鹿島(社長:中村満義)は、災害廃棄物処理現場から搬出するダンプトラックやコンテナ車の空間線量率※を高速に計測し、計測データを管理できる「空間線量率高速計測システム」を開発し、このほど、宮城県で実施中の石巻ブロック災害廃棄物処理業務に導入しました。現在、同業務において順調に稼働しています。
搬出車両の空間線量率を自動で計測し、計測データをパソコンで管理できるシステムは初めてです。
※空間線量率とは…対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を「空間線量率」という。空気吸収線量率ともいい、表示単位は一般的にμSv/h(マイクロシーベルト/時)である。
災害廃棄物を搬出するダンプトラックやコンテナ車が公道を走行する際、放射性物質が含まれることによる周囲への影響の懸念を解消するために搬出車両周囲の空間線量率を計測し、沿道に対して安全であることを確認する必要があります。
石巻ブロックでは、施設の能力を最大限に活用するために、搬出する車両一台当たりの計測時間を30秒以下とする必要があり、以下のことが懸念されました。
一般的に使用されているNaIシンチレーション方式サーベイメータ(1インチ)は、空間線量率を精度よく計測できるものの、低い線量では90秒経過後に計測を開始する必要があり、目標とする30秒以内の計測を満足することができませんでした。
今回着目したCsIシンチレーション方式サーベイメータ(2インチ)について、試験用線源を用いてNaIシンチレーション方式サーベイメータと比較実験を行い、その結果、両者の計測値に差異は無く、また計測時間が約10秒程度と短時間であることが確認できました。以上によりCsIシンチレーション方式サーベイメータを採用し、目標とするトラックスケールの重量計測時間内(30秒以内)の計測を実現しました。
システムは、空間線量率計測器と計測対象物を検知する光電センサ及びデータを収集するパソコンなどで構成されています。ダンプトラックを計測するレーンでは車両を挟んで2台の計測器を、最大3個のコンテナが同時に運搬されるコンテナ車を計測するレーンでは、コンテナを挟んで6台の計測器を設置しています。パソコンは計測レーンの横に設けたガードマンボックスの中に設置し、計測された空間線量率などのデータの蓄積や管理を行います。
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計測器設置状況(コンテナ車用) | 機器構成図(ダンプトラック用) |
本システムでは、ダンプトラックやコンテナ車が入っていない状態の空間線量率を長時間にわたって計測し、これをバックグラウンド値としています。
次に災害廃棄物を積載したダンプトラックやコンテナ車がトラックスケールに進入し、定位置で停車したところで空間線量率の計測を開始します。計測値が安定するまでの5秒間のデータは採用せず、その後の10秒間の平均値を計測データとして採用しています。計測で得られたデータはパソコンに送信し、ダンプトラックやコンテナ車等の搬出物の種類、重量データとともに一括して管理しています。
搬出の可否は、宮城県のマニュアルに準拠し、バックグラウンド値の3倍以下を基準に判定しています。なお、災害廃棄物の搬出先によっては、空間線量率の測定回数を複数回とするなど独自のマニュアルを定めている場合がありますが、本システムでは柔軟に対応することが可能となっています。
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ダンプトラック計測状況 | コンテナ車計測状況 |
本システムにより、場外搬出する車両の空間線量率を自動的に、かつ高速で計測することが可能となったことから、作業の省力化と作業効率の向上を実現することができました。この空間線量率を高速で正確に計測するシステムは、災害復興の様々な現場に適用が可能であると考えており、今後 応用技術の展開について検討を進めることにしています。
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