[2010/12/22]

新型「GEO-EXPLORER」が誕生

〜複雑な支持層や軟弱層の分布状況を早く安く正確に〜

 鹿島(社長:中村 満義)は、このたび、複雑な地盤における構造物基礎や地下工事の合理化・品質向上を目的に、精度の高い地盤情報を得るための技術として、地盤調査車「GEO-EXPLORER(ジオ-エクスプローラー)」を更新しました。地盤調査に必要な装置(油圧削孔・貫入装置、計測装置、データ処理・制御装置等)をまとめてコンパクトに大型専用車両に搭載した地盤調査システムで、複雑な地盤中の支持層や軟弱層の分布状況を早く安く正確に調査することが可能です。今回の新型車導入により、複雑な地盤への適用性(調査精度・効率)が大幅に向上しました。

 高品質な基礎を合理的に設計・施工するためには、敷地の地盤条件を把握することが前提条件となります。軟弱地盤に建物を構築する場合、硬質層(支持層)に杭を定着させ、浅部の軟弱層の沈下や地震時の液状化などの影響を回避させますが、そのためには硬質層や軟弱層の分布状況を正確に知る必要があり地盤調査を行います。標準貫入試験を併用したボーリング調査が一般的ですが、費用・工期の制約から調査地点数が限られるため、複雑な地層の分布状況をボーリング調査だけで正確に把握するのは難しいのが実状です。

 また、2001年の建築学会の基礎設計指針の改定を契機として、直接基礎と杭基礎を組み合わせた併用基礎など自由度の高い合理的な基礎設計が一般化してきました。近年は、支持力の高い杭の開発が進んだことや、地球環境への配慮から建物規模に応じた合理的な基礎を設計することが強く求められるようになり、正確に地盤特性を把握する必要性が益々高まっています。

 当社は、調査に必要な装置をまとめて大型専用車両に搭載した、多地点の調査を効率良く実施できる地盤調査車「GEO-EXPLORER」を16年前に開発導入し、主に複雑な地盤条件の大規模な建設現場に展開し基礎工事の合理化や品質確保に威力を発揮してきました。今回、新たに開発した最新機器を搭載した新型機への更新を行い、より詳細に地盤を把握することを可能にしました。

 「GEO-EXPLORER」は世界的に見てもユニークな当社独自の地盤調査システムです。今後、複雑な地盤における基礎・地下工事の合理化・品質向上のための切り札として、コンペ・技術提案において積極的に活用していく考えです。

写真:地盤調査に必要な装置を搭載した専用車両  写真:地盤調査に必要な装置(油圧削孔・貫入装置、計測装置、データ処理・制御装置等)
地盤調査に必要な装置(油圧削孔・貫入装置、計測装置、データ処理・制御装置等)を専用車両に搭載

【GEO-EXPLORERの調査機能】
新型地盤調査車で実施できる調査方法は次のとおりです。
  1. MWD検層:
     回転打撃ドリルで地盤を削孔する際に要するエネルギーを指標として地盤の硬さを調べる当社の独自試験法です。構造物を支える硬質層の分布調査に適しています。新型機では削孔エネルギーの計測精度を高めることにより調査精度を向上させています。
  2. 多成分コーン貫入試験:
     複数のセンサーを内蔵したコーン(直径36mm、長さ約50cmの計測器)を一定速度で地中に貫入し各種地盤物性を調べる試験法です。液状化や沈下が懸念される軟弱層(緩い砂質土層や粘性土層)の物性・分布状況の把握に適しています。これまで本試験法は浅部に硬質層があると貫入不能となりその下部の緩い地層の調査が困難でしたが、新型機では2重管方式で硬質層を先行削孔することにより下部の緩い層まで適用できるようにしています。
  3. 各種試料採取法:
     新型機では油圧削孔装置に大幅な改良を施し、土の種類や採取目的に応じた適切な方法で、土をサンプリングする機能を追加しました。これにより室内試験で土の特性を詳細に調査することができます。


写真:建設現場での調査状況 写真:建設現場での調査状況
建設現場での調査状況

【GEO-EXPLORERの特長】
新型地盤調査車の特長は次の通りです。
  1. 沈下や液状化が懸念される軟弱地盤から構造物の支持層となる堅固な地層まで、様々な地盤に対して適用可能で、調査地の地盤特性に応じた適切な調査方法を選定できます。
  2. 支持層を調査する場合、ボーリング調査と比較して所要時間は1/10以下、費用は1/2以下です。
  3. 多地点の調査を迅速に行うことができるので、水平方向の連続性が低い複雑な地盤(傾斜の大きな支持層や連続性の乏しい中間層など)の地盤状況を早く・安く・正確に調査でき、従来の調査では把握できなかった支持層を確実に見つけることができます。
  4. 調査プロセスが機械化・自動化され、再現性の高い高精度な結果が得られます。また、調査結果は即座に出力可能で、構造物の基礎設計や地下工事計画などの後工程へ迅速にデータを引き継ぐことができます。
  5. 地盤調査システム一式を大型専用車両に搭載しており、一台で日本全国の建設現場で調査可能です。また、調査作業から、計測、結果表示までを一括処理することができます。
  6. 土のサンプル採取機能により、室内試験で各種土質特性を詳細に調べることができます。

図:調査方法に応じたロッドを地盤中に貫入して調査を実施
調査方法に応じたロッドを地盤中に貫入して調査を実施。調査から計測、結果表示までを一括処理

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