鹿島(社長:中村満義)は、住友大阪セメント(社長:関根福一 東京都千代田区)と共同で、コンクリートの収縮ひび割れを極限まで抑える、実用性の高い無収縮コンクリート「クラフリートHyper」を開発し、その実用性と性能を実建築物で確認しました。
「クラフリートHyper」は、収縮ひび割れを大幅に抑制するコンクリートとして2003年に開発した「クラフリート」を、無収縮コンクリート、つまり、収縮ひび割れの発生を極限まで抑えるよう改良したものです。
これまでに5件の実構造物に対して10,000m3以上の適用実績を上げています。竣工後数年を経過したSIA青山ビル(2008年竣工)、鹿島技術研究所本館研究棟(2011年竣工)でも有害なひび割れは生じておらず、極めて高い実用性と優れた性能が確認できました。
コンクリートのひび割れは、美観を損なうだけでなく、耐久性の低下に繋がると共に、漏水の原因になる場合もあることから、ひび割れを生じない、若しくは大幅に低減できるコンクリートに対する要望は極めて強いといえます。
コンクリートは乾燥と共に収縮します。コンクリートに拘束がなければ収縮するだけで応力は発生しませんが、実際には壁や床の収縮に対して、柱や梁、地盤からの拘束があるため、収縮に応じて引張応力が生じます。時間が経過してコンクリートの収縮が進行すると、引張応力が増大し、引張応力がコンクリートの引張強度を超えた時点で収縮ひび割れが生じます。特に乾燥しやすい薄い面部材などでは、乾燥収縮によるひび割れが生じ易くなります。
この収縮ひび割れに対する材料的な対策としては、あらかじめコンクリートを膨張させる膨張材の使用や収縮低減剤の使用などが挙げられますが、これらの対策を併用した無収縮コンクリートは非常に高価となるため、極めて限定された部位のみに採用されるのが現状でした。
そこで、鹿島と住友大阪セメントは、「クラフリート」の技術を基に、汎用的な材料のみで膨張量と収縮量を制御し、長期的に膨張ひずみが残存する無収縮性能を実現しました。
1.適度な膨張量の保持
低発熱系セメントと高性能膨張材を併用することで膨張材による膨張効果を最大限に引き出します。従来膨張材の使用量は、1m3あたり20kgという一定量で行われていましたが、実際にはコンクリートの調合や外気温などの影響により、膨張効果が異なります。鹿島では、広範な実験から構築した独自の調合設計式によってその影響程度を明らかにし、膨張材の使用量を調節して適度な膨張量を保持することに成功しました。
2.収縮量の低減
「クラフリート」では特に指定していなかった骨材に着目し、全国400調合を超えるレディーミクストコンクリートの乾燥収縮率データベースなど、鹿島独自の知見に基づいて、乾燥収縮を小さくできる骨材(岩種・産地など)を厳選し、ベースとなるコンクリートの乾燥収縮率を500μ以下の特級レベルとしました。これにより、収縮低減剤等の高価な混和剤を使用せず、骨材のみによる収縮量の低減を可能にしました。
こうした「クラフリートHyper」の特徴を生かし、SIA青山ビル、鹿島技術研究所研究本館研究棟などの実構造物に適用され、その性能が確認されています。
・SIA青山ビルディング
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建物概要
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建物概要
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「クラフリートHyper」の適用によって、ひび割れの無い高品質で美しい建物が期待できます。また、条件によってはひび割れ誘発目地が不要になる等の波及効果もあり、RC建物の外装設計の自由度が大きくなる効果も期待されます。
今後鹿島では、長期の耐久性が要求される公共建築物や、意匠性に特徴があり特に美観が要求される建物等に、「クラフリートHyper」を積極的に提案していく方針です。
プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。