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プレスリリース

[2015/04/07]

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ロックボルトの削孔データによってトンネル周辺の地質状況を三次元的に評価

南久保山トンネル(宮崎県延岡市)において適用

 鹿島(社長:中村満義)は、多くの山岳トンネル現場で切羽前方探査として活用されている「削孔検層システム(※1)」を利用して、トンネルの周辺に打設するロックボルトの削孔データを解析し、その結果を地球統計学手法(※2)によって処理することで、トンネル周辺の地質状況を三次元的に評価するシステムを開発しました。
 今回、この手法を宮崎県延岡市で施工を完了した南久保山トンネル新設工事における、低土被り部の掘削時に適用し、その効果を確認しました。

ロックボルトの削孔データから地球統計学を用いて地山状況を三次元的に把握

ロックボルトの削孔データから地球統計学を用いて地山状況を三次元的に把握

    

開発の背景

 山岳トンネル工事では、工事の安全と安定した品質の確保のために、地山に応じた適切な支保パターンを選定することが必要不可欠であり、掘削時には目視確認ができる切羽の観察によって地山を評価し、支保パターンを選定(支保部材を選択)する方法が一般的です。しかしながら、地質の変化や断層などは必ずしも切羽に出現して目視確認できるとは限らず、トンネルに平行な断層が坑壁の背面に連続的に分布するような場合には、そのことを確認することができないため、補強や対策が手遅れとなり、大きな変状や坑壁の崩落に至る恐れがあります。
 一方で坑壁弾性波など、従来の手法を用いてトンネル周辺の地質状況を日常的に調べることは、工程や費用の面で大きな負担となり現実的ではないため、追加作業をすることなく迅速にトンネル周辺の地質状況を評価する手法が望まれていました。

本手法の概要

 今回、ドリルジャンボでロックボルトの穴を削孔する際に得た削孔データ「破壊エネルギー係数」を利用することで、特別な作業を行うことなく、日常の施工サイクルの中で得られるデータから地質状況を評価できるシステムを開発しました。
 本手法の特徴は以下の通りです。

  • 地球統計学を応用することによって、得られた破壊エネルギー係数からデータの無い箇所を高精度に推定することができ、周辺の地質状況を連続的かつ三次元的に把握できます。これにより、切羽観察では得られないトンネル周辺全体の地質状況まで把握でき、対策の要否を迅速に判断できるため、想定外の過大な変位や崩落などを防止することができます。
  • 三次元的に評価された地質状況は、破壊エネルギー係数分布の鳥瞰図や断面図として出力できるほか、例えば破壊エネルギー係数が500J/cm3(※3)以下などと値を特定すれば、特に悪い地山の分布を任意の方向や断面で示すことも可能です。
  • 南久保山トンネルでの地球統計学による地山評価例     

    南久保山トンネルでの地球統計学による地山評価例   

        
  • 地山が想定よりも悪くなる確率を空間分布として把握し、地質リスクをより明確に捉えることが可能となります。
  • 当社が先に確立した、削孔検層で得られた破壊エネルギー係数と弾性波速度の相関関係を用いれば、弾性波速度による地山評価を三次元的に表現することも可能です。
      (参考)ドリルジャンボ削孔データによるトンネル切羽前方の地山評価手法の開発 別ウィンドウが開きます
  • トンネル全線のデータを取得すれば、掘削中の地山評価に活用できるだけではなく、供用後の変状発生に対する対策範囲の判断など維持管理への活用もでき、CIM(Construction Information Modeling)への展開が期待できます。

現場での適用

 本手法を南久保山トンネル新設工事(宮崎県延岡市)の低土被り部で適用しました。地球統計学によって得られた結果は様々な方向からの出力が容易に行えるため、的確かつ迅速に地山状況を評価できることを確認しました。

今後の展開

 本手法は、発破のための装薬削孔データにも活用することができるため、今後、トンネル周辺だけでなく、切羽前方の地質評価も併せて行うことで、さらなるトンネル工事の安全及び品質向上を実現していく方針です。

工事概要

工事名  : 宮崎218号 南久保山トンネル新設工事
工事場所  : 宮崎県延岡市北方町南久保山山地先
発注者  : 国土交通省九州地方整備局延岡河川国道事務所
施工者  : 鹿島建設株式会社
工期  : 2013年2月~2014年9月
工事諸元  : トンネル延長381m、掘削工法NATM



※1 削孔検層システム
 発破用の爆薬を装填する穴やロックボルトの穴を開けるための施工機械(ドリルジャンボ)を利用し、切羽前方やトンネル周辺の地質状況を探査するシステム。削孔時の削孔速度や打撃圧等のデータを取得・分析し、破壊エネルギー係数によって評価を行う。

※2 地球統計学手法
 空間に分布するデータを分析し、統計的手法からデータが存在しない箇所の値まで推定することで、地盤全体の構造を評価する手法。石油などの埋蔵場所を予測する資源探査でも活用されている。

※3 500 J/cm3とは、約50kgの重りを1mの高さから落として1cm3の岩盤を破壊する時のエネルギーのこと。また、その岩盤の硬さのこと。

プレスリリースに記載された内容(価格、仕様、サービス内容等)は、発表日現在のものです。
その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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