鹿島(社長:中村満義)は、コンクリート構造物の品質向上を目指して、目視調査に基づく品質管理手法を開発しました。本手法は、横浜国立大学細田暁准教授と共同で開発したもので、脱型したコンクリートの品質を目視で評価して、定量的な結果に基づいて次の施工に反映させる手法です。2011年から実現場で適用を開始しており、現在までに14現場に導入、コンクリート構造物の品質向上に大きな効果をあげています。今後は、さらに大型コンクリート工事への適用及び水平展開を推進し、コンクリート構造物の品質・信頼性の向上を図っていく方針です。
コンクリート構造物の品質は、使用する材料や配合など、コンクリート自体の品質に加えて、製造、運搬、型枠、打込み、締固め及び養生などの施工要因の影響を大きく受けます。例えば、同一のコンクリートを用いて構造物を構築したとしても、施工の良し悪しによって、極めて品質の高いものから、逆に、品質の低いものになる場合もあります。
一方、コンクリート構造物の耐久性に着目すると、劣化因子はコンクリートの表面から浸透するため、構造物の表層部の品質が重要になります。しかし、コンクリート構造物は打ち込まれたコンクリートが鉄筋を通過してかぶり部に充填されて形成されるため、表層部のコンクリートは打込み,締固め,養生などの施工の影響を受けやすく、また、一般的に内部のコンクリートよりも材料分離が生じやすく、密実に充填されない場合もあります。
コンクリートの表層部の品質が密実でなく、表面気泡、砂すじ、沈みひび割れなどがある場合には、そのコンクリート構造物は比較的早期に劣化することがわかっています。したがって、コンクリート構造物の品質を考える場合にはこの表層部の品質が極めて重要になります。
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劣化因子の浸透概念図 | かぶり近傍のコンクリート |
この課題に対処するため、鹿島では、目視調査に基づいて構造物全体、あるいは、部材のコンクリート表層品質を、簡単かつ定量的に評価する手法を開発しました。本手法の概要は以下のとおりです。
本手法をRCラーメン高架橋の施工現場に適用しました。現場技術者が本手法により目視で評価し、PDCAを行った効果、柱、床版共に1期施工に比べ、2期施工の方が高い評価となり、品質の向上を裏付ける結果が得られました。さらに、3期施工においては、模擬柱を用いた締固め方法の改善検討、剥離剤の変更、打重ね時間の短縮と打重ね位置の管理など各種工夫を実施しました。同時に、これらの工夫に対して本手法を用いた評価を積極的に適用した結果、2期施工よりもさらに品質を向上させることができました。
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RCラーメン橋での目視調査状況 | 各工期における評価結果 |
今後、当社では本手法を活用し、耐久性、美観に優れたコンクリート構造物の施工を目指すと共に、品質向上に資する各種工夫の蓄積、高品質のコンクリートを施工するための新工法の開発など、さらなる検討を推し進めていく方針です。また、大型コンクリート工事へ適用を図ると共に、全国の現場へ広く水平展開していくことにしています。
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