[2012/10/11]

国産スギ材を使った純木質耐火集成材「FRウッド」の開発

〜東京都心の防火地域で、木造が見える木質空間を実現〜

 鹿島(本社:東京都港区、社長:中村満義)は、国立大学法人東京農工大学、独立行政法人森林総合研究所、有限会社ティー・イー・コンサルティングと共同で、国産スギ材のみを利用した純木質構造部材で、1時間の耐火性能を有する集成材「FRウッド(※1)」を開発しました(※2)

背景

 政府はCO2削減などの環境対策や低炭素社会の実現、京都議定書におけるCO2吸収源としての森林資源の利用、2020年の木材自給率50%を目指した国内林業の活性化などを目的として、2010年10月に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行しました。これにより木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物を対象に、国が率先して木材利用に取り組むとともに、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要を拡大することをねらいとしています。 一方で木造建築物は耐火性能に課題があり、従来の木造技術では法律による適用制限があることから、都市部の防火地域での木造建築物や大規模な木造建築物の建設は石膏ボードなどにより木材を覆う仕様以外は困難であり、耐火性能を有する新木造技術の開発が期待されていました。

 これを受けて、当社を含む産学官の4機関にて、防火地域における木造耐火建築物や、大規模あるいは中高層(4階建て全て、あるいは建物上部の4層)の木造耐火建築物が実現可能となる純木質耐火集成材「FRウッド」の共同開発を行い、1時間耐火構造の大臣認定を取得しました。


FRウッドの特徴

 FRウッドの主な特徴は、以下の通りです。

(1)国産スギ材のみを利用した純木質耐火構造部材で,木材をあらわしでかつ構造部材として利用可能


耐火集成材(左:大断面 右:小断面)

耐火集成材(左:大断面 右:小断面)

(2)荷重支持部の周囲に難燃薬剤を注入した難燃処理層を配置し耐火性能を確保
(3)薬剤注入前にCO2レーザやドリルを用いたインサイジング処理(孔あけ処理)により薬剤注入量と注入分布を均一化
(4)1時間耐火構造の大臣認定を取得
  認定番号  柱(FP060CN-0389,0492)梁(FP060BM-0239,0314)



加熱実験の様子加熱前後の断面
加熱実験の様子加熱前後の断面

(5)小断面(260mm×290mm(荷重支持部120mm×120mm))から、それ以上の大断面など自由に設計が可能
(6)木材の利用により炭素を建物内に固定化し、CO2削減や低炭素社会の実現に寄与


FRウッドの製造販売体制の確立

 「FRウッド」の製造販売については、鹿島などの開発4機関と住友林業株式会社との間で連携協力し進めております。住友林業との連携により、FRウッドの汎用化を進め、大規模木造建築物から小規模な個人住宅まで幅広く普及させてまいります。

適用実例

 今般、「音ノ葉グリーンカフェ」(東京都文京区)を構成する独立柱、飛び梁にFRウッドを初適用します。この計画は、目白通りに面し椿山荘に隣接する東京都心の一等地にありながら周辺を広大な緑地に囲まれた自然環境豊かな場所に計画された飲食店舗です。周囲環境にふさわしいカフェとするため、従来の木造耐火建築物のように石膏ボードに覆われることのない木造・木質感あふれる空間を実現しています。



音ノ葉グリーンカフェ 完成イメージカフェ内観 完成イメージ
音ノ葉グリーンカフェ 完成イメージカフェ内観 完成イメージ


建築主  : 音羽建物株式会社グリーン事業本部
建物用途  : 飲食店舗
建設地  : 東京都文京区関口2丁目26-38
階  数  : 地上3階
建築面積  : 124.35m2
延床面積  : 212.09m2
設計  : 鹿島建設(株)一級建築士事務所
施工  : 住友林業(株)
工期予定  : 2012年11月〜2013年3月
カフェ内部にFRウッドを採用

カフェ内部にFRウッドを採用

 なお、「音ノ葉グリーンカフェ」プロジェクトは、耐火性能を有する木造技術を用いた先導性の高い建築事業として評価され、国土交通省の平成24年度木造建築技術先導事業に採択されました(※3)

今後の展開

 今後、当社はFRウッドを用いた木造だけでなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨造との混合構造の提案を行い、木材を適材適所に利用することで、一層の木造化・木質化を推進し、木材利用による環境負荷低減や低炭素社会の実現、国内林業の活性化に貢献するとともに、火災に強い安全な街づくりを行ってまいります。


(※1)FRウッド : Fire Resistant wood

(※2)耐火集成材「FRウッド」の研究開発の一部は農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(課題番号2009)」、「科学研究費基盤研究(A):課題番号22248019」などにより実施しました。

(※3)国土交通省「平成24年度木造建築技術先導事業」は、再生産可能な循環資源である木材を大量に使用する大規模な木造建築物等の先導的な整備事例について、その具体の内容を広く国民に示し、木造建築物等に係る技術の進展に資するとともに普及啓発を図ることを目的としています。


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