流体解析システムをクラウドサービス活用により実現
建設プロジェクトに用いる流体解析システムでは日本初
スーパーコンピュータからパブリッククラウドへ移行、データの集約・管理も実現
鹿島建設株式会社(代表取締役社長:中村 満義/以下、鹿島)と株式会社日立製作所(執行役社長:中西 宏明/以下、日立)は、建設プロジェクトで用いる流体解析システムを日本で初めて(※1)、クラウドサービスを活用して実現し、2011年1月から本格稼働を開始しました。
(※1)日立製作所調べに準拠 (2011年1月7日現在)。
鹿島は、これまで社内で保有していたスーパーコンピュータとグリッドコンピュータの併用により、ビル風解析や汚染物質の拡散予測などの流体解析
(※2)を行ってきました。このたび自社で所有してきた流体解析システムから、日立が提供するパブリッククラウドを活用したサービスへ移行しました。
これにより、高信頼・高セキュリティな環境が整備され、設計などの根拠として重要なデータの集約・管理が実現しました。また、必要な時に必要なだけ解析を行うことが可能となり、ITリソース
(※3)の効率化を図ることができます。
(※2)気体や液体が対象物内をどのように流れるか、速度や圧力などをを解析する手法
(※3)ソフトウェアやハードウェアを動作させるのに必要なCPUの処理速度やメモリ容量、HD容量など
流体解析手法を用いたビル風解析や汚染物質の拡散予測などの大規模かつ複雑なシミュレーションは、建設プロジェクト毎に行っています。
そのため、繁忙期と通常期ではITリソースの利用頻度に大きな偏りがあり、ピーク時に合わせたスーパーコンピュータを自社で保有することは効率的ではありませんでした。
一方で、近年、オープンサーバの性能向上とグリッドコンピュータといわれる並列化処理技術の進歩は目覚しいものがあり、従来であればスーパーコンピュータでなければ難しかった高度な科学技術計算の演算処理が実現可能となってきました。
鹿島は、スーパーコンピュータの更新を契機に、流体解析システムのクラウド化を検討し、数ヶ月にわたり並列処理性能や費用対効果などについて検証してきました。その結果、日立の提供するPaaS
(※4)形式のクラウドサービスをベースに、プログラムやデータ資産を一元管理する仕組みなど独自の工夫を行うとともに、
日立がHPC
(※5)分野で培ってきた並列・分散処理やバッチ処理のノウハウを活用することで、流体解析に求められる性能を確保しながら、高信頼・高セキュリティなクラウド環境を実現できることを確認し、2011年1月から本格稼働を開始しました。
(※4)仮想化されたITプラットフォームリソース(仮想マシン:サーバ/OS、ストレージなど)をネットワークを介してサービスとして提供。(Platform as a Service)
(※5)スーパーコンピュータやPCクラスタシステムなどの高性能コンピュータ(High Performance Computing)
これにより、鹿島のIT資産がオフバランス化され、ITリソースの効率的な利用や維持・運用における負荷軽減が可能となります。具体的には、繁忙期と通常期におけるシステム稼働率の大きな乖離が解消され、流体解析関連データの集約・管理を実現しました。また、常に最新IT機器を利用でき、進歩の早いオープンサーバ技術の恩恵をより効果的に享受できるようになります。
企業が科学技術計算システムをクラウド化することは珍しく、建設プロジェクトに用いる流体解析システムでは日本で初めてのケースとなります。
鹿島では、本システムを、環境シミュレーションや広域災害予測、これまで困難とされていた大規模構造物の3次元高精度シミュレーションなどに積極的に活用し、企業競争力の強化につなげていきます。
日立では、今回の流体解析システムのクラウド化をはじめとして、今後も自社の高い技術力と長年培ったノウハウを活用し、企業向け高信頼・高セキュリティを備えたクラウドソリューション「Harmonious Cloud」を積極的に推進していきます。
■今回実現したシステム概要図
■日立のクラウドソリューション「Harmonious Cloud」に関するホームページ