[2013/09/20]

富岡町本格除染に向けて 除染工事の合理化技術を開発

線量モニタリング、出来高管理並びに数千人規模の作業員の労務・線量管理をITで合理化

 鹿島(社長:中村満義)は、福島第一原子力発電所事故に伴う除染工事に適用すべく、線量モニタリング並びに除染の出来高管理、さらに、数千人に及ぶ除染作業員の労務・線量管理を合理化する新技術を開発しました。今後、本格除染工事が始まる富岡町において導入することにしています。
 なお、本技術は、9月25日(水)〜27日(金)に科学技術館(東京都千代田区)において開催される「環境放射能除染・廃棄物処理国際展 RADIEX2013」にて紹介されます。

開発の背景

 鹿島は、福島第一原発事故に伴う除染モデル実証事業、田村市における除染工事などの事業に参画し、確実かつスピーディーな除染を行うための様々な技術開発を行っています。
 今月からは富岡町の除染工事に着手しますが、建物等約4500棟、道路76ha、農地310ha、森林515haなど、これまでにない規模の除染を短期間に行う予定となっており、作業員はピーク時で約3500人にも上ることが予想され、これまで主に紙で行っていた線量管理や出来高管理、また、作業員の労務管理をITにより合理化することが求められていました。


1.装着式の放射線モニタリングシステムの開発

 除染工事においては、除染効果を測定するための放射線モニタリング調査が重要であり、素早く正確に測定地点に導く測量が要求されます。従来の測量用GNSS(*)は、精度はよいものの機材が大きくて重く(約15kg)、現地で測量作業を行うには最低2名の作業員が必要でした。一方、タブレット内臓のGNSSは小型で軽量ですが、地点への誘導に時間がかかり、また、位置情報も数メートル単位の誤差が出るなど正確性にやや問題がありました。また、実際の線量の測定においては、計測員が計測値を口頭で読み上げ、記録員が紙やタブレットに記録するため、計測員によるバラつきや読み取り誤差、記録員の転記ミス、入力ミスなどの恐れがありました。
 そこで、鹿島では、重量を従来の5分の1にまで軽量化し1人で測量が行える装着式の高精度なGNSS装置と、計測器をオンライン化しデータを伝送する新しい放射線モニタリングシステムを開発しました。放射線計測機から記録用タブレットに無線によりデータ伝送することにより、計測員によるバラつきや転記ミスの恐れがなくなります。また、本システムにより、これまで4名で行っていた測量・線量モニタリング作業を2名で行うことができます。


(*)GNSS(全地球測位システム)・・・人工衛星を使用して地上の現在位置を計測するシステム。
                    代表的なシステムとして米国が運用しているGPSがある。

装着式(ウェアラブル)GNSS測量システム(重量2.2kgを実現)放射線モニタリングシステム画面サンプル
              放射線モニタリングシステム画面サンプル
 装着式(ウェアラブル)GNSS測量システム(重量2.2kgを実現)



2.指紋認証を用いた作業員の労務管理及び線量管理システムの開発

 富岡町本格除染工事では、ピーク時には1日当たりの作業員が3500名を超えることが予想されています。その膨大な作業員一人ひとりの作業日数、作業時間を正確に把握し、被ばく線量を確実に管理するためには、労務管理業務の効率化が必要です。
 そこで、鹿島では、入退場時の本人確認に「指紋認証」を用いることで、作業員一人ひとりの正確な入退場管理と同時に、被ばく線量の記録と管理が行えるシステムを開発しました。
 具体的には、入場時に指紋により作業員を認証し、同時にポケット線量計を貸し出します。退場時に再度指紋認証により作業員を特定すると同時に、ポケット線量計をデータ読取装置に置くことにより、その日の累計被ばく線量を自動的に記録します。入退場時には時間の記録も同時に行います。
 これにより、ピーク時に3500名を超えることが予想される膨大な作業員の労務管理を飛躍的に合理化し、また、自動計測による確実な線量管理も可能となります。

管理の流れ



3.GISを用いた除染工事出来高管理システムの開発

 これまでの除染業務では、日々の作業指示と作業記録並びに報告が主に紙で行われていました。工事全体の進捗状況を把握するためには膨大な時間がかかり、また、紙から電子データに変換する際に転記ミスの恐れもありました。
 そこで、鹿島では、除染業務のフローを地理情報システム(GIS)上に実装し、作業指示及び作業実績を電子化することで管理業務を大幅に省力化するシステムを開発しました。本システムはクラウドサーバ上でデータを一元化するため、工事の進捗状況をWEBブラウザからどこからでも把握することができます。具体的には、協力会社ごとの作業割り当てをGIS上で行い、作業指示を兼ねた作業日ごとの作業確認書を印刷します。作業班ごとにタブレットを支給し、エリアマネージャーが作業の進捗に応じて出来高をタブレットから登録します。数百以上の各工事班から報告される進捗状況を、リアルタイムに地図上で把握することができます。また、出来高状況は地図上に色別で表示することができ、一覧表形式でも確認することができます。
 これまで事務所に提出される膨大な紙の作業報告書から、全体状況を把握するために多くの時間と手間がかかっていましたが、これにより、除染の進捗状況をリアルタイムに、どこからでも把握することが可能となり、除染計画の立案や進捗状況管理の合理化が可能となります。本システムにより、除染工事に関わる管理業務の作業効率が大幅に向上し、除染進捗状況の見える化を実現しました。

除染工事出来高管理システム画面サンプル
除染工事出来高管理システム画面サンプル


今後の展開

 今回開発した3つの合理化システムは、まず富岡町の本格除染工事に導入しますが、今後の除染工事やその他の工事にも応用が可能と考えています。
 鹿島では、確実かつスピーディーな除染を求める地元の期待に応えるべく、こうした合理化技術を積極的に活用していく方針です。


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