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設計担当者のコメント

芝浦アイランド

1万人のランドマーク

江島 嘉祐

1棟で1,095戸という今までにないメガハウジングのため、様々なライフスタイルの違いに対応する高品質な居住空間や動線計画と、三方を運河に囲まれた島の最南端という立地特性を最大限に活かすことが求められた。設計初期段階の配棟計画で最も留意・検討した部分は、建物単体と島全体での遠景・近景からの視認性、海辺の街並みとしてのスカイライン、モノレールやレインボーブリッジ等からのシークエンス、北地区3棟の「群」や公園との関係性である。
「トライスター型」形状の選択は、要望する住戸数を消化し住戸間口を広く確保できること、建物の足元に一体的なオープンスペースを生み出すことが可能なこと、北地区3棟に対するボリューム感(存在感)を出せること、そしてランドマークによって住民の愛着が醸成できるためである。一方、その形態は120度の角度による居住者の見合いと近隣に与えるボリューム感が問題となった。しかしそれもアウトフレームチューブ架構の採用によって、見合いについてはほとんど解消され、しかもライフステージの変化に対応可能な室内に柱・梁の無い居住空間を提供できた。さらにデザインガイドライン:「アースカラーによる緩やかな3層構成」とフレームを利用した色彩によって、ボリューム感を軽減するよう分節化している。 内部は様々なライフスタイルが予想されるため、バックヤード関連と住民の動線を分離するなど動線計画にも配慮したが、建物中央にEVホールやゴミ置場を集約し、ウイング端部に階段を配することで利便性と安全性を高めている。また芝浦から北側に見える六本木等都心の眺望もすこぶる良いため、北側住戸を配して内廊下としたことで、プライバシー性を向上させる結果となった。

構造設計の立場から
「アウトフレーム形式による
チューブ構造」

後藤 仁

当社の超高層RC集合住宅の実績は、1974年に竣工した「椎名町アパート」を皮切りに、1996年には、45階の「ザ・シーン城北」が竣工する等、常に業界をリードし、豊富な実績を蓄積してきた。また、1993年からは、住宅専有部に柱・梁の無い空間の実現、構造と設備の明快な分離を実現するため、フリープランハウジングの開発を行い、チューブ構造による「ディアマークスキャピタルタワー」が2001年に竣工した。これまでは、基準階面積が1,000m2程度のものが多かった。「ケープタワー」は、かつて類のないメガハウジングであり、通常の超高層住宅の3棟分が1棟となった規模であった。 基本計画段階では、様々な平面形状に対する検討を行い、建築計画上、構造計画上、合理的な形状として「トライスター型」が生まれた。構造計画は、建物3棟分を建物全体の1棟として地震や風などの水平力に抵抗させることと、フリープランSI住宅対応空間を実現するため、外周部に沿った柱・梁を連続的に繋げたアウトフレーム・チューブ構造とした。各ウイングが120度毎に配置され、あらゆる方向の地震力に対してフレームがバランス良く建物全体で対応する架構としている。バルコニーの手摺を兼ねた外周梁は、逆梁として梁せいを大きくして建物の水平剛性、耐力を確保している。内部フレームの梁は、設備スリーブが出ないように偏平梁としている。外周フレームと内部フレームとはプレテンションハーフPCa板で繋くことにより、室内空間に柱・小梁を無くし、ライフステージの変化による間取りの変更が容易に行える高品質でサスティナブルな居住性の高い空間を実現した。
施工段階では、品質確保と工期短縮を実現するため、PCaの検討を現場と一丸となり進め、設計施工をフルに活かした施工が行われた。

設備設計の立場から
「次世代型設備システムを配備したメガハウジング

西田 健

様々なライフスタイルの違いに対応する共同住宅を計画する上、総住戸数1,095戸という「メガハウジング」「超高層」に起因する様々な設備的要因を検討し、規模を生かした効率的でメンテナンス性を考慮した解決をすることがこのプロジェクトにおける最大な課題であった。加えて「ホテルのような」プライバシーに配慮した空間とする建築計画との調和を図ることも重要であった。
システム的には電気は中間室を設けて3バンクに分けて配電損失を低減し、換気はバンク分けとそれぞれのウイング毎の系統分け、EVはバンク分け、給水とガスは建物中央から各階で展開する方式を採用して効率化を図っている。また住戸の共用インフラとなる排水管等は、リフォーム、長期修繕計画を配慮し、パイプスペースを共用廊下に設置することでSI(スケルトン・インフィル)とした。
その他にインターネット接続環境として、棟内光ケーブルによるFTTH方式(Fiber To The Home)を採用している。キャリアやプロバイダーを特定しないマルチキャリア方式とし、居住者が複数のキャリアから任意に選択できる方式を採用、また棟内には無線LANのシステムを配して多種多様なニーズに対応可能とした。さらに駐車場の入出庫やレンタサイクル・カーシェアリング、各共用室の利用等にITを利用した管理システムを採用し、大人数の居住者に対して、効率良いサービスを提供できるようにしている。 また、共用廊下の照明計画については建築デザインとの融合を図り、直接歩行する人を照らさないことによってプライバシー性を向上させ、ホテルのような空間を実現した。

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