンピュータによる情報の統合化であり、近年、建設業界においても「CIC(Computer Integrated construction)」として、生産情報の統合化に取り組み始めている。
建物を合理的に生産する際にも、コンピュータによる情報の統合化が今後ますます不可欠になってくる。最初の設計段階で生まれる図面情報から、計画・管理に亘る建築生産の各過程に流通する膨大な情報を、データベースを介してコンピュータで統合管理し、生産性の向上と品質保証の徹底を実現していくことが望まれる。今回のプロジェクトを核にして、今後当社でもCICに挑み、社会的ニーズや企業環境の変化に対応していく方針である。
■本年12月の着工に向けて
Grow-UPシステムは、当社の建築技術開発本店プロジェクト「全自動建築生産システムの開発研究会」で開発されたものである。今回の名古屋支店千種社宅家族寮の実用化に当たり、建築技術本部技術開発部を中心に社内関連部署と連携の上、システムの実用化に取り組んでいく。
なお、来年初夏頃に、Grow-UPシステム第1号の名古屋支店千種社宅家族寮建築工事の社内及び社外向けの見学会を予定している。
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