[2011/01/13]

技術研究所に新方式の高性能3次元振動台
<W-DECKER>が完成

―長周期地震動の世界最大の振幅を再現―

■はじめに
 鹿島(社長:中村満義)は、東京都調布市にある「鹿島技術研究所西調布実験場」に、地震時の多様な揺れを再現できる新方式の高性能3次元振動台「W-DECKER」(ダブルデッカー)を導入し、運用を開始しました。
 当社は、世界有数の地震国である我が国において、常に最新の地震対策技術を社会に提供するために、1975年に振動台を導入し、1990年には3次元振動台への更新を行うなど、安全・安心な社会実現に貢献する研究開発に積極的に投資してきました。 このたび導入した高性能3次元振動台「W-DECKER」は、地震時の速度と変位の再現性においては国内最高水準の性能を有するとともに、長周期地震時の世界最大の振幅を再現することができます。
 当社は、常に進化・高度化する社会や顧客からのニーズに的確に対応するために、耐震、制震、免震などの地震対応技術力の更なる向上に、新方式の高性能3次元振動台を積極的に活用していく方針です。

■新振動台<W-DECKER>の特徴と構成
 「W-DECKER」の最大の特徴は、そのユニークなシステム構成にあります。今回の更新では、地震動を再現する「主振動台」と、超高層など長周期構造物の応答を再現する「長周期振動台」を組み合わせて2段重ねとする新方式を採用しました。これにより、再現可能な揺れの範囲が大幅に拡大しました。 この2段重ねによる長周期地震動を再現する方式の本格的な採用は世界で初めてとなります。
 主振動台の大きさは5m×7mで、60トンの試験体を載せた状態で、水平2方向および上下方向に最大約2,000ガル(重力加速度の約2倍)の加速度を与えることができます。また、近年は大速度・大変位の地震動が数多く観測されていることを踏まえ、 今回の更新では特に速度と変位の再現性能を重点的に引き上げており、水平方向については、速度2m/s、変位±0.7mまでの地震動の再現を可能にしました。これにより、近年我が国で観測された大振幅の地震記録のほぼ全てを再現できる国内トップクラスの性能を備えています。
 一方、実験のニーズに応じて主振動台の上に重ねて使用する着脱式の長周期振動台は、2m×2mのテーブルが水平2方向に±2m移動します。また、主振動台と連動させることも可能で、その場合は最大で2.7mもの変位を再現することができ、その振幅は世界最大です。 これにより、社会的に注目を浴びつつある長周期地震動による揺れを再現でき、建物内部の被害予測や新たな対策技術の効果検証・研究も可能になりました。
 なお、研究所周辺敷地における環境配慮の一環として、主振動台の基礎には浮き基礎構造を採用しています。この浮き基礎は、以前より採用してきた実績のある防振システムで、重さ約4,000トンのコンクリート製の振動台基礎全体を空気ばねとダンパーで支えることで、振動台から外部に伝わる振動を低減しています。

■今後の活用
 建設ビジネスを幅広く展開する当社にとって、土木・建築構造物の耐震安全性の確保と向上は常に経営上の重要課題であり、これを支える基幹技術(耐震・免震・制震)の維持・強化のために今回導入した振動台を有効に活用していく予定です。 また、安全のみならず建物機能維持あるいは地震後の早期回復に寄与するリアルタイム地震防災等のBCP関連技術分野にも積極的に取り組んでいきます。これに加え、社外からの実験依頼などについても、顧客サービス向上や社会貢献の観点から幅広く活用していく予定です。

新振動台<W-DECKER>の主な性能と仕様


振動台実験システムの全体構成
振動台実験システムの全体構成
(長周期振動台搭載時)



主振動台と実験場内観
主振動台と実験場内観



長周期振動台
長周期振動台


参考
 「W-DECKER」の「W」は、本振動台の特徴的な構造である2層構造を意味するdouble-deckerの「double」と、波形を意味するwaveの頭文字の「w」をイメージしています。

「W-DECKER」ロゴ


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