[2008/04/24]

ICタグで重機周りの安全管理

−作業員接近警告システムの本運用開始−

  • 最新IT技術を施工現場の安全向上に活用
  • 重機の特性に応じたシステムを開発、製品化を目指す

 鹿島(社長:中村満義)は、ソレキア株式会社(社長:小林義和)、東京特殊電線株式会社(社長:小泉伸太郎)と共同で、このたびICタグによる作業員接近警告システム「SADIC(System to Alert worker Detection with IC tag)」を開発しました。本システムは、作業員のヘルメットに装着したICタグから発信される信号を重機に取り付けたレシーバが検知することにより、重機周りの危険ゾーンへの作業員侵入をオペレータに知らせ重機との接触事故を未然に防止するものです。
 2007年5月から開始した国土交通省東北地方整備局 胆沢ダム堤体盛立工事現場(岩手県)での試験運用において有効性が確認できたため、本年4月より同現場において新たに12台の重機(バックホウ、ブルドーザ)に展開し、本格運用を開始しました。
 今後、各現場へ本システムを導入し、作業員と重機の接触事故ゼロを目指していく方針です。

背景

 全国の土木工事現場における死亡災害の中で、建設機械が原因となる事故は墜落と並んで多く、平成18年度の統計では全体の約2割を占めています。鹿島では同種の事故を未然に防止するために安全教育等を十分に実施していますが、ヒューマンエラーを完全になくすことは困難であることから、安全管理を支援するシステムの開発に着手し、実用化に至ったものです。

本システムの概要と特徴

 本システムは、東京特殊電線株式会社が開発したアクティブ型無線ICタグ(注1)システム『MEGRAS(メグラス)』を使用して開発されています。ICタグを作業員のヘルメットに装着し、アンテナ、レシーバ(注2)及び警報機等を重機に設置します。作業員が重機に接近すると、ICタグから発信される信号をレシーバが検知し、警報機を作動させて重機オペレータに作業員接近を知らせます。検知距離は10m程度で状況に応じて調節が可能です。
 今回、重機の特性に応じたアンテナ機器を開発し、重機全周の死角を少なくすることができました。これまでも超音波等を利用した同様のシステムはありましたが、ICタグを使用したシステムの実用化は日本初です。

本システムのイメージ
図1 本システムのイメージ

本システムの適用例
図2 本システムの適用例

本システムの特徴は以下のとおりです。

●作業員の負担が小さく、保守管理が簡単
 原則ヘルメットに装着するICタグは、小さくて軽いため作業の邪魔になりません。また、必要な保守管理は10ヶ月程度を目途に、ICタグの電池交換(ボタン型の汎用電池を使用)だけです。また、重機につけるアンテナは多少泥がついてもシステムに影響は生じません。

●他のシステムへの拡張性
 作業員一人一人を個別認識できるICタグの特徴を活かして、入退出管理等のシステムと併用が可能です。

(注1)アクティブ型無線ICタグ:
物体の識別に利用される微小な無線ICチップ内蔵のタグのうち、自らの電源により電波を発信する形態のもの。パッシブ型ICタグより通信距離が長い。

(注2)レシーバ:ICタグからの信号をアンテナを介して認識する装置

今後の展望

 今後当社では、システムの導入現場を順次増やし様々な重機に展開することで、低コスト化、検知精度の更なる向上を目指していきます。また、本システムを製品化することにより、当社の現場だけでなく、全国の工事現場へ普及展開することにより、作業員と重機の接触事故低減に貢献したいと考えています。
 なお、製品化した際の販売窓口はソレキア株式会社となります。

胆沢ダム工事概要

工事名 胆沢ダム堤体盛立工事
発注者 国土交通省 東北地方整備局
施工者 鹿島・清水・大本特定建設工事共同企業体
工事場所 岩手県奥州市胆沢区若柳字愛宕488-1
工期 平成16年10月13日〜平成21年3月10日
ダム形式 中央コア型ロックフィルダム

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