[2011/09/12]

新たなアンダーパス工法「R-SWING工法」を開発!

世界初!可動式屋根付き矩形掘削機を実用化

地上発進・地上到達が可能

新御茶ノ水駅地下連絡通路の掘削完了

 鹿島(社長:中村満義)は、都市部の地下立体交差などを構築する新たなアンダーパス工法「R-SWING®工法」を開発しました。 本工法は、掘削機の上部に装着した屋根(ル―フ)が、先行掘削することにより掘削中の地盤沈下などを防止し、周辺環境への影響を最小限に留めながらトンネルを構築することができます。このたび新御茶ノ水駅地下連絡通路の施工に適用し、無事に掘削を完了しました。可動式屋根付き矩形掘削機を建設現場に適用するのは世界初となります。
 地上発進・地上到達することも可能で、トンネルのアプローチ部とアンダーパス部を一度に構築することができます。従来のシールド工法などで必要だった発進立坑と到達立坑が不要となり、大幅な工期短縮と工事費削減が可能になります。
 なお、本掘削機の製作は、当社グループのカジマメカトロエンジニアリング(社長:西川 五十一、東京都港区)が担当しました。

 都市部の慢性的な交通渋滞は、物流・移動等の弊害だけでなく、大気汚染や緊急車両の通行の妨げなど周辺環境にも大きな影響を及ぼしています。特に、道路交差部、鉄道踏切部で顕著となっています。これらの交差部におけるアンダーパスは、通常、開削工法で行われますが、開削工法では、地上の交差点部周辺に交通規制が多く発生し、また工事期間も長期化することが課題となっています。

 今後、当社では道路交差部や鉄道踏切部、地下通路などのアンダーパス工法として、本工法を積極的に提案し、都市部の交通渋滞解消などに貢献していく考えです。


写真−1 マシン全景(ルーフ全縮時)
写真−1 マシン全景(ルーフ全縮時)

写真−2 マシン全景(ルーフ全伸時)
写真−2 マシン全景(ルーフ全伸時)



本工法の特徴

1.揺動式カッタヘッドを採用
 トンネルの断面形状を矩形にするために、従来の回転式カッタヘッドの代わりに、矩形断面に適した揺動式カッタヘッド(掘削アームが左右に揺動)を採用しています。矩形トンネルは、円形トンネルと比べ、トンネル断面を浅い位置に埋設する事ができるため、低土被りでのニーズが多いアンダーパスでは合理的です。 また、トンネル上下の利用しない部分も掘削する必要がなくなり、掘削土の削減などのメリットがあります。特に、鉄道や道路などの大断面の交通インフラでは有効です。

2.可動式屋根を持つユニークな矩形掘削機
 本掘削機の屋根(ルーフ)は可動式で、掘削機本体と前面位置とそろった状態(写真‐1)と前方に1.5mまで突き出した状態(写真‐2)での掘削が可能です。
立坑からの地中発進時や安定した地山では、ルーフ部は本体とそろった状態で掘削します。低土被りや重要構造物下の掘進では、予めルーフ部が先行掘削して沈下抑制と地上構造物を保護した後に、突き出したルーフ部と本体が一体となって掘削していきます。ルーフ部は先進探査坑の役割も果たすため、都市部の低土被り工事で多い突然の地中埋設物との遭遇を、早期にキャッチする事が可能です。


先行ルーフ掘進による地盤沈下抑制技術

先行ルーフ掘進による地盤沈下抑制技術


3.大断面トンネルを効率良く構築
 先行するルーフ部により低土被りでも安定した掘進が可能で、大断面トンネルを一度の掘進で構築できます。工期の制約の多い都市部アンダーパス工事では極めて有効な工法と言えます。

4.地上発進、地上到達が可能
 道路交差部や鉄道踏切をアンダーパスで立体交差化したい場合には、マシンの地上発進、地上到達技術が必要となります。このために必要な、合理的な推進反力伝達機構、側面地山安定機構などを開発しました。また、矩形や円形の断面より構造的に厳しくなるU字型構造での合理設計等を用意しました。


地上発進と地上到達の概要

地上発進と地上到達の概要


5.基本ユニットの組み合わせにより小断面から大断面まで対応可能
 掘削機本体部(幅2.3m×高さ2.7m×奥行き約5m)とルーフ部(幅2.3m×高さ0.9m×奥行き約5m)を基本ユニットとし、各ユニットを必要に応じてブロックのように組み合わせ、小断面から大断面まで対応できるユニークな機構となっています。 ユニット間の接続は全てボルト留めすることができ、組立時の溶接や解体時のガス切断作業が必要ありません。これにより、施工現場での組立、解体工期も極めて短く、安全に作業することができます。また、基本ユニットは、汎用のトラック輸送が可能で掘削後も繰り返し利用できます。


基本ユニットの組み合わせ例

基本ユニットの組み合わせ例


6.推進工法、シールド工法の両方に対応
 地盤の状況や施工条件により、推進工法とシールド工法の両方に対応できます。
 推進工法とは、掘削機が発進する場所に元押し装置を固定して、掘削機+覆工体(セグメント組上り状態)全体を押して、トンネルを構築する工法です。トンネル延長が短い場合に適しています。
 シールド工法とは、掘削機自体に推進ジャッキを装備し、掘削機の後方でセグメントの組立てを行い、自力で掘削と推進を行う工法です。大きな縦横断勾配変化が有る場合や、トンネル延長が長い場合に用いられます。


推進工法とシールド工法の比較

推進工法とシールド工法の比較



建設現場への適用

 本工法は、2011年7月〜8月に「新御茶ノ水駅連絡出入口設置工事」に適用し、約26.5mを無事に掘削完了しています。

  • 発 注 者
  •    三井住友海上火災保険株式会社
  • 工 事 名
  •    新御茶ノ水駅連絡出入口設置工事
  • 工事場所
  •    東京都千代田区駿河台三丁目9番地
  • 工   期
  •    2010年7月13日〜2013年5月31日
  • 施工監理
  •    東京地下鉄株式会社
  • 施 工 者
  •    鹿島、三井住友建設共同企業体



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