特集:長い時間のお付合い 地域の絆に支えられる鹿島の前線基地

 
新居浜営業所 MAP

当社が四国に支店を開設する足掛かりとなったのが,新居浜営業所である。
得意先の発展と共に受注を延ばし,地域に深く溶け込んできた。

先輩たちが築いてきた営業財産を大切に引き継ぎ,信頼関係を積み重ねながら,これからも地域に密着した営業を展開する。

昭和62年頃の新居浜営業所
現在の新居浜営業所。S造,2階建てで,1997年に建替えられた。営業部門・事務部門あわせて7名が執務する
地域の発展とともに
 新居浜市内山麓部の別子銅山で銅の採鉱が始まったのは元禄4(1691)年のことである。世界でも稀に見る大鉱床とあって,時の幕府も採掘を後押しし,一時は別子山中に1万2,000人もの鉱山関係者が居住した。
 昭和18(1943)年,鹿島組大阪支店が,四国で初めての工事を住友化学の関連会社から受注。新居浜の隣町に多喜浜出張所を開設した。敗戦と火災から閉鎖となり,一時撤退したが,昭和21(1946)年に多喜浜塩田工事を受注して再度拠点を開設した。その後,住友金属鉱山の銅山開発工事の受注増大に伴い,昭和23(1948)年に別子出張所を設置,これを機に四国支店が開設された。
 別子銅山は昭和48(1973)年に閉山となったが,拠点出張所の統廃合に伴い昭和52(1977)年,新居浜営業所となった。主に臨海部の住友グループ各社からの工事を担当し,四国支店内5営業所中トップの売上高を誇った時期もあった。
 現在,営業所の管轄は,人口約12万6,000人の新居浜市のほか,両隣の西条市(約11万5,000人),四国中央市(約9万3,000人)となっている。民間企業からの受注に加え,地域に深く密着した営業で市内の公共施設なども多く手掛けてきた。既施工物件のメンテナンス工事などを含め,工事の件数は年間数百件にのぼる。
 曽我部憲一営業所長は,「大都市の案件に比べると,規模が違います。1件あたりの受注金額は,桁が一桁も二桁も違うのではないか」と謙虚に語るが,この受注の積み重ねにはいぶし銀の輝きがある。
信頼関係と伝統を引き継ぐ
真鍋勝義営業次長 真鍋勝義営業次長は,新居浜生まれの新居浜育ち。入社してすぐに現場の運転業務を担当し,その後営業所で現場の資材調達業務を経て,39歳の時に営業担当へ転身した。64歳の現在も,雇用を延長して受注活動に貢献している。
 「若い頃に体育指導員や自治会活動などの地域活動をしていたこともあって,もともと知り合いは多かった。小さな街なので,営業活動をするには,こういった人脈が役に立ちました。地元出身の利点ですね」。
 営業の基本は先輩の後について見よう見まねで学んだ。「この営業所は,昔から銅山工事とともに歩いてきたので,会社の存在が街に浸透していました。地域や街の人との信頼関係の構築は,先輩たちが積み重ねてきた歴史のお蔭です」。
 営業所は民間工事だけではなく,市役所庁舎や消防署,野球場なども施工してきた。「やはり自分の会社が,地元に貢献できるのは嬉しいですね」。
まずは得意先第一
曽我部憲一営業所長 曽我部所長も新居浜市の出身である。入社以来,ほとんどを新居浜地区の土木工事現場で過ごし,2年前に営業所長となった。
 「前任の所長から引継ぎを受けましたが,私の中では『顔つなぎはできるが,人脈は引き継げない』との考え方です。あとは自分の努力次第。得意先や地域に対して,献身的に向き合うことで,どれだけ人間的に信頼してもらえるかが勝負です」と語る。
 とはいえ,何十年もかかって引き継がれてきた得意先との信頼関係は,貴重な財産になっている。「新居浜市は県庁所在地のような大都市と違い,建設への設備投資にも限りがある。それだけに受注には地域密着の度合いがものをいう」と,地域との長い間のお付合いの効果を話す。
 「現場と営業の温度差をなくし,得意先が困っているときすぐ駆けつけ,的確迅速な対応で信頼を勝ち取る」,「先輩達が背負ってきたずしりと重い地域の絆をみんなで受け継ぐ」。以上をモットーに,曽我部所長は新居浜営業所を牽引する。
歴史と土着の度合い
白石建設工業・伊藤敦夫常務 白石建設工業の伊藤敦夫常務は,当社協力会社組織の新居浜地区会長を務める。「この街では,みんな鹿島の名前を知っている。歴史と土着の度合いが違うのです。うちに対しても『鹿島の協力会社ならば安心』という評価をいただいている」と話す。
 四国山脈と瀬戸内海に囲まれた温暖で穏やかな風土の新居浜市。その街に深く溶け込んで,先輩たちが築きあげた伝統と信頼を,これからも地域や得意先の期待に応えつつ,未来へと引き継ぐ。
新居浜市内の代表的な施工物件
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代表的な施工実績
新居浜市庁舎(1980年竣工) マイントピア別子(1991年竣工)
四国縦貫自動車道新居浜インターチェンジ(1991年竣工) リーガロイヤルホテル(1990年竣工) 新居浜東港周辺
column 体験型SMM人材開発センター建設工事(王子館)が起工
 3月24日,「体験型SMM人材開発センター建設工事(王子館)」の起工式が,新居浜市王子町の建設現場で行なわれた。住友金属鉱山が事業主となり,当社が設計・施工を担当する。
 社員の安全意識向上のための体験型社内研修施設で,規模は,S造,地上2階建て,延床面積1,891m2。竣工は今年8月の予定。
 式典には,住友金属鉱山の橋中克彰常務執行役員別子事業所長をはじめとする事業関係者,当社からは安藤四国支店長ほか工事関係者が出席し,無事故・無災害での竣工を祈念した。
 参列した曽我部所長は,「今回の工事受注でも,精一杯の見積りを出させていただきました。契約までにはいろいろな経緯がありましたが,互いの信頼関係があっての受注です」と笑顔を見せた。
完成予想パース
神事会場 住友金属鉱山・橋中常務のご発声により神酒を拝戴した
INTERVIEW-困ったときに頼りになる存在

