[2013/12/19]

長孔発破を用いてNATM工法での国内最高記録・月進359mを達成

〜東京大学大型低温重力波望遠鏡施設工事(神岡トンネル)〜

 鹿島(社長:中村満義)は、国立大学法人東京大学発注の神岡トンネル工事(岐阜県飛騨市、延長3,000m×2本の長距離トンネル)を、発破によるNATM工法で施工を進めてきましたが、「長孔発破」による急速施工に取り組んだ結果、2013年9月に国内最高記録である月進359mを達成しました。

長孔発破後のトンネル坑内
長孔発破後のトンネル坑内

神岡トンネル工事

 大型低温重力波望遠鏡施設工事(神岡トンネル)は、アインシュタインの一般相対性理論でその存在が予言された「重力波」を検出するための実験施設用トンネルの建設工事です。一日も早い研究利用に供するため、一度の発破で4m進行する「長孔発破」による急速施工に取り組みましたが、断面が15m2という小断面トンネルでの長孔発破を実現するためには、1.安全で確実な発破進行、2.効率的なズリ出し作業、3.良好な坑内環境のための換気 が大きな課題となりました。

急速施工を実現するための工夫

1.一発破進行長4mの長孔発破
 本工事では、15m2(掘削幅4.1m)の断面において一発破で進行長4m(通常の2倍の延長)という長孔発破を採用しました。発破パターンは、三重県熊野市〜尾鷲市で施工した「平成19年度 熊野尾鷲道路逢神曽根トンネル工事」(国土交通省中部地方整備局発注・2012年竣工)での長孔発破の経験を活かしました。
 発破では、削孔精度を向上させるために、水平レーザーを天端と両側壁の3箇所に照射し、差し角を制御しながら削孔しました。また、地質に応じた最適な発破パターンと火薬装填量を選定して安全かつ安定した長孔発破を実現し、掘削機械の入れ替え時間によるロスを削減することができました。

2.タイヤ工法によるズリ出し
 長孔発破を行っても、ズリ出しが効率的に行えなければ工程短縮につながりません。本工事では、路盤コンクリートを切羽の進行に合わせて適宜打設しながら、通常の2倍の能力を持つシャフローダーと25トンダンプトラックを組み合わせて使用し、また離合・方向転換場所を最適化するなどの工夫によって施工サイクルを改善、大幅な工程短縮を実現しました。

3.送・排気方式による換気方法
 長距離トンネル工事においては、良好な坑内環境の維持が作業性向上に大きく寄与するため、重機の排ガス、火薬発破の後ガス、吹付けコンクリート時の粉じん等に対する十分な換気対策が重要です。トンネル工事での換気は坑内への送気のみを行い自然排気が通常ですが、本工事では当初から送・排気方式を採用し、良好な坑内環境を維持しました。

 これらの工夫によって急速施工を実現し、2013年9月、NATM工法では国内最高となる、月進359mを達成することができました。


ドリルジャンボによる削孔ズリ積込用シャフローダー
ドリルジャンボによる削孔ズリ積込用シャフローダー

ズリ搬出用ダンプトラック送・排気方式による換気方法(写真奥が坑口方向)
ズリ搬出用ダンプトラック送・排気方式による換気方法(写真奥が坑口方向)

今後の展開

 トンネルの長大化が進む中、急速施工による工程短縮には大きなメリットがあり、長孔発破による掘削はその解決策の一つです。安全かつ確実な発破進行を確保するためには、地質に応じた最適な発破孔の配置と削孔精度の向上が必要不可欠であり、また削孔時間の短縮や適正な重機・換気設備の配置も非常に重要となります。
 今回の長孔発破による月進国内最高記録達成で得られた知見を基に、今後も工程短縮が望まれるトンネル工事へ長孔発破を適用できるよう、本工事では残りわずかとなった掘削作業においても引き続き長孔発破を適用し、種々のデータを蓄積しながら技術の確立を目指します。

工事概要

工事名  : 東京大学(宇宙線)大型低温重力波望遠鏡施設(掘削その他)工事
工事場所  : 岐阜県飛騨市
発注者  : 国立大学法人東京大学
設計者  : サンコーコンサルタント株式会社
施工者  : 鹿島建設株式会社
工期  : 2011年12月〜2014年3月(約28ヶ月)
工事諸元  : トンネル延長7,800m
    ・アームトンネル−延長3,000m×2、掘削断面積15m2
    ・作業坑−延長880m、掘削断面積15m2
    ・実験基地等−延長920m、掘削断面積15〜135m2

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