[2009/09/02]

羽田空港国際線ターミナルビルで大規模スライド工法を実施

国内でも例を見ない16,000m2の大屋根をスライド

  • 国内でも例を見ない16,000m2、5000tの大屋根をスライド
  • 構造・仕上げを含めた一体型スライド工法

 鹿島(社長:中村 満義)は、羽田空港の新国際線ターミナルビル建築工事において16000m2という規模の大屋根にスライド工法を適用しています。建物の下を京浜急行のトンネルが横断しておりクレーン作業に制限があることや、これほどの大屋根の全範囲をクレーンでカバーするには限界があることなどから、今回のようなスライド工法を採用したものです。スライド工法を適用した例はいくつかありますが、屋根のデザインに特徴があり、これほど大規模なものを建築工事に適用するのは初めてです。今回の工事ではスライド工法に構造と仕上げ材の施工を一体化するなどの工夫を随所に織り込み、合理的な工法を実現しています。

本工事の概要

 東京国際空港再拡張事業のうち国際線地区においては、現在、国際線旅客ターミナル、エプロン(駐機場)、貨物ターミナル及び国際線ターミナル駅の新設などの整備が急ピッチで進められています。当社JVはS造5階建・延床面積約15万9千m2の旅客ターミナルビル工事のうち(A・B工区)を担当しています。
   旅客ターミナルの構成は、1階が車によるアクセスのアプローチ、2階は到着階ロビー、3階は出発階ロビー、4・5階は商業・サービス施設となります。それらを覆う大屋根は柱スパン69m、トラス間スパン18mの部材を10個連結した大架構立体トラスからなっており、その施工を横スライド工法で行なうものです。

完成予想パース
完成予想パース

スライド工事概要

 今回の工法では3階までの床コンクリートを先行打設し、その上部をスライド工法で施工するものです。施工順序は以下のとおりです。

  1. 3階までの床コンクリートを先行打設し、スライド用の仮設レール(鉄骨の梁状のもの)を組み立てる。

  2. 屋根部分の端にベントと呼ばれる支柱を組み立て、その上にクレーンで一枚の屋根(18m×95m)を取り付ける。

  3. 組み立てた一枚の屋根を仮設レール上において、推進ジャッキで1回当り18cmスライドさせる。そのスライドを100回繰り返し、一枚分の屋根のスライドが完了する。また、スライドが完了した屋根から順次、防水工事やトップライト等の仕上げ工事を行っていく。

  4. 2〜3の組み立て・スライド・仕上げ工事を9回繰り返し、1回のスライド毎に先行して設置された屋根と接合することにより全ての屋根が構築される。

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施工状況

 69mの大スパンかつ弓形に反り返ったトラスの大屋根施工に当っては、鉄骨の工作が複雑であるため、製品精度、施工精度管理の徹底が必要となり、トラスの変形や施工時の風荷重対策も重要となります。またこれらを27ヶ月という短工期で仕上げなければならないため、今回は屋根の仕上げを一体化した工法とし、構造上の性能はもちろん、施工中を含めた防水性能の検討、漏水対策も細部にわたり検討することで対応しています。
 また、建物完成後の地震・風による大屋根挙動の制御のため、制震ダンパーの他、新たにアンボンドCWマリオンを開発し今回の建物に採用しています。

施工中の屋根架構
施工中の屋根架構

スライド用ジャッキ
スライド用ジャッキ

工事概要

工事場所東京都大田区羽田空港二丁目
発注者東京国際空港ターミナル(株)
設計羽田空港国際線PTB設計共同企業体
((株)梓設計・(株)安井建築設計・ペリクラークペリ)
工期約定 2008年5月1日〜2010年7月31日
規模S造 地上5階
<全体>最高高さ43.15m、
     建築面積 約56,444m2、延床面積 約159,000m2
うち鹿島JV(A・B工区)
     建築面積 約51,200m2、延床面積 約147,300m2
主用途空港旅客ターミナル施設

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