[2007/4/19]

空気の力を利用してトンネルを安全に構築

〜無水削孔システム「WALDIS(ウォルディス)」を開発〜

  • 水の替わりにエアー(空気)を用いて削孔
  • 特別な重機を必要せず通常の削孔手順で施工可能
  • 緩い地山を劣化させずに確実に削孔
  • 九州新幹線新田原坂トンネルに実適用

 鹿島(社長:中村満義)は、ドリルマシン株式会社(社長:永井敏実、本社:東京都荒川区)と共同で空気の力を利用した削孔工法「WALDIS(WaterLess Drilling System,ウォルディス)」を開発しました。

 都市部のような地質・地形の悪い場所で、山岳トンネル工法を用いてトンネルを構築する場合には、地山のゆるみ防止や切羽安定、地表面沈下防止のため、補助工法としてトンネル切羽前方の上部や脚部の補強することが一般に行われています。この補強は、ドリルジャンボという建設機械を用いて地盤に直径約10〜12cm、長さ約3〜12mの孔を削孔し、同時に鋼管等の補強材を挿入します。そして、鋼管内部からセメントなどを注入して地山を安定させます。これにより安全にトンネルの掘削をすることが可能となります。

 一般に、ドリルジャンボを用いて削孔し鋼管を挿入する場合、鋼管(外側の管)とインナー管(内側の管)の二重管で削孔します。その際、削孔水と呼ばれる水を、インナー管を通して先端に送ります。これは、先端の掘削用の刃に土が詰まるのを防止すると同時に、掘削時に発生する土を排出するためです。インナー管から送られた削孔水は、土と共に鋼管の外側及び鋼管とインナー管の間を通って、排水される仕組みとなっています。しかし、この方法は大量の削孔水(毎分約70リットル)を使って削孔するため、地山が緩い場合には周辺の地山を劣化させてしまうと共に、予定された直径以上の孔が空いてしまい注入材となるセメントなどが十分に充填されない場合があります。その結果、地山のゆるみ防止や切羽安定、地表面沈下防止のための補助工法として必要な強度を得られていないことがあり、薬液注入等の対症療法的な処置を取るケースがあります。
 そこで、当社では、これらの問題を解消するため、水の替わりにエアー(空気)を用いることを考案し、水を使わずに削孔できる工法「WALDIS(ウォルディス)」を開発しました。本システムは、九州新幹線新田原坂トンネルにて、試験施工(2006年6月)を行い、削孔水を用いた場合の課題を全てクリアしていることを確認し、同工事における本施工(2006年7月〜8月)にも適用しました。

試験施工での削孔状況

孔内観察写真

 今後、当社では、本システムを積極的に提案し、安全・確実なトンネル構築を行っていきます。また、総合評価落札方式等の技術提案型案件に対しても、積極的に技術提案を行ってく予定です。

本システムの特徴

● 水の替わりにエアー(空気)を用いて削孔 
 従来システム(下図下段)では、インナー管から送られた削孔水は、土と共に鋼管の外側および鋼管とインナー管の間を通って、排水される仕組みとなっています。しかし、この方法は大量の削孔水(毎分約70リットル)を使うため、周辺の地山を劣化させてしまうと共に、予定された直径以上の孔が空いてしまうという課題がありました。

 本システム(下図上段)では、削孔水の替わりに圧縮空気(フラッシングエアー)を使用します。インナー管に圧縮空気を送り込むための装置(スイベル)を装着し、先端部分に圧縮空気をおくり、土が詰まるのを防止します。また、先端部分に当たった圧縮空気が、その反動により鋼管とインナー管の間を逆流する仕組みを開発しました。これにより発生する強い吸引力により土を排出するシステムとなっています。本システムは、設計通りの孔を構築できるので、地山のゆるみ防止や切羽安定、地表面沈下防止が確実に行えます。

システム概要図
システム概要図
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● トンネル汎用機械であるドリルジャンボがそのまま使え、特別な重機を必要としない
 ドリルジャンボに、WALDIS用アタッチメントを装着するだけで、本システムを適用できます。また、施工に際し、特殊技能を要さずほぼ通常の削孔手順で施工できます。

工事概要

工 事 名 九州新幹線 新田原坂トンネル工事
発 注 者 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
施 工 者 鹿島・大日本土木・丸昭建設・橋口組
工事場所 熊本県鹿本郡植木町辺田野
工  期 2004年3月25日〜2009年3月24日

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