[2007/5/17]

開口部を確保した耐震補強壁へ適用拡大

−Kajima No Anchor Wall工法−

  • 低騒音、低コストで耐震壁の「居ながら施工」が可能
  • 日本建築防災協会の技術評価を取得

 鹿島(社長:中村満義)は、既に開発実用化している低騒音耐震補強壁増設工法(Kajima No Anchor Wall工法)を開口部付きに改良し、(財)日本建築防災協会の技術評価を取得しました。
 これにより開口部のある耐震壁の補強が可能となり、適用範囲が格段に拡がります。今後、建物を使いながら耐震補強壁を『居ながら施工』できる工法として積極的に提案していく方針です。
(注1)『居ながら〜』は当社の登録商標です。

背景

 既存建物の耐震補強工法で最も多く採用されている工法の一つである耐震壁増設工法は、既存の躯体の柱や梁にあと施工アンカーを打設後、配筋をしてコンクリートを打込むことで一体化を図りますが、アンカー工事の騒音・振動・粉塵が『居ながら施工』を困難にするものでした。
 当社は2002年12月に「膨張・無収縮コンクリート」を接合部の一体化に使うことで、「あと施工アンカー」を不要とする低騒音耐震補強壁増設工法(Kajima No Anchor Wall工法)を開発し実工事に適用してきました。ただし、適用範囲は無開口のものに限られることから、出入り口や採光窓などの開口部を持つ低騒音耐震補強壁の開発が望まれていました。
 そこで、開口部付き耐震補強壁の増設へ適用を拡大しました。

無アンカー耐震補強工法

本工法の概要

 増設壁部分と既存躯体の一体化を図るために、既存躯体に粗骨材を接着剤で固定した接合部を構成したうえで、配筋し、膨張・無収縮コンクリートを打設して耐震壁とするものです。
 開口付であっても、膨張・無収縮コンクリートの効果は無開口の場合と同様に発揮され、増設壁と既存躯体との密着性が確保されることが実験と解析により確認されています。

開口付耐震補強壁の増設

  1. 「骨材接着」による接合部
    簡易に施工が行えて、高い一体性が確保できるように、既存柱・梁面に、市販コンクリート用粗骨材を接着剤で固定することにより、表面を凹凸とし、増設壁と既存躯体間の摩擦力を高めた接合部を形成します。
    骨材接着接合部の例
    【骨材接着接合部の例】
  2. 「膨張・無収縮コンクリート」の打設
    従来の膨張コンクリートを可能な限り収縮しないように開発した「膨張・無収縮コンクリート」を打設することによって、既存躯体と一体化させます。
    膨張・無収縮コンクリートの性質
    【膨張・無収縮コンクリートの性質】
  3. 開口部のタイプ
    本工法で設置可能な開口は、以下に示す3タイプで、様々な顧客のニーズに対応できます。
    開口部タイプ
    【開口部タイプ】

本工法の特徴

本工法の特徴は次のとおりです。

  1. 低騒音、低振動、低粉塵の耐震壁増設を実現
    振動、騒音の主原因である「あと施工アンカー」を極力不要とすることができることから、低騒音、低振動、低粉塵で耐震壁が増設・増厚でき、『居ながら施工』を容易にします。
  2. コストダウンを実現
    アンカー工事を伴う従来の耐震壁増設工事に比べ、施工性の良さから短工期とコストダウンを図ることができます。
  3. 開口部を確保
    出入り口や窓といった開口部を有しながら耐震壁としての性能を確保することができます。
  4. 現場への実施適用
    都内のオフィスビルにおいて、中央部に開口を持つ低騒音耐震補強壁の改修工事を実適用済です。

    中央部の開口付き耐震補強壁
    【中央部の開口付き耐震補強壁】

今後の展開

 当社は『居ながら施工』の有力な要素技術として、需要が多い開口部を有する耐震補強壁に本工法を積極的に提案していく方針です。  

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