[2013/02/25]

iPadを利用した動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」を開発

福岡県五ヶ山ダム堤体建設工事で有効に活用中

 鹿島(社長:中村満義)は、建設工事における周辺生物の生態系把握を、iPadを用いて効率的かつ精度よく行う、動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」を開発しました。
 本システムはiPadが有するGPS機能を活用し、確認した動植物の写真画像、位置情報、現地状況などの関連したデータを記録し、簡単にGISの電子地図上へマッピングします。これにより、建設工事における環境モニタリングやデータの蓄積、管理が従来よりも飛躍的に容易になり、更に動植物に注意すべき工事場所を特定できることから、工事関係者に対して周知や対処方法をわかりやすく、的確に説明することができます。
 現在施工中の福岡県五ヶ山ダム堤体建設工事(福岡県筑紫郡)の現場において、本システムを現場担当者が携行し、環境パトロールに有効活用しています。

iPadを活用した動植物・環境モニタリングシステム概念図
iPadを活用した動植物・環境モニタリングシステム概念図

開発の背景

 建設工事においては、周辺環境に対するモニタリングや保全対策の重要性がますます大きくなっています。特に、ダムや造成などの大型土木工事においては、工事区域とその周辺における動植物や自然環境の具体的な保全対策が必要とされます。しかし、工事の進行に伴い、建設現場においては地形等の状況が日々変化するため、継続的に環境モニタリングを行い、実施している環境保全対策を最適化する必要があります。
 動植物を中心とした環境モニタリングでは、対象となる場所の生態系把握のために、地形や土地利用状況、動植物の写真等をはじめとする多くのデータを取得します。これらのデータは、調査時刻、調査範囲、動植物の分布地点といった地理情報、動植物などの画像情報を含んでいます。
 しかし、これまではそれぞれのデータの記録方法や媒体が異なり別々に管理されていたため、これらのデータを一元化し、わかりやすく表示することは困難でした。こうしたデータの収集や分析には地理情報システムGISが活用されていますが、GISを高度に活用するには専門知識が不可欠であり、技術の習得に時間を要していました。
 一方、近年、GPSを内蔵したタブレット端末の高性能化やクラウドサービスの普及により、GISと連携して地理情報を簡易に記録できるツールが多く登場しています。
 そこで当社は、これらを活用しカスタマイズ化することによって、環境モニタリングで取得したデータをiPadに入力し、GIS上にわかりやすく表示することができる動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」を開発しました。

本システムの概要と特徴

 本システムは、以下の3つから構成されます。


動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」の構成
動植物・環境モニタリングシステム「いきものNote」の構成


 専用アプリがインストールされたiPadを携行した社員が、環境パトロールの際に現場で捉えた動植物の写真をiPadの内蔵カメラで撮影すると、写真データと共に、撮影された時間及び位置データ(緯度経度データ)が自動で保存されます。その際、写真にコメントなど他の情報を付加することができます。
 これらのデータはiPadから専用アプリを通じて、クラウドサーバーに転送、保存されます。保存された各種データはクラウドサーバー上で一元化され、さらに必要に応じて変換処理されます。その後、これらのデータはiPadの地図画面上にわかりやすく表示されます。
 また、調査開始から終了時まで、一定時間ごとに現在地の認証を行い続けます。これにより、調査を行った時間と場所の軌跡をトラックログとして残すことができます。
 これまでも、PDAなどの携帯端末を用いてモニタリングを行い記録するシステムはありましたが、地図情報など重たいデータを扱うのに限界がありました。今回開発したシステムはiPad上であらかじめ保存した数多くの地図データから、任意で表示させる地図データを選ぶことができ、また操作性も格段に向上しています。


本システム運用時におけるシステム表示例

ログイン後の対象区域の表示画面 調査終了後の画面
ログイン後の対象区域の表示画面 調査終了後の画面
青;移動軌跡(トラックログ) 緑;調査データを入力した地点


入力した調査データの表示状況 調査データ(現地写真)の拡大表示例
入力した調査データの表示状況 調査データ(現地写真)の拡大表示例

 本システムでは、環境保全対策を確実に実施する上で必須である「何が、いつ、どこで」という生物地理情報の収集、展開を簡単に行うことができます。そのため、工事場所や保全対策箇所との関連など、工事関係者が共有すべき情報を確実に周知できます。
 モニタリングに使用するベースマップは、座標系を設定した任意の電子地図とすることで、現場で使用するCAD図面等を使用することができ、市販の地図に表示されない現場仮設設備などが記載された地図を利用することができます。
 本システムの運用は、電波が悪くインターネット経由で地理情報を表示できない場所でも、作成したベースマップ上に独立した地図表示システムで現在地を落とし込むため、その場所の調査データの蓄積を続けて行うことができます。

今後の展開

 本システムは、現地における生態系関連情報として不可欠な「何が、いつ、どこで」を逃さずに、動植物や環境情報を記録するものです。そのため、常に変化する現場の環境情報を集約し、最新情報に基づいた施工計画の確認、見直しが可能となりました。また、操作は従来のPDAより格段に簡単で、情報の見やすさが格段に向上しています。
 福岡県五ヶ山ダム堤体建設工事の現場では、現場担当者が毎日環境パトロールを実施しています。本システムによりビオトープなどの整備効果を手軽に記録、検証できたほか、サシバ等小型猛禽類への配慮が図られました。
 鹿島では、今回適用したダム工事のみならず、建設工事の自然環境保全対策支援ツールとして水平展開していく方針です。


※iPadは、米国Apple, Inc.の登録商標です。


プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。