建物の被災状況

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 建物の被害状況を見ると,国道2号,JRに沿った1〜2kmの幅の住宅街で,古い瓦葺き屋根の木造家屋が多くの被害を受けた。 関西地方は,台風などの風で飛ぶのを防ぐために屋根瓦は重く,湿気を防ぐために瓦の下に土を敷いている場合も多い。 それが災いし,屋根の重みで家屋が潰れたものが多かったものと思われる。 これらの家は,1階の柱が折れて2階が残ったり,2階も破壊されて屋根だけが残ったり,倒壊しなかったものの1階の柱が変形したものが多い。
 また,道路に面した商店の場合,柱の間を広く取っていて,ここから壊れたものも多く見受けられる。
 中高層建築物の破壊は,数が多く密集していた神戸市三宮地区に集中しているが,断層上に沿った各地にも多く見られた。 全壊しているものや,中層部分や1層部分のみの崩壊など,ビルによって破壊の形態が異なっている。 ただ,破壊していない中高層建築物も多く,構造計画上の差や構造ディテール上の差が原因であると思われる。 中間層が破壊されたり,1階の柱部分が破壊された中高層建築物は,いくつかの原因が複合していると見られ,今後,調査結果をもとに詳細な分析が必要となる。 しかし,総じて中高層建築物の破壊は,鉄筋コンクリート構造で,古いものが多く,また,破損した階から構造が違っていたり,柱の大きさが変わっていたりするものが多いようである。 工事中のマンションでは,未完成の最上部から崩壊しているものもある。
 高層,超高層建築については,倒壊したり変形したりといった顕著な被害は見られなかった。 大地震の洗礼を受けていないと言われた超高層建築物であるが,これらは,構造評定(国が,高さ60mを超える建物に義務づけている構造審査)を受けたしっかりした構造設計になっていることに加え,動的設計(地震や強風などで建物がどう揺れるかをコンピュータで計算して,それを構造に生かす設計)が施されているためである。
 構造物の破壊は,活断層に沿ってその南側に集中しており,断層に沿った南側地域の大きな地盤の振動が原因であることは明らかである。 それぞれの建築構造物の被害状況については,今後も調査をすすめ,改めて分析結果を報告する予定である。
 木造住宅の崩壊

 中低層建物の崩壊(全体)

 中高層建物の中間層崩壊

 構造無被害の超高層建築


写真は鹿島月報より転載

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