NEW TECHNOLOGY
橋を地震から守る
既設橋脚、橋梁の免震化と耐震補強工法
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本年1月17日、阪神・淡路地方を襲った地震は鉄道・道路・各種建物に膨大な被害を与え、その状況は連日マスコミで報じられた。特に、高速道路の倒壊・落下の映像は、今でも生々しく私たちの目に焼きついている。日本の高速道路網は、北から南までつながり、特に都市部では、民家やオフィスビルの近くなど、倒壊、崩壊した場合、二次災害が避けられない箇所に建設されているものも多い。
車社会の現代において、高速道路の崩壊を防ぐには、どうしたらよいか。当社技術研究所では、震災特別研究として、阪神大震災に起因する様々な研究を行っているが、今月号では、既存の橋を補強する2つの工法を取り上げた。
既設橋梁の免震工法の開発
免震工法は、オフィスビルや住宅だけのものではない。既設道路橋の耐震補強の一つとして免震化工法は、建設省の復旧仕様をはじめとした各耐震基準に盛込まれ、適用ニーズが高まりつつある。
当社はこれらのニーズに対応すべく、最小限の交通規制下で短期間に、低コストで施工が可能な免震化工法の開発を行っている。これは、当社がオイレス工業とブリヂストンとの共同開発で行っているもので、既存支承(橋脚の最上部にあって、橋桁を支える部分)をすべり支承化し、高減衰復元デバイス(免震装置)を別途設置するものである。
装置の仕様をまとめ、7月から技術研究所大型振動台で性能確認実験を行った。この試験体は橋梁の一部分を切り出したモデルになっており、免震化を行わない(非免震)場合と本工法で免震化を行った場合とを比較した実験が行われた。地震波の種類や入力の大きさなどによって多少の変化はあるものの、だいたいにおいて、免震化により3〜4割程度の地震力の低減が確認された。
この実験データをまとめ、橋梁の設計法および施工法の技術資料を作成し、近々大学関係、道路公団、首都公団をはじめとした官公庁関係およびコンサルタント会社を招いての公開実験を行う予定である。
鉄筋コンクリート橋脚の耐震補強工法
高速道路などの橋脚の多くは、建設当時の基準に準拠して建設されている。これを現行基準や改定中の基準の設計地震力に合わせたものにするための耐震補強工事の計画が、建設省や道路公団などの関係機関で進められている。
橋脚の耐震性を向上させる方法としては、耐荷力(作用外力に耐えられる性能)を高める方法とじん性(ねばり)を高める方法の二つがある。当社技術研究所では、これらを勘案して、次の3つのRC巻き立て工法の開発を進めている。
(1)各種の断面形状の橋脚を対象にしたもの(あと施工高強度柱筋によるRC巻き立て工法)
(2)円形断面橋脚を対象にしたもの(あと施工スパイラル帯鉄筋によるRC巻き立て工法)
(3)壁式橋脚を対象にしたもの(あと施工中間帯鉄筋によるRC巻き立て工法)
このうち(1)は耐荷力の向上を意図したもので、(2)と(3)は、じん性の向上を意図したものである。既に8月下旬に全ての実験を終え、関係方面にPRを始めた。
写真は鹿島月報より転載
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