[2008/02/15]

鋼管矢板基礎に用いる高剛性・高耐力継手を開発

−Super Junction−

鹿島建設株式会社
新日本製鐵株式会社

 鹿島(社長:中村満義)と新日本製鐵(社長:三村明夫)2社は、このたび鋼管矢板基礎(注1)に用いる高剛性・高耐力継手「Super Junction」を開発しました。
 Super Junctionは、鋼管矢板基礎に用いる鋼管を連結させる継手で、継手材に山形鋼を用い、継手内に異形鉄筋を配置したものです。継手部に充填した高強度モルタルと異形鉄筋の付着力によって、継手部のせん断剛性とせん断耐力を大幅に向上させました。その結果、鋼管矢板基礎においては鋼管矢板本数の削減 、工費縮減、工期短縮 が可能となります。

Super Junctionの特長を以下に示します。

  1. 継手部の内空断面を200mm×400mmと大きくし、山形鋼とずれ止めの異形鉄筋の組合せ構造とした。
  2. 新規に開発した、ウォータージェットの噴出力を利用した掘削洗浄機により、継手内部の洗浄作業が容易かつ確実に実施でき、高強度モルタルも確実に充填できる。
  3. これにより、従来型の継手(P-P継手)に比べて、2.5倍のせん断剛性と10倍のせん断耐力を実現し、鋼管矢板基礎における鋼管矢板本数の削減が可能となった。

Super Junction概要図

Super Junction概要図

 また、本継手は2007年3月に、財団法人土木研究センターが主催する「Super Junction」建設技術審査委員会の審査に合格し、建設技術審査証明書(注2)の交付を受けました。

(注1) 鋼管矢板基礎
鋼管矢板を建設現場で円形、矩形、小判形等の閉鎖形状に組み合わせて打設し、継手内にモルタルを注入し、鋼管矢板の頭部をコンクリート(頂版)で結合させて形成する基礎。昭和39年に溶鉱炉基礎として開発された。
仮締切りを兼用できる利点から、特に水上での施工で広く用いられている。

(注2) 建設技術審査証明書
民間において自主的に研究・開発された建設技術について、権威ある学識経験者等により構成される委員会等で技術審査を行い、その内容を記載した証書のこと。技術審査の結果の詳細を取りまとめた報告書等を作成、関係機関へ配布されることから、当該新技術の活用・普及が期待できる。建設技術審査証明事業は、(財)土木研究センター等の14の公益法人から構成される建設技術審査証明協議会の会員が行っている。

背景

 近年、都市再生事業・港湾区域整備事業の一環として、全国各地で臨海部における橋梁計画が進んでいます。その橋梁基礎として工期・施工性に優れた鋼管矢板基礎を採用するケースが増えています。鋼管矢板基礎では、鋼管同士の継手部のせん断剛性とせん断耐力が基礎設計上の重要な要素となっており、継手部のせん断剛性を大きくすることにより外力による基礎の変形を抑え、同時にせん断耐力を大きくすることで鋼管矢板本数の削減が可能となります。そこで、一般的な鋼管矢板継手(例えばP-P継手)に比べ、大きなせん断剛性およびせん断耐力のが得られる継手「Super Junction」を開発しました。

Super Junctionを用いた鋼管矢板基礎例

Super Junctionを用いた鋼管矢板基礎例

本技術の概要

  Super Junctionは、継手内の空間寸法(200mm×400mm)を従来継手(P-P継手)に比べて大きくし、その継手空間には高強度モルタルを充填し、モルタルと異形鉄筋のせん断抵抗によって、継手部のせん断剛性とせん断耐力を向上させたものです。
 Super Junctionの実用化に当っては、施工性を確認するための現地試験、せん断特性を把握するためのせん断試験を行いました。
 施工性試験では試験杭を実際の地盤に打設し(写真-1)、新規開発の掘削洗浄機 (写真-2)からウォータージェットを噴出(写真-3)することで、従来継手よりも継手空間内の掘削・洗浄を容易かつ確実(写真-4)に行えることを確認しました。その後、継手空間内にモルタル充填を行い、モルタル硬化後に試験杭を引抜いて切断し、継手空間内へモルタルが確実に充填されている状況(写真-5)を確認しました。このモルタルの確実な充填により、継手の剛性・耐力の品質や性能を確保することができるとともに、鋼管矢板基礎の仮締切り時に重要となる止水性も従来継手と同等以上にすることができます。また、試験杭を切断することにより作成した供試体を含む複数の供試体について、せん断試験を実施しました(図-1,写真-6)。
 せん断試験の結果、 Super Junctionの継手性能は、従来型の継手(P-P継手)に比べ、2.5倍のせん断剛性および10倍のせん断耐力を得られることを確認しました(表-1)。

試験杭打設状況  掘削洗浄機

(左)写真-1 試験杭打設状況
(右)写真-2 掘削洗浄機(写真下:掘削側)

ウォータージェット噴出状況 継手部洗浄状況

(左)写真-3 ウォータージェット噴出状況(継手洗浄前の試験噴出状況確認)
(右)写真-4 継手部洗浄状況(ボアホールカメラで撮影)

モルタル充填状況確認

写真-5 モルタル充填状況確認

せん断試験セット図  せん断試験セッティング状況

(左)図-1 せん断試験セット図
(右)写真-6 せん断試験セッティング状況

表-1 P-P継手とSuper Junctionの比較
継手特性 P-P継手 Super Junction
概要図 P-P継手概要図 Super Junction概要図
せん断剛性 0.6×106 kN/m2 1.5×106 kN/m2
せん断
耐力
常時 100 kN/m 1,000 kN/m
地震時 133 kN/m 1,330 kN/m

今後の展開

 Super Junctionは、大規模な鋼管矢板基礎の合理化をはかるのに有効な継手です。今後は、Super Junctionを、大規模橋梁基礎工事をはじめとして積極的に提案していく考えです。

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