鹿島(社長:中村満義)は橋脚部分に制震ダンパーを用いて、地震時の慣性力を3割以上低減できる新しい制震橋脚構造「ハイフレッド(HiFleD)*1橋脚」を開発し、このほど新潟県長岡市の商業施設の歩道橋に適用しました。本歩道橋の上部工には、国内3橋目となる超高強度繊維補強コンクリート「サクセム*2」の桁が採用されています。この2つの技術を合わせ持つ、耐震性が高く低コストな歩道橋が実現しました。
兵庫県南部地震後に橋梁設計の示方書が改定され、耐震安全性をこれまで以上に高めていくことが橋梁設計においても重要課題となっています。このため、耐震性に優れている構造形式の一つで、橋脚と桁が剛結合されている連続ラーメン橋が採用されるケースが全国で多くなっています。
今回開発したハイフレッド(HiFleD)橋脚は、連続ラーメン橋の更なる耐震性向上を実現する新構造です。橋脚部材を細い4本のコンクリート柱で構成し、その間に鋼製トラスと制震ダンパーを設置した組柱構造とします。橋脚の組柱構造が柔構造となり、その揺れを制震ダンパーに吸収させて地震力の低減を図る仕組です。制震ダンパーには建築分野での実績が豊富な鹿島のハニカムダンパー*3を採用しました。柱の柔構造化とダンパーのエネルギー吸収により地震時に生ずる柱の損傷を非常に小さく抑えることができます。また、ハニカムダンパーは中規模地震を数回経験しても減衰性能を維持できる特徴があり、地震後の復旧が容易になります。
(左)ハイフレッド橋脚のコンセプト
(右)ハニカムダンパー
本構造により、通常の連続ラーメン橋よりも地震時の慣性力を3割以上低減できることが解析・実験で確認されました。そして、コンクリート柱部材の使用数量の削減や上部構造の耐震補強鋼材量の低減、基礎構造の小規模化により、建設費のコストダウン(上下部合わせて従来型橋梁の約1〜2割)が期待できます。
ハイフレッド(HiFleD)橋脚とサクセム桁は、新潟県長岡市に道路を挟んで建設された商業施設を連絡する歩道橋に適用され、本年8月30日に竣工しました。
本橋はサクセムを使った橋としては国内3橋目となります。今回、建物の2階の床上高と道路上の建築限界との関係より歩道橋の桁高に制限があるため、部材を極限まで薄くすることができるサクセムが採用されました。桁高は50cmでとてもスレンダーな形状の橋となっています。
上部工のサクセム桁は運搬の制約上5分割して工場で製作し、現地でセグメント同士の目地部(5cm)に間詰めサクセムを打設・養生した後に、外ケーブルPC鋼材によりプレストレスを与えて一体化させました。サクセム桁を採用したことにより上部工の重量が軽量化し、下部工を小さくすることができました。また、ハイフレッド(HiFleD)橋脚を採用することにより地震時の慣性力を低減でき、下部工に関しては約30%のコストダウンにつながりました。
なお、本年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で長岡市は震度6弱の揺れを観測しましたが、本橋に被害はまったく生じませんでした。
名称 | リバーサイド千秋連絡橋(仮称) |
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工事場所 | 新潟県長岡市 |
発注者 | ユニー(株)・長鐡工業(株) |
設計・施工 | 鹿島 |
橋種 | プレストレストコンクリート歩道橋 |
構造形式 | PC3径間連続ラーメン橋 |
主桁形式 | 超高強度繊維補強コンクリート(サクセム) |
橋長 | 30.500m |
支間長 | 2.000m+26.000m+2.000m |
工期 | 2006年12月〜2007年8月 |
ハイフレッド(HiFleD)橋脚の高耐震で低コスト、地震の被災後に復旧が容易という特徴をいかし、今後は道路橋(橋脚高:15〜50m)への適用を目指して積極的に技術展開を図っていく方針です。また、サクセムについては技術的な知見も得られたことより、今後は橋梁だけでなく高強度、高耐久性が要求される構造物について適用拡大を図っていく方針です。
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