[2010/5/24]

ICタグを用いたプレキャストコンクリート部材の
品質管理を実施

将来のスケルトンインフィルに対しても有効

設置されたPCa部材のトレーサビリティ方法を確立

 鹿島(社長:中村満義)は、ICタグを用いたプレキャストコンクリート(PCa)部材の品質管理の取り組みを開始しました。 プレキャストコンクリート(PCa)部材の製作の過程において、PCa部材にICタグを埋め込み、部材管理に必要な情報を入力し、 それらを施工中及び、完成後もPDAで認識できるようにするものです。これまでPDAを用いた現場内での部材管理は行われてきましたが、 ICタグを埋め込んで部材を管理するのは初めてのケースです。今回のビルに適用するPCa部材は種類が多く、強度が異なるので、部材管理の一層の厳格化が求められています。 今回試行するのは約200ピースの部材ですが、将来的には、本管理を用いることでトレーサビリティの向上を図り、発注者・ユーザーからの将来的な品質情報の保管と活用を容易にしていく予定です。

導入の背景

 PCa部材は外見だけでは部材に使用された材料、配合、養生、強度などを知ることができません。 従来は紙札や、マーキング等で管理していますが、製作途中に紙札がはがれるなどの理由により、部材番号を転記ミスする可能性がありました。 特に高強度のPCa部材は見た目だけで判断できないばかりでなく、シュミットハンマーなどを用いても強度を測定することは困難です。 今回、本方式を採用する(仮称)元赤坂Kプロジェクトの現場では、構造計画上、36Nから150Nまでの強度の異なったコンクリート部材が多数使用されているため、 部材管理が特に重要となっています。
 コンクリート強度が増し、建物のライフサイクルが50年〜100年と長期化し、内装と躯体を分離してスケルトンインフィルを重視する中で、 長期間にわたる建物の性能評価・品質管理が益々重要になっていくと考えています。

ICタグ ICタグからの情報の読み取り
        ICタグ               ICタグからの情報の読み取り

本システムの概要

 工程はまず、PCa部材へのICタグの埋め込みを行います。使用するのは大きさ22mm、書き込み可能容量112バイトのものを使用します。 これを用いて製作・施工段階のICタグへの情報の入力を行います。読み取りは作業員が携帯できるPDAを用います。 これをICタグにかざすことにより、現場の施工中、竣工後も製作履歴の閲覧が可能になります。 製造段階で仕様どおりにコンクリートが打設されたことをICタグに記録し、現場で取付時に確認することにより、設計図書通りの構造体が構築されることを担保します。 さらに通常では確認が困難な建方完了後の部材番号やその製造情報についても、PCa部材取付後に容易に読み取ることが可能となります。 この結果、建物竣工後でも、それぞれのPCa部材の製造、施工履歴情報をICタグから読み取ることができ、保守管理、リフォームの上での有用な情報源となると考えます。 また、PCa部材へ入力する製作・施工段階の情報は、既開発の新建方計画・管理システムを活用することで、PCa部材の3Dモデル上で管理し、視覚的に分かり易く表現されます。

1)ICタグへの製造情報の入力
 ICタグに記録領域を割り当て、部材番号を登録し、そのICタグを型枠・配筋をセットする段階でPCa部材に取付けます。 その後、コンクリートの配合などの部材情報、打設日時・養生方法などの製造情報をPDAにより入力します。 製品検査時には入力された情報を確認します。

2)施工情報の入力・管理
 工場で製作された部材を現場に受け入れ、それを取付ける段階で、取付日時やグラウトなどの現場施工情報を日々記録・保存します。 現場での部材の受け入れ管理を徹底するとともに、建方計画を管理する3Dモデルと組み合わせることにより、取り付け位置を確実なものにします。 3Dモデルには、工程データも持つため、トレーサビリティ情報の管理だけでなく、進捗状況の把握など日々の施工管理にも活用できます。

3)施工後の管理
 部材に取り付けられたICタグの情報と、3Dによる取付位置確認、工事写真、製品検査記録とを連携させ将来にわたるトレーサビリティを確立します。 3Dモデルとトレーサビリティ情報を一元化して管理しているため、必要な情報を3Dモデル上からも確認することができます。

工程
3Dモデルによる建て方計画管理画面(イメージ)
3Dモデルによる建て方計画管理画面(イメージ)

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