 住友金属鉱山エンジニアリングの香川浩司課長は,住友金属鉱山の工場施設の維持管理のほか,場内で施工中の工事管理を担当する。当社営業所と関わった仕事について話を聞いた。

 
――当社が四国に進出する契機となった銅山関連工事以来,長い間いろいろな工事をいただいています。
香川課長 社内でも,昔から鹿島さんにはお世話になってきたと語り継がれています。工場の歴史や施工の経緯などは,社内の担当者より良く知っているかもしれませんよ。難易度の高いお願いでも首尾よく対応してもらえるし,スーパーマン的な存在感がある。とても心強く思っています。

――新居浜は,御社を中心としたグループ各社の発展とともに栄えてきたわけですが,おかげで当社も地域に根付いた営業を展開することができました。
香川課長 地元に営業所があって,いつでも気軽に相談できるのは安心感があります。立場上,土建の技術に幅広く接する機会が多いので,個々の技術面でのサポートを得られるのも助かりますね。

――当社が施工させていただいた磯浦岸壁の大桟橋工事は,思い出深い工事と聞きましたが。
香川課長 入社2年目の私が最初に担当した現場です。鹿島さんの現場の人からはいろいろ勉強させてもらいました。打合せの場では,技術的知識がしっかりしていて,貫禄もあり,憧れの目線で見ていたものです。

――大きな台風が来て大変だったようですね。

香川課長 予想以上の勢力で,型枠や支保工材が海に放り出されました。でも鹿島さんに,総力で対応してもらった。

――良い関係が保たれているのも,長年積み上げてきた信頼のおかげと思っています。
香川課長 そうですね。今後も工事の安全対策や工期,予算などに関して,技術面でアドバイスして欲しい。BCPに関するレクチャーなども勉強になりました。最新の情報を提供してもらえるのは,あり難いことです。
曽我部所長(手前左),十河克行営業課長(手前右)とともに話を聞いた
PERSON 営業財産を受け継ぐ
十河克行営業課長 入社17年目の十河克行営業課長は,生まれも育ちも新居浜。入社後,本社や東京支店などで,管理部門業務や建築現場での渉外や経理などの事務業務を担当した後,10年目に生まれ故郷の新居浜に戻って営業に携わった。
 「営業財産にも歴史と伝統がありますからね。新規開拓の『攻めの営業』より,従来までの顧客との信頼を継続していく『守りの営業』のほうが難しいですね」。
 縁戚にあたる故十河信二氏は,「新幹線の生みの親」として,西条市の名誉市民となった。「代々この地域にお世話になってきましたので,入社後も,いずれは地元に戻って地域に貢献したいと考えていました。得意先で名前を覚えてもらえるのは,営業活動で大いに役に立っています」と語る。
 新居浜営業所に7年在籍し,この5月から,四国支店(高松市)の営業部へ配属となった。
 「地元を離れて,営業を勉強してきます。より幅広く人脈を形成して,新居浜地区に限らず,四国支店全体の営業活動に貢献したいですね」と抱負を語った。

 鹿行(ろっこう)事務所
 新居浜営業所