[2007/11/22]

ウォータージェットを用いて安全かつ効率的に
石綿含有吹付け材を除去

 

 鹿島(社長:中村満義)は、「ウォータージェットを用いた石綿含有吹付け材除去工法」(特許4件出願済み)を開発し、試験施工を経て実工事に適用しました。
 この工法は高圧の水をジェット噴射して吹付け材を剥離除去する工法で、従来の手作業での除去工事に比べて、作業空間の浮遊粉じん濃度を5分の1以下に低減でき、また、時間当たりの除去量は10倍程度に向上します。当社では、今後も増加が予想される建物の解体工事やリニューアル工事で積極的に適用していく方針です。

背景

 解体工事、リニューアル工事でのアスベスト除去は周辺環境への飛散防止が大変重要であり、安全で確実な対策が求められています。また、アスベスト除去作業は、防護服を着用しての作業となり、体力的にも困難で過酷な作業となるため、除去作業の効率化による作業時間の短縮も大きな課題の一つとなっています。
 鹿島では、これらの課題を克服すべく「ウォータージェットを用いた石綿含有吹付け材除去工法」を開発し、実工事に適用しました。ウォータージェットはこれまでもコンクリートのはつりなどに用いられてきましたが、室内でアスベスト除去に用いる場合には、室内が水浸しになるなどの課題がありましたが、この点も解決しました。

本工法の特長

  1. 常に水を散布している状態であるため、作業時に発生する粉塵の飛散量を低減し、作業場外部への粉塵飛散のリスクを大幅に低減します。また、作業空間の温度の低下も図れます。
  2. 従来は金属へら等によって吹付け材を剥離した後、鉄骨面等の残渣物の清掃をブラシ等で実施していました。特に清掃作業では細かな凹凸部について手間がかかっていましたが、ウォータージェットを用いた場合、剥離・清掃を一度に短時間で行えます。
  3. 吹付け材の成分・硬さなどにあわせた最適な水量・水圧を求め、適切なノズルを今回新たに考案することによって、乾式、半湿式、湿式の各種吹付け材に対応することが可能になりました。また、ウォータージェットのエネルギーを効率的に使用するため、作業空間が水びたしになることも防ぎます。

本工法の概要

 吹付け材の種類によって下記3つの工法を開発しました。

1.乾式吹付け耐火被覆除去用工法
 オープン型回転ノズルを用いて直かに吹付け材面に噴射して除去します。除去したロックウールに水はほぼ全て吸収され、床面に残る水は微量です。
除去前 乾式吹付け耐火被覆の除去作業
(写真左)除去前
(写真右)乾式吹付け耐火被覆の除去作業

床面に落ちた含水耐火被覆  除去後
(写真左)床面に落ちた含水耐火被覆
(写真右)除去後

2. 湿式吹付け耐火被覆除去用工法
 当社の特許工法である「コリジョンジェット*」を用いて、耐火被覆表面から碁盤目状に切れ目を入れ、100mm角程度に切れ目の入った断片をバール等を用いて人力ではがしていきます。最後に鉄骨面を回転ノズルで清掃します。
コリジョンジェットによる切り込み  バールによるはく離
(写真左)コリジョンジェットによる切り込み
(写真右)バールによるはく離

はく離直後  除去完了(鉄骨の損傷なし)
(写真左)はく離直後
(写真右)除去完了(鉄骨の損傷なし)

*コリジョンジェットとは、二つのノズルから噴射したウォータージェットを適切な角度で交差させ、衝突点より先の噴流エネルギーを打ち消すことによりコンクリートのはつりなどを精度よく行うことができる鹿島の特許工法です。
コリジョンジェットノズル  コリジョンジェット

3.ひる石吹付け除去用工法
 カバー型の回転ノズルで、ひる石面に水を噴射して除去し、除去材は水と一緒に吸引します。
回転ノズル(カバー式)  除去作業
(写真左)回転ノズル(カバー式)
(写真右)除去作業

粉じん濃度の改善と除去量の向上

 作業空間での粉じん濃度を比較すると、ウォータージェット工法は空中に霧状の水が発生するため、従来の手作業に比べて極めて低くなります。乾式吹付け材除去時において1/5以下となります。
 時間当たりの除去量もウォータージェットの場合、乾式吹付け材で10倍、湿式吹付け材で6倍の除去が可能です。これは主に鉄骨等にこびりついた吹付け材の残渣を清掃する作業が、手作業に比べて飛躍的にスピードアップできることが要因です。

粉じん総繊維数 除去量

今後の展望

 当社では、自社施設での施工実験において安全性を確認し、本年より、吹付け石綿、石綿含有乾式吹付け耐火被覆での試行を経て、現在、大規模な中層鉄骨建物の解体工事での湿式吹付け耐火被覆除去に本工法を適用中です。いずれも手作業による従来工法に比べ浮遊粉塵濃度の低減と格段のスピードアップを実現し、除去作業労務量が1/3程度となりコスト削減にも寄与します。
 今後は、煙突効果によるドラフトの発生によって作業空間外への粉塵飛散が発生しやすいエレベータシャフト等の竪穴空間での除去など、解体工事以外の分野にも適用を図っていきます。また、居ながらリニューアル分野への対応を可能とするよう回収式除去装置の開発を行っています。
 当面、施工は鹿島の指導のもとで株式会社ファーストビルト(本社:横浜市鶴見区 竹園 隆博 社長)が実施します。従来方法に比べ安全かつ効率的な本工法を積極的に提案していく方針です。

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