[2013/10/31]

3Dレーザースキャナ変位計測システム「3Dマッチ」を開発

画像処理技術を応用してトンネル壁面の無数の任意点を確実に追跡

 鹿島(社長:中村満義)は、株式会社ソーキ(社長:都志益一)と共同で、3Dレーザースキャナと画像処理技術を組み合わせてトンネル壁面や切羽の任意点の動きを追跡することにより、トンネルの変位を、面的に、かつ3次元で測定できる計測システム「3Dマッチ(商標登録出願中)」を開発しました。
 本システムは、構造物の形状を面的に測定できる3Dレーザースキャナと、面の凹凸などの特徴を認識する画像処理技術(テンプレートマッチング)を組み合わせたもので、これまで3〜5箇所の限られた測定点で計測していたトンネルの変位を、無数のターゲットで計測したのと同様に、面的にとらえることが可能となりました。

 鹿島では、大きな土被りや断層などの影響で大変位が予想される山岳トンネル工事に本システムを積極的に適用し、トンネル壁面や切羽の変位を精度よく監視し、安全性及びトンネル品質の向上に役立てる方針です。


3Dマッチメイン画面
 (※)本システムにより測定したトンネル壁面変位と切羽押出し変位の描画イメージ(赤→青:変位大→変位小)
 3Dマッチメイン画面


測定器全景測定器(3Dレーザースキャナ)
 測定器全景 測定器(3Dレーザースキャナ)

開発の背景

 山岳トンネル工事では安全及び品質管理上、切羽周辺の地山の変位を監視することが非常に重要です。一般的に行われている変位計測は、一定間隔(概ね10〜30m間隔)で計測断面を設け、1断面あたり3〜5箇所にターゲットを設置して、光波測定器により測定点の変位量を測定します。しかし、この手法では、3〜5箇所の計測であるため、トンネル全体の挙動を正確に把握できません。例えば、トンネル背面に未確認の断層が存在する場合などの部分的な押出し変位を把握できず、支保の変状や崩落を生じさせてしまう可能性があります。
 これに対して、構造物などの形状を詳細に測定できる3Dレーザースキャナは、トンネル壁面の形状を面的に計測できることから、近年、トンネルの変位計測へ応用する技術が開発されています。しかし、3Dレーザースキャナによる測定は測定時点での形状を取得するだけで、面上の任意の点が過去のどの点から移動してきたのかを追跡することはできないので、任意点の変位量を正確に把握することは出来ませんでした。
 そこで鹿島では、画像処理技術(テンプレートマッチング)を用いて、3Dレーザースキャナによる測定結果から得られるトンネル吹付けコンクリート面の微細な凹凸形状から任意点を特定し、その点を追跡することで変位量を算出できる計測システム「3Dマッチ」を開発しました。

従来の計測と3Dマッチ
  従来の計測と3Dマッチ

3Dマッチの概要

 テンプレートマッチングとは、画像の中から特定のパターンを検出しマッチングする画像処理技術で、近年では防犯やセキュリティ管理の分野で、人物特定の技術として応用が進んでいます。
 3Dマッチでは、3Dレーザースキャナで取得した画像を用いて、変形前後のトンネル壁面の微細な凹凸のパターンを探し出しマッチングすることで、任意の点がどのくらい変位しているのかを面的に正確に把握することができるようになりました。従来の測定では3〜5箇所の測定点の結果から全体の変位を推測していましたが、本システムによりトンネル壁面の無数の任意点を確実に追跡でき、面的に変位を精度よく計測することが可能になりました。

テンプレートマッチングを用いた任意点の追跡方法
    テンプレートマッチングを用いた任意点の追跡方法

トンネル計測への適用

 実際のトンネル工事現場において、3Dマッチと従来計測(光波測定器)の結果を照合したところ、高い相関を保ちながら推移しており、本システムの実現場への適用性を確認しました。
 また、3Dマッチを切羽面の変位計測に適用しました。下図は切羽停止後約48時間の奥行き方向増分変位をカラーコンターで表したものです。赤く見える部分ほど前面に大きく変位している箇所です。3Dマッチにより切羽面の任意点がどの方向にどの程度動いているのか把握できるため、切羽の挙動を面的にかつ3次元的に把握することができます。これによって、切羽の安定性評価や対策工の効果的な配置計画にも有効に活用することができます。

切羽変位計測結果(奥行き方向変位)
  切羽変位計測結果(奥行き方向変位)

今後の展開

 鹿島は今後、大きな土被りや断層などの影響で大変位が予想される山岳トンネル工事へこの3Dマッチを積極的に適用し、更なる安全性及びトンネルの品質向上を実現していく所存です。


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