企業のブランドとは一体何か?
企業におけるブランドの重要性が注目され,多くの企業が自社の強力なブランドをいかに構築し,保持していくかを模索している。
まず始めに「企業ブランド」について,当社の社員はどのように考えているのだろうか? |
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藤原 企業のブランドとは,一言で言うと「実現できる価値のアイデンティティー」といえるのではないか。つまり,「その会社が何を実現するか」ということです。ソニーの場合,この会社の製品を買うと何かおもしろいことがあるのでは?という期待感がある。トヨタであれば,安全で確実な車というだけでなく,ハイブリッドカーのように,普通の車を買うよりは環境にいいかなというような期待です。何かそのブランドを信じることによって,自分の期待したもの,時にはその期待以上の価値を実現できると確信できるもの,それがブランドであると思っています。
井部 例えば,ソニーという企業はいまや何をやっている企業なのかがわからなくなっていると思うんです。電器産業なのか,情報産業なのか,あるいはサービス業なのか業態がわからなくなってきている。そのことによって逆にソニーというブランドを我々が強く感じるようになっているような気がします。「何をやっているのかわからない」ということが,むしろひとつのブランドになっているのではないかと思うのです。
中川 ソニーは今ではそういう企業ブランドを築いていますが,その前提には「商品ブランド」があると思うのです。カセットテープレコーダーやウォークマンなど世界的にヒットするような商品をこれまでに数多く生み出している。「商品ブランド」がまずあって,それがソニーの「企業イメージ」につながり,ソニーの「企業ブランド」という形になっていると思うのです。一方で建設業を考えてみると,「超高層の鹿島」のような商品ブランド的なものは既になくなってきていますが,当社は新しい分野に常に挑戦し続けているというイメージが建設業界の中ではあるので,企業ブランドがかなり高い方なのではないでしょうか。 |
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環境本部企画管理室 藤原繁太郎 |
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建築技術本部技術部 井部 博 |
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鹿島ブランドを感じる場面は?
企業の持つブランドは,その企業が生産する商品群による「商品ブランド」と,その企業の事業そのものが社会に受け入れられる「コーポレート・ブランド(企業ブランド)」に分けられる。同じ機能を持つ商品の中から,消費者から,社会から,顧客から選ばれる理由,すなわち付加価値の部分がブランドであると,第1回では述べた。多少価格が高くても,そのブランドの商品を購入することで生まれる付加価値がブランドなのだ。鹿島が社会や顧客から選ばれる理由,すなわち「鹿島ブランド」の根幹を成すのは,「技術と品質,そして真摯な姿勢に対する顧客の信用・信頼」であろう。社員は,日々の業務の中で鹿島ブランドを肌で感じることはあるのだろうか?あるとすれば,それはどんな場面なのだろうか? |
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田辺 土木では,鹿島の場合,かなり強力なブランドが存在していました。高度成長期,集中的に臨海工業地帯の工事がとれたというのは,ドックをはじめとして他社にはできない「設計技術力」があったからなのです。コンピュータのない時代に安全性を評価するためには高度な設計力が必要だったのです。もちろん,施工力も大きな要素でしたが,差別化できた最大の理由は,他社にはできない設計ができたこと。「鹿島でなければできないこと」が確かにあったのです。しかし,現在では技術は平準化され他のゼネコンとの差別化も難しくなりました。また,公共工事の場合,入札制度によりコストでしか判断されないようになってきている。また,現在の技術開発を見ていても,その技術によって飛躍的に業績が上がったというような画期的な技術は見当たらなくなってきた。土木も建築も含めてそう思います。
井部 技術開発をやっていると,技術研究所や現場などへお客さまを案内することがあります。そうすると「こんなことを鹿島がやっているのか」と驚かれることがあるんですね。今までは「ものをつくる」ことが我々の本業だったわけです。ものをつくる技術については超高層を含めて,まさに一級品をつくれるようになった。しかし,今研究所などで行っていることは,「これから時代に何が求められるか」ということです。それは例えば緑化であったり,生ゴミから電気をつくるメタクレスだったりするわけですが,そういう新しい分野を先取りして取り組んでいることに,皆さん感心される。これまで当社は超高層ビルにしても,パイオニアとして常に新たな分野に挑戦してきた。そうした「先駆的な姿勢」をお客様に感じてもらうことが鹿島のブランドであるといえるのかもしれません。
福田 開発事業をやっていると,共同事業者の方々から「さすが鹿島さん」と言われることがあります。人としてはもちろん,そのバックボーンには信頼感があるのだと思います。それは設計力や施工力,技術力,事業全体のコーディネート力であったりするのだと思いますが,能力がなければだれも信じてくれない。能力があるからこそ信頼されて,次につながっていく。
今崎 エンジニアリング分野に関して鹿島がブランド力を発揮できるところは,建物,つまり,ハコだけでなくソフトを含めて全体をコーディネートする能力,つまり総合力だと思います。個々のシステムや機器についてはメーカーにかないませんが,ソフトやITを含めてトータルにコーディネートできるところが,当社の大きな強みであると思います。 |
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土木設計本部設計管理部 田辺寛明 |
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エンジニアリング本部企画管理室 今崎 論 |
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