技術研究所 本館「研究棟」が完成
- 技術研究所の建替えプロジェクトが完了
- 新たな価値の創造に適した次世代ワークプレイス
- ローコスト・ハイパフォーマンス建築を実現
- ZEB実現に向けたリーディングプロジェクト
鹿島(社長:中村満義)は、建設業界で初めて設立された技術研究所(1949年創立)の建替えを推進してきましたが、このほど技術研究所本館の「研究棟」が完成し、創立60周年を迎えるにあたり2005年から進めてきた技術研究所の建替えが全て完了しました。
「研究棟」は、約230名の研究員全員が利用するオフィススペースとなり、規模は、RC造、地上5階、地下1階、延床面積8,914m²です。物事の本質を探求し、新たな価値の創造に適した次世代のワークプレイスとなっています。また、現在の厳しい経済情勢を背景にした社会的ニーズに応えるべく、ローコスト・ハイパフォーマンス建築を実現しました。
さらに、当社のZEB(ゼブ:ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けたリーディングプロジェクトと位置付け、新築中小規模オフィスの低炭素化事例として50%のCO2削減を目標としています。本年6月には、設計者と研究者が協働して新技術を開発・適用することにより、CASBEE2010年度版でSランクを取得しました。BEE値(建築物の環境効率)は、過去最高の8.3を獲得しています。
技術研究所本館は、「研究棟」と「実験棟」(2009年度完成)で構成され、社内外の研究者の連携強化を図りながら、最先端の研究技術開発成果を社会や顧客に還元する研究技術開発の主要拠点として機能します。
本館 研究棟
今後は、ZEBに代表される先駆的な顧客ニーズを実現するための研究技術開発を加速するとともに、情報化施工技術、新材料、新構工法などにより、工期縮減・原価低減につながる建設生産の合理化・革新を目指します。また、東日本大震災などで得られた多くの知見を活かし、自然災害に対して、より一層の安全・安心を提供し得る防災・減災技術への取り組みを強化します。環境負荷低減技術や生物多様性保全技術などについても、さらなる技術力の向上に努めていきます。
技術研究所 本館 研究棟の概要
本館 研究棟は、3つのコンセプト(1.「知識創造」研究の場のあるべき姿、2.「技術の鹿島」その飛躍の場、3.「地域と共に」そして地球へのメッセージ)を掲げ、建替えを推進してきました。「研究棟」における各コンセプトの位置づけは次のとおりです。
- 「知識創造」研究の場のあるべき姿
研究者が、物事の本質を探究し、新たな価値を創造する活動に適した次世代ワークプレイスを提案します。モックアップによる体感調査、ワークショップなどユーザとの対話による場の作りこみにより、研究スタイルに応じた柔軟な執務スペースを実現しました。これらで得られた成果は、当社が開発した「行動計測・解析に基づくオフィス評価技術」にフィードバックされ、今後の研究所の一つのあり方として社会や顧客に提案していく予定です。
【コンセプト実現のための工夫】
- 「研究者のための個室」から発想した書架付きの個席ユニットにより、研究者が集中できる環境を確保しました。
- ワークスタイル分析により、個人活動と協働活動のバランスが研究グループごとに異なることを導きだし、パーティション高さや席配置パターンによる環境の違いをモックアップで体感・確認しました。この結果から、グループごとに職場環境を選択できるシステムとしました。
- フロアの中心には、多様な活動シナリオを想定した可動性の高いコミュニケーションスペース(HUB)を創り、研究者間の交流を積極化させ、所属や専門分野を超えた討議を活発化させる工夫を設けています。
- 図書室は技術関連所蔵物の拡大を図り、全社の技術資料を集約した技術情報センターとして機能するよう計画しています。
可動性の高いコミュニケーションスペース(HUB)
- 「技術の鹿島」その飛躍の場
研究技術開発により生み出された成果は、実際の建物や構造物に使われてこそ建設技術としての本来の成果となります。当社が開発した新技術や保有技術のうち約20件を厳選して適用し、建物自体を試験体とした実験・実証を行うことで、適用した技術の飛躍の場とします。
【主な新技術】
- 天井吹付け噴流によるダクトレス空調システム
天井面に吹出気流を付着させ送風するダクトレス空調システムを実用化しました。
ダクトレス空調システム
- 明るさ感演出照明
従来の照明計画は、照度(単位:ルクス(lx))により行われてきましたが、人が感じる明るさの感覚を当社独自に指標化し、新たな照明計画の支援技術を確立しました。
- 最適な吸音材配置による音環境
オープンプランオフィスでは、近接する執務者間(同一グループ)の会話を聞こえやすくする一方で、距離の離れた執務者(別グループ)の会話が研究業務の妨げにならない音環境が必要となり、高度な吸音材配置計画が求められます。音環境のシミュレーション結果を試聴できる当社の独自技術を適用し、最適な吸音材配置を行っています。吸音材には環境に配慮して間伐材を利用した木毛セメント板を適用しています。
その他、建物の防災及びモニタリング技術、再生骨材などのコンクリート関連技術、建物情報モデリングによる建築生産手法など様々な技術を適用しています。今後も新たな技術を適用し、実験・実証を繰り返し行っていきます。
- 「地域と共に」そして地球へのメッセージ
東京多摩地区に位置する調布市飛田給で半世紀の歴史を築いてきた研究所として、地域や環境との共生による快適環境を創出し、「都市型里山」(都市域で人間と野生生物が共存できる場)の構築を目指しています。これは調布市が目指す「武蔵野の森と多摩川の自然を生かしたふれあいと憩いのまちづくり」に沿った計画でもあります。
【都市型里山を目指した主な取組み】
- 屋上には雨水を利用した「蒸発散促進型屋上緑化(エバークールガーデン)」を施し、建物の緑化による省エネ効果や周辺環境への調和を図ります。
- 当社のエコロジカルネットワーク評価技術を活用し、生物の移動経路に当たる「コリドー(回廊)」に適した樹木を選定しています。これにより、野川公園・調布基地跡・多摩川を結ぶ緑のネットワークの一部を担いたいと考えています。
- 植樹する樹木を苗木にすることで、樹木の生長とともに変化する環境改善効果をモニタリングしていきます。
エバークールガーデン
これらの取り組みが評価され、昨年、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に合わせて財団法人都市緑化基金が選定した「生物多様性保全につながる企業のみどり100選」に選定されました。
建物概要
本館 研究棟
■所在地 :東京都調布市飛田給2-19-1
■構造規模 :RC造 地上5階/地下1階建
■延床面積 :8,914m²
■建物高さ :18.14m
■竣 工 :2011年10月