特集:ミュージアム

オーナーの熱意を共に実現した−飛騨高山美術館

 伝統工芸の粋を集めた華麗な祭りと落ち着いた民家の意匠で知られる飛騨高山。この地を見下ろす丘の上に造られたのが飛騨高山美術館である。アールヌーボー,アールデコのガラス工芸品と,家具を中心とした19世紀末の装飾芸術のコレクションを展示するプライベートな美術館である。


飛騨高山美術館外観
外観
「丘の再生」というコンセプトに基づき,森の中の美術館のイメージを実現している


 「コレクション自体が極めて確固とした時代性と様式を持っているので,建築の意匠は努めてシンプルであろうとした」と設計を担当した江幡修氏(当社設計・エンジニアリング総事業本部:当時)は言う。
 建物の構成は大きなボリュームをひとつ置くのではなく,展示室を分節し,ロビーや通路で連結する形式をとっている。中央に水面を設け,回廊を巡らせて展示室をつなぐ。光と風,四季の移り変わりをうつす水面を渡り,人は美の世界へ招き入れられる。


回廊
回廊


 常設展を基本としており,展示品を意識したプランニングがなされている。中心となる二つの展示品(ルネ・ラリックの噴水,ウィーン・アールデコの石像)を収めた展示室が対になって配置されている。来場者は光が降りそそぐ回廊を渡り展示室を巡りながら,周囲の豊かな自然とアルプスの眺望を楽しむことができる。ジャポニズムという日本の影響を少なからず受けたコレクション達が,伝統の息づく高山に里帰りしたかのように美術館のたたずまいにとけ込んでいる。


マッキントッシュの部屋
再現されたマッキントッシュの部屋



ガラス展示室
ガラス展示室






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