[2012/01/30]

CO2を強制的に吸収させるコンクリート「CO2-SUICOM」を
建築分野で初適用

今春竣工の「中野セントラルパーク レジデンス」

コンクリート製造時のCO2排出量をゼロ以下へ

 鹿島(本社:東京都港区、社長:中村 満義)は、このたび東京建物(株)等が推進する大規模都市開発事業「中野セントラルパーク(※1)」の住宅棟(中野セントラルパーク レジデンス)にCO2(二酸化炭素)を強制的に吸収させるコンクリート「CO2-SUICOM(※2)」を適用しました。

 CO2-SUICOMは、中国電力(株)、鹿島建設(株)、電気化学工業(株)が共同開発したコンクリートで、製造時にCO2を強制的に吸収させることにより、CO2排出量を実質ゼロ以下にできます。これまで舗装ブロックやフェンス基礎など土木分野の外構材料として利用されていますが、建築分野で適用されるのは初めてとなります。

 「中野セントラルパーク」では、プロジェクトの特徴の一つに環境配慮を挙げており、様々な環境関連技術の適用や緑地を活かした開発計画が進められています。その一環として、住宅棟のバルコニー天井部分に、環境にやさしく、高強度と耐久性を併せ持つCO2-SUICOMを採用しました。

 また、当社は従来から建物や構造物のライフサイクルを通じCO2削減を積極的に推進してきましたが、主要な建設材料であるコンクリートを製造する際に大量に発生するCO2に対しては、革新的な削減手段がないのが現状でした。そこで、本事例を契機に、CO2-SUICOMの用途拡大を行うことにより、さらなる環境保全や環境負荷低減に貢献していく考えです。


「中野セントラルパーク レジデンス」の完成予想外観と適用部位 「中野セントラルパーク レジデンス」の完成予想外観と適用部位
「中野セントラルパーク レジデンス」の完成予想外観と適用部位




CO2-SUICOMの特長

 CO2-SUICOMは、CO2高濃度環境中でCO2を強制的に吸収・反応させた養生方法(強制炭酸化養生)によりコンクリートを製造することが最大の特長です。コンクリートの主原料であるセメントの一部を特殊混和材と置き換えることにより、セメント製造時に排出されるCO2を削減できます。さらに、この特殊混和材はCO2と反応することで、コンクリートを緻密化・硬化させる性質を持ち、普通コンクリートに比べて大幅なCO2排出量の削減効果(264kg/m3)が得られます(CO2排出量を実質ゼロ以下)。


CO<sub>2</sub>-SUICOMの製造時におけるCO<sub>2</sub>削減量
CO2-SUICOMの製造時におけるCO2削減量


 また、バルコニーなど長期間に亘って外気に曝される部位では、中性化により鉄筋コンクリートの劣化が生じる懸念があります。CO2-SUICOMは緻密であるため、CO2やO2などの外気がコンクリート内部に入りにくく、躯体コンクリートの保護に有効な材料です。



技術開発のポイント

 建築分野に初めてCO2-SUICOMを適用するにあたって、CO2-SUICOMのCO2削減効果、高強度、耐久性などの特性を確保しつつ、建築部材に求められる様々な性能を満たすために、次の技術開発を行いました。

  • 強度、耐久性とも大幅に向上
       外構材料として必要なコンクリートの強度は18N/o2程度でしたが、今回対象としたバルコニー天井部に求められる強度は30N/o2でした。一般に、高強度のコンクリートの方が中性化の進行速度は遅く、耐久性に優れています。そこで、配合修正を行うとともに炭酸化反応の養生条件を変更することで、強度を50N/o2にまで引き上げることに成功しました。これにより、中性化の進行速度は、通常のコンクリートの約1/10倍となり、強度、耐久性とも大幅に向上させました。

  • 意匠性と品質安定性の確保
       意匠性の観点から、建物のモジュールに合わせ目地を設けない仕様となり、3985mm×1305mm×40mmの大型プレキャストコンクリート型枠パネル(PCF)が求められました。一般に、長尺で薄型のパネルを製作すると、乾燥収縮の影響でパネルに反りが発生したり、製品寸法がばらついたりします。今回適用したCO2-SUICOMでは、乾燥収縮を大幅に抑制でき(従来品の1/10)、寸法安定性を確保しつつ、高い意匠性を有する長尺で薄型のパネルを製作可能にしました。

  • 製造方法の確立
       CO2-SUICOMを建築分野に適用するにあたって長尺かつ薄型のPCFの安定した供給体制が課題となりました。そこで、コンテナ型の炭酸化養生設備を構築し、最適な温度、湿度、CO2濃度、養生期間等の詳細な制御を行うことにより、製造工程を短縮化し(通常のPCFの1/2〜1/3)現場に安定的に供給できる体制を確立しました。


    現場への適用

     「中野セントラルパーク レジデンス」にCO2-SUICOM を適用しました。適用部位はバルコニー天井部で、プレキャスト製の大型の薄板形状のPCF(3985mm×1305mm×40mm)として採用しました(72ピース、約375m2)。


    施工状況 施工状況 施工状況
    施工状況



    建物概要

     ■場 所 : 東京都中野区
     ■規 模 : 鉄筋コンクリート造 地上5階、延べ1,748m2、高さ18.47m(最高19.22m)
     ■用 途 : 集合住宅
     ■竣 工 : 2012年5月竣工予定



    (※1)中野セントラルパーク
    JR中野駅至近の警察大学校等跡地(約16.8ha)の中心部において、東京建物株式会社等が出資する中野駅前開発特定目的会社が事業主体となり進めている大規模都市開発事業。

    (※2)CO2-SUICOM
    CO2-Storage Under Infrastructure by COncrete Materials
    CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)は、 中国電力、鹿島、電気化学工業の商標です。


    プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
    その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。