[2012/12/05]

磁界とICタグを利用して重機周囲を常時監視する
「アラウンドウォッチャー」開発

新東名高速道路「徳定トンネル工事」で有効活用中

 鹿島(社長:中村満義)は、株式会社マトリックス(社長:辻義光)と共同で、建設工事の重機作業における重機と作業員との接触事故防止を目的とした「アラウンドウォッチャー(Around Watcher)」を開発しました。本システムは、株式会社マトリックスが開発したセミアクティブICタグシステムと当社が開発した魚眼カメラ監視システムを組み合わせたもので、重機周りに一定の磁界を発生させ、ICタグを携帯した作業員が磁界内に侵入したら直ちに重機オペレータに知らせることができるとともに、重機オペレータは運転席のモニターで重機周辺の状況を目視確認できるシステムです。現在、新東名高速道路徳定トンネル工事(発注:中日本高速道路株式会社、現在施工中)にて、本システムをバックホウ、ホイールローダに搭載して、有効に活用しています。


アラウンドウォッチャー概念図
アラウンドウォッチャー概念図


開発の背景

 建設工事では、重機オペレータの死角に作業員が接近する可能性が高く、重機稼働時に作業員が接触して事故を引き起こす恐れがあります。これまでも重機と作業員の接触事故防止対策としては超音波や電波を利用し、重機及び作業員に送受信機を携帯させた警報システムが開発されてきました。
 しかし、超音波や電波を用いた方式では、超音波、電波の乱反射により到達距離が延伸する場合の誤検知や、受信機と作業員の間に他の重機や機械が入った場合の不検知の問題があり、トンネルなどの狭い作業空間では十分に機能を果たすことは困難でした。
 そこで当社は、これらの問題を解決するため、磁界を利用した方式を採用することで、周辺の作業員の接近を把握することを可能とした「アラウンドウォッチャー(Around Watcher)」を開発しました。

本システムの概要

 本システムの概要は以下の通りです。

  1. ICタグを身に着けた作業員が、重機に搭載した磁界発生装置から発せられる磁界内に侵入すると、ICタグから「タグID」と侵入した磁界の「磁界番号」を発信します。
  2. ICタグからの信号を、重機に搭載した受信アンテナが受けて、重機オペレータに磁界内に誰が侵入したかを知らせます。
  3. 作業員を検知すると、重機に搭載したパトライトが回転し、重機オペレータ席のモニターに誰が検知されたかを表示します。更に、モニターには重機周囲全体の魚眼カメラによる映像を表示しているため、作業員の位置を確認することができます。


重機への設置状況 運転席への設置状況
重機への設置状況運転席への設置状況

ICタグICタグ

モニター画面の例
モニター画面の例


 本システムでのICタグの検知は、検知範囲を磁界で設定しているため、超音波や電波のような乱反射は生じません。また、ICタグは磁界範囲内でのみ2つの情報(タグIDと磁界番号)を発信し、これを重機に設けたアンテナで受信します。この受信データはICタグが侵入した重機固有の磁界番号を有することから、自機に接近した作業員だけを確実に検知することができます。

 このように、本システムは磁界を利用することでトンネルなどの狭隘な作業現場においても確実に作業員の接近検知を実現し、魚眼カメラによる映像を組み合わせることで重機オペレータ席に居ながら、重機周辺における作業員の接近の有無と作業員の位置を把握できます。


従来方式と本方式との動作原理比較


従来方式と本方式との比較
従来方式と本方式との比較


狭隘なトンネル現場でのシステム稼働状況
狭隘なトンネル現場でのシステム稼働状況


今後の展開

今後は、トンネルに限らず様々な工種での重機に本システムを積極的に適用し、重機と人の接触事故防止に貢献していく方針です。


プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。