――ビルが倒れる,構造物が壊れる要因は様々だと思いますが,被害を免れた建物はどういうところが良かったのですか。
中島 5年程前に当社の設計施工で完成したホテルモントレ神戸は,まさしく三宮の中心にあり,ホテルに近づくのも大変なくらい周りの被害の大きい場所にありました。
ところが,比較的安定した平面計画とはいえ,スペイン瓦や彫刻などひとつも被害を受けなかったのです。
得意先の社長から,よくここまで丁寧にきちんとやってくれたと非常に感謝されました。
設計はもちろんですが,施工がしっかりしていたからですね。
ホテルモントレ神戸。手前の植木鉢は壊れたが、噴水は無事であった。
もうひとつは,六甲アイランドにある化粧品メーカーの関西物流センターです。
これは,周りは液状化が進み建物や倉庫に被害があった中で,地震の翌日から仕事ができる状態だったそうです。
綿密な構造計画に基づいてフローティング工法を採用していたわけですが,やはりきちんとやっているものは被害が少なかったようです。
設計・エンジニアリング総事業本部では,地震発生後すぐに,耐震診断対応室を設置し,『建築物の耐震診断と補強工法』のパンフレットを作成,全支店に配布して営業と一体になって得意先の要望に迅速に応えています。
「建築物の耐震診断と補強工法」のパンフレット。
現在,神戸以外からも350件以上の耐震診断の問い合わせがきています。 超高層ビルも含めての当社の実績が評価されているのではないでしょうか。
――土木構造物はいかがでしょうか。
野尻 阪神高速道路公団から依頼を受け,被害を受けた約1,000本の橋脚を調べました。
多少壊れてはいるものの当社施工物件の中には施工不良は見られませんでした。
道路橋の耐震設計指針の見直しは1971年に一度,その後1980年により丈夫な設計指針に変わり,更に1990年に見直されていたのですが,被害にあった高速道路は,古い指針または過渡期によるものが多かったのではないかと思います。
空から見た神戸市街地の被災状況。
All rights reserved, Copyright (c) 1995 KAJIMA CORPORATION