[2011/10/27]

騒音・振動の少ない基礎の解体工法
「鹿島マイクロブラスティング工法」を開発

 鹿島(社長:中村満義)は、都市部の建築解体工事において周囲への騒音・振動負荷を大幅に軽減できる解体工法「鹿島マイクロブラスティング工法(略称:鹿島MB工法)」を開発、実用化しました。 本工法は、大型基礎などの鉄筋コンクリート部材を、できる限り少ない爆薬を用いてブロック割する工法であり、大型重機が不要なことから騒音・振動・CO2発生量が小さく、効率的な作業性を実現した「微少発破による切断工法」です。


開発の背景

 昨今の都市部の建築工事では、ほとんどの場合、既存建物の解体工事を伴います。最近では大規模な既存建物を解体することも多く、とくに地下の解体では基礎梁、フーチング、造成杭などの大型鉄筋コンクリート部材を解体する事例が増えてきています。 このような大型基礎の解体は、通常の圧砕機では爪幅が足りずに噛み砕くことができないため、一般的には大型ブレーカによる打撃を繰り返すことで破砕します。しかし、ブレーカ工法は、大きな打撃音、振動、粉塵などが連続的に発生するという問題点があり、工事現場周辺への環境負荷の小さい解体工法が求められていました。
 一方、発破工法は、日本では主に土木・鉱山分野で用いられてきましたが、都市部の建築工事で用いられたことは近年ほとんどありませんでした。しかし、発破技術は大型の鉄筋コンクリート部材を瞬時に破砕できる特徴をもつことから、重機による解体工法に比べて多くの利点が考えられます。
 そこで、発破技術を都市部の建築解体工事に適用するために、使用する爆薬量を最小限に抑えた局所的な発破工法である鹿島MB工法を考案しました。鹿島MB工法を用いることで、大型の鉄筋コンクリート基礎に一定間隔でひび割れを入れてブロック割することが可能であり、大型ブレーカを使うことなく解体することができるため周辺への騒音・振動負荷が軽減されます。



鹿島MB工法の概要

 本工法は、できる限り少ない爆薬を分散配置することで鉄筋コンクリート部材をブロック割する「微少発破による切断工法」であり、鹿島、独立行政法人産業技術総合研究所、カヤク・ジャパン株式会社、株式会社構造安全研究所の4機関で共同開発した独自工法です。 本工法の主な適用対象は、鉄筋コンクリート造の大型基礎の解体です。使用する爆薬は、導爆線と呼ばれる線状の火工品と電気雷管であり、導爆線の長さの調整によって爆薬量を自由に設定できる点が特徴です。装薬量は、従来の含水爆薬などを使用した制御発破と比較しても1/10以下であり、非常に少量で済みます。

鹿島MB工法の概念図と使用爆薬
鹿島MB工法の概念図と使用爆薬


 鹿島MB工法では、鉄筋コンクリート部材に一定間隔で削孔した小径孔に装薬・発破することで、鉄筋周りのかぶりコンクリートが破砕・除去されるとともに、部材の内部に亀裂を貫通させることができます。 したがって、外周に露出した鉄筋をガス溶断することで部材をブロック状に分断することが可能となります。

鹿島MB工法による鉄筋コンクリート部材の切断状況
鹿島MB工法による鉄筋コンクリート部材の切断状況



鹿島MB工法の概要

 本工法の特長は以下の通りです。

1.騒音・振動負荷の軽減が可能
 ・大型ブレーカによる重機解体工法が連続的に大きな騒音・振動を発生するのに対して、鹿島MB工法は騒音・振動の発生が一瞬で済むことから、工事現場周辺に対する騒音・振動の影響を軽減できます。 また、発破作業のタイミングを調整することにより、騒音・振動の発生時間を近隣への影響が少ない時間帯にコントロールすることも可能です。
 ・鹿島MB工法を都市部の既存杭解体工事に適用した事例では、削孔作業時において騒音レベルは大型ブレーカによる重機解体工法と比べて約8dB低下し、振動レベルは暗振動レベル以下に低減する効果が確認されました。 また、発破時の瞬間的な騒音・振動レベルは、装薬量をコントロールすることにより、いずれも敷地境界において騒音規制法および振動規制法の基準値(騒音レベル:85dB、振動レベル:75dB)以下に抑制できることが確認されました。

鹿島MB工法による騒音・振動負荷の軽減(概念図)
鹿島MB工法による騒音・振動負荷の軽減(概念図)


2.CO2発生量の低減が可能
 ・重機解体工法と比べ、鹿島MB工法で使用する機械は削孔ドリルのみであることから、解体施工に伴って発生するCO2を削減できます。都市部の典型的な解体工事をモデルとした試算結果からは、基礎梁の半数に鹿島MB工法を適用した場合、地下解体工事全体のCO2発生量を約15%削減できることが確認されています。

3.地下解体作業の効率化が可能
 ・とくに切梁下など狭い空間での地下解体では、鹿島MB工法で基礎躯体にあらかじめひび割れを入れて脆弱化しておくことで、小型圧砕機のみで解体が可能となることから解体作業が効率化されます。

4.破片の飛散の恐れがない安全な工法
 ・従来の発破工法に比べて装薬量が少ないため、装薬孔をゴムマットや防爆シートなどで覆うだけで発破時の養生は十分であり、破片が周囲に飛散する心配がありません。


適用実績と今後の展望

 鹿島は、すでに東京都内の建築解体工事3件において、火薬類取締法に基づく東京都知事の許可を取得した上で鹿島MB工法を基礎梁や既存杭の解体に適用し、騒音・振動負荷の軽減効果を確認しています。また、現場内における爆薬の取扱いや発破作業の手順に関して現場作業管理標準を確立しています。
 今後鹿島は、都市部における環境配慮型の解体工法として鹿島MB工法を積極的に提案してまいります。鹿島MB工法の適用を通じて、解体工事においても現場周辺への環境負荷軽減やCO2排出量の削減に貢献していきます。




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