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震災に強い自動ラック倉庫
免震構造を採用し、商品を安全に保管
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本年1月17日に起きた阪神大震災では、さまざまな分野で今まで考えられなかった数多くの被害があった。物流拠点である倉庫の被害もそのひとつである。
阪神大震災での自動ラック倉庫の被害
港町神戸は関西の流通拠点のひとつであり、ポートアイランド、六甲アイランドなどの人工島とその周辺には数々の物流倉庫、冷凍・冷蔵倉庫が林立している。これらの地域では今回の地震で護岸など港湾施設の被害がクローズアップされたが、たくさんの倉庫群も被害を受けている。これらの倉庫の中に自動ラック倉庫がある。コンピュータ制御によって機械が積み降ろしし易く、運び易いように商品が積み上げられている倉庫である。そのため建物の被害は少ないものの、自動ラックから荷くずれを起こして商品が散乱し、足の踏み場もないほどの被害になった。特に冷凍・冷蔵倉庫の場合、庫内の温度は零下25℃前後、復旧するためには庫内を常温にせざるを得ず、すべての商品が全く価値を失ってしまう。これでは食料品や生活雑貨など、倉庫の中にある商品を被災者に役立ててもらおうと思っても、緊急時には役に立たない。こうした倉庫の被害状況をうけて、大事な商品を安全に保管でき、緊急時にも役立つ自動ラック倉庫のニーズが高まってきた。
免震構造を採用した国内初の自動ラック冷蔵倉庫を実現
免震構造とは、建物の下に積層ゴムなどの免震装置を設置して、地震の衝撃を柔らげる構造である。すでに住宅やオフィスビルなどに採用され、その効果は阪神大震災でも証明された。しかし自動ラック倉庫に免震構法を採用した例はない。地震の揺れで、商品がラックから落ちるというケースをあまり重視していなかったのである。そこで自動ラック倉庫にも免震構造を採用し、保管する商品を地震の揺れから守ることが考えられた。
今回施工するのは、冷凍・冷蔵倉庫である。高減衰積層ゴムを使った免震自動ラック倉庫の開発には、積層ゴムへの低温の影響の研究と、積み荷が偏らない工夫が必要であった。当社技術研究所と設計・エンジニアリング総事業本部が中心となって、ゴムの特性を発揮させるための断熱方法の検討や温度解析を行うなどさまざまな研究を重ねた。そして断熱材、コンクリート厚、床下空間など、冷蔵倉庫という条件下でも可能な免震装置の設置方法が考案された。また、免震ゴムにかかる荷重の過半を占める、積み荷の積載荷重の変動を考慮した建物の安全性確認を行い、積み荷の偏りが生じないようにする自動ラックシステムのプログラミングを提案した。こうして冷蔵倉庫にも免震構造が採用できるようになり、地震時に荷に生じる加速度は、非免震の場合に比べ、1/5〜1/10程度低減させることができた。なお、さまざまな研究開発成果を、現在特許申請中である。
震災時に商品を安全に守り、地域の役に立つことのできる免震自動ラック冷蔵倉庫の施工が今始まった。そしてこの冷蔵倉庫を皮切りに、続々と免震倉庫が作られようとしている。当社の目指す地震被害の少ない街づくりは、物流分野にも生かされている。
写真は鹿島月報より転載
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