鹿島(社長:中村満義)は、経済産業省の掲げる2030年新築ビルのZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化に先駆けて、独自の目標として2020年に当社設計施工の新築ビルでZEB第1号を実現する目標を掲げ、研究開発を進めております。このほど2011年に完成した技術研究所本館研究棟において、運用にかかるエネルギー効率を高め、2012年度の年間CO2排出量が62%削減を達成いたしました。この削減率は、日本において最高レベルとなっており、先般、第51回空気調和・衛生工学会賞を受賞し、第三者からも高い評価を受けています。
技術研究所(東京都調布市)は、2011年11月から運用を始めています。計画にあたっては、地域環境を重視したランドスケープ計画、オフィス機能や知識創造環境を一から見直した合理的な内装・設備計画、明るさ感を演出したタスク・アンビエント照明、ダクトレス空調システムなどの新技術を採用し、さらには既存躯体の利用や生物多様性の事前調査等、環境や省エネに最大限配慮した建物となっています。また運用段階においても、設計施工の担当者、利用者ならびに建物管理者など全員参加による最適運用をはかり、最高レベルの省エネを達成しました。
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建築計画では、環境負荷が少なく使いやすさと機能性を追求した結果、オフィス建築の原形ともいうべきカタチに辿りつきました。高い階高で大きな開口部を有するデザインに様々な日射遮蔽装置などをつぎ込み環境負荷を抑制していく手法とは対極的に、建築の形体そのもので負荷が少なくなるようデザインされ、内装、設備、構造躯体を機能的に統合する”引き算”の手法を取りました。
フラットスラブの構造架構をシンプルに外装に露出したデザインは、眺望と同時に日射遮蔽性能の両立を目指して計画しました。南北方向の開口部は奥行き1,150mmの深いボックス庇形状とし、東西面は一切開口のない耐震壁、さらに屋上の全面的な緑化などにより、PAL値=193(オフィス基準値-35%以上)を達成しています。
また、オフィス内装では天井レス・OAフロアレスとし、内装材を極力少なくすることで、省資源化と同時に施工合理化を実践しています。天井の吸音性能を代替するものとして、木毛セメント板をスパンの境界部分(FL+3,000mm)に設置し、隣接するグループ間の音声伝搬を吸収することを狙っています。また、OAフロアの機能を代替するものとしては、グループ境界の家具の巾木部分に配線スペースを設け、各個人ブースまでの電源/LANの配線ルートを確保しています。
日射負荷を抑制した外装デザイン
本建物の空調方式は、個別方式であるヒートポンプパッケージと、中央方式である空冷ヒートポンプチラーを熱源とした外気処理空調機(=外調機)を併用した方式となっており、ベース運転を中央方式(=アンビエント)、間欠運用を個別方式(=タスク)としています。アンビエントの外調機は、換気機能に加え室内ベース負荷処理(照明発熱と平均的なOA発熱負荷)と加湿および除湿処理の役割も担っています。また、CO2濃度制御や中間期の外気冷房機能も有し、吹出し方法はスラブに気流を付着させるダクトレス空調方式を採用しています。個別方式は夏期・冬期の追従用で、日射負荷や外壁貫流負荷、人体発熱、OA発熱増加分を処理する役割で、床置室内機(PAC)をスパン毎にペリメータ、インテリアに設置しています。
基準階オフィス空調システム概念図
基準ビルにおけるCO2排出量原単位と本建物の年間CO2排出量の比較を図に示します。基準ビルとしては、東京都の一般事務所ビルのCO2排出量原単位として東京都環境局から提示されている「東京都省エネカルテ(H19年度)」の事務所用途の値を参考とし、年間で100s-CO2/m2・年として比較を行いました。2012年4月〜2013年3月までのデータに基づく本建物の実績値は、年間CO2排出量で37.5s-CO2/m2・年となり、基準ビルと比較して、約62.5%のCO2排出量削減が達成されました。
CO2排出量原単位と年間削減量予測
今回の実証結果から国内トップレベルの省エネ効果が確認できたことにより、今後の施設計画の際、本採用技術を積極的に提案してまいります。
当社は、低炭素社会・持続可能な社会に向けてさらに技術開発を進め、建築物の快適性と省エネを追求し、トップレベルのZEB化建築の実現・普及に向けて取り組んでまいります。
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。