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ジャワ島でダムをつくる

インドネシア・ウオノレジョダム建設工事

 インドネシア第2の都市スラバヤ市の南西約150km、トゥルンアグン市郊外のブランタス川支流であるゴンダン川で、ウオノレジョダムの建設が進められている。
 穀倉地帯のこのあたりは、蛇行して流れるブランタス川の影響で、雨季には頻繁に大洪水に見舞われ、乾季には農業用水が不足する。ウオノレジョダムは円借款事業であり、日本とインドネシアの建設会社それぞれ2社計4社の共同企業体で建設中の洪水調節、都市用水供給、水力発電のための多目的ダムである。

●雨季と乾季に挟まれて
 南半球にあるインドネシアの雨季は11月から4月、乾季は5月から10月。乾季の間にどれだけ工事を進捗できるかが勝負だ。
 ウオノレジョダムはロックフィルダム。中央部のコア材(粘土)を挟んでフィルター材(数種類の砂利を混ぜたもの)、その外側にロック材(原石)を盛立ててダムの堤体とする。
 日本の川は急流のため河床が露出しているが、ここの場合流れが緩くよどみ、砂利が堆積している。岩盤を出すために砂利を掘り出した。雨が降ると20台以上のポンプを使っても水が吐けず、当初の工期は大幅に遅れた。雨季にはたった2時間で川面が10mも上がることもある。
 ダム盛立てのロック材は、ダム上流3kmにある原石山より採取する。またダム中央部のコア材は、ダム上流1kmにある土採り場より採取する。乾季の今はコア盛立てを中心に工事が進められている。
 フィルター材は、河床砂利を採取し、フィルタープラントにて粒度調整した後盛立てられる。

●ダム左岸基礎部に連続遮水壁を
 着工前に地質調査をしたところ、ダム左岸側の山は火山灰が堆積していろいろな層が入り混じり、脆い上に透水性が高いことが分かった。そこでここに長さ150m、最大深さ75m、厚さ80cmの地中連続壁を構築することとなった。左岸中腹に内径約5.5mのトンネルを掘り、このトンネルから最大深度75mの連壁を設ける。掘削機械は改良型TONE-BW-5580を使用している。この連壁工事はダム建設全体工程においてクリティカルなものであるので、現在急ピッチで進められている。

●インドネシア人と日本人が一緒に
 現場作業員総数は約600人。施工はすべてインドネシア人を中心に進められている。建設資材も一部特殊なものを除いてはインドネシア国内で調達している。起工式の前夜祭には東南アジアに古くから伝わるラマヤナ物語をもとにした影絵、ワヤンクリットを上演した。登場人物の一人アヌマンは、神秘の力を持ち、物語の中でダムを造った。現場では来訪者に工事の完成を祈念してこのワヤンクリットの人形を贈る。
 ウオノレジョダムが完成するのは1999年8月。21世紀には、満々と水を湛えたダムとなる。

現場全景


写真は鹿島月報より転載

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