環境負荷低減を目的としたアルミカーテンウォールへの
国内最大規模の粉体塗装の採用
大気を汚染するVOCの排出ゼロ、大幅なCO2排出量削減を実現
建築物の外装アルミカーテンウォールの塗装は、国内ではフッ素樹脂焼付塗装が一般的ですが、 環境規制の厳しい欧州を中心に海外では、粉体塗装が主流となってきています。
鹿島(社長:中村満義)は、このたび、アルミカーテンウォールの粉体塗装の国内最大規模での採用を実現しました。これにより、溶剤を使わないため、VOC(揮発性有機化合物)の排出を無くし、
焼付塗装工程におけるCO2の排出低減を達成し、環境配慮型の施工を進めています。
【概要】
国内の高層ビルにおいて、外装アルミニウム建材の塗装は1980年代よりフッ素樹脂焼付塗装が定着しており、その耐久性や汎用性において他の塗装仕様に対して優位性を保っています。しかし、環境問題への配慮から海外では溶剤を使用するフッ素樹脂焼付塗装に代わり、溶剤を使用しないポリエステル樹脂粉体塗装(焼付)の占める割合が大きくなっています。
特に欧州では2000年に制定されたROHS規制により、溶剤が使用できなくなったため、現在では建材への塗装は内外装を問わず粉体塗装が主流となっています。近年、国内においても粉体塗装が外装アルミカーテンウォールの型材及び面材への採用が当社を中心に増加している状況です。
今回、鹿島は環境意識の高い施主、設計事務所への提案を経て、丸の内の三井住友銀行本店ビルディング及び大崎駅西口に建設中のソニー新オフィスビルにおいてそれぞれ見付面積(*1)で約35,000u(塗装面積は約106,000u)と約30,000u(塗装面積は約57,000u)という大規模な外装アルミニウム建材へ粉体塗装を採用しました。
(*1)見付面積・・・立面投影面積のこと。正面から見たときに見える面積。
【粉体塗装の概要と特徴】
粉体塗装とは、有機溶剤を含まず、塗膜形成成分のみから成る20〜40μm程度の細かい粉末状の固体塗料を、静電気によって金属に付着させ、焼付けることで塗料を溶融・硬化させて均一な塗膜を得る方法です。
粉体塗装の環境に対する効果は、1.溶剤を用いないためVOCが発生しないこと、2.通常のフッ素樹脂焼付塗装が232〜242℃と高温なのに対し、粉体塗装が160〜200℃程度と焼付温度が低いため、焼付時の燃焼によるCO2の発生量が抑えられるという点です。
他方、仕上がり面のきめ細かさや光沢保持率がフッ素樹脂焼付塗装より多少劣るとのデメリットがありましたが、昨今、外観・耐久性とも向上した高耐候性ポリエステル粉体塗料が開発され、外装材への適用が可能な品質レベルに向上してきました。
- 品質管理
当社は、粉体塗装の採用にあたり、国内外の塗装工場にて外装材としての性能を満足する品質が確保できるか試験塗装・検査を重ねてきました。
工場検査をはじめとして生産能力調査、品質管理体制の見直しなどを行うと共に、100以上の検査項目につき試験塗装を繰り返し、特に下地処理と焼付温度及びキープ時間を中心に管理を徹底することで、品質確保ができることを確認しました。
- 環境効果
今回、フッ素樹脂焼付塗装から高耐候性ポリエステル粉体塗装へと変更することによって、環境へどの程度の効果があるか試算しました。
各カーテンウォールメーカーが採用した塗装工場が異なり、塗装装置も違うので一概に比較はできませんが、メーカー算定値をベースに当社でシミュレーションしたところ、三井住友銀行本店ビルディングで「VOC削減 約34トン」、「焼付時のCO2排出量削減 約180トン」、ソニー新オフィスビルで「VOC削減 約21トン」、「焼付時のCO2排出量削減 約57トン」と算出しております。
【今後の展望】
既にヨーロッパではアルミニウム建材の塗装は粉体塗装が主流となっており、その流れは確実に東南アジア、日本へと波及してきております。
鹿島は、アルミカーテンウォールへの粉体塗装の適用について当該工事を先駆けとし、今後日本国内へ幅広く水平展開を図り、環境負荷低減に努めていく方針です。
【三井住友銀行本店ビルディング】

建物全景

アルミカーテンウォール部材(製品検査時)
【ソニー新オフィスビル】

上空からの建物全景(中央がソニー新オフィスビル)

アルミカーテンウォール製品検査状況

粉体塗装を施したアルミカーテンウォールの外装