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設計担当者のコメント

明電舎沼津事業所本館

自由であることの本当の意味

久保田 聡

広大な事業所敷地内に建つ事務所棟ということで、市街地のオフィスとはあらゆる面においてその違いが強く感じられるプロジェクトであった。建物に求められる各種与条件が非常に緩やかであるということで、構造・設備計画全てにおいて理想とすべき「無駄のない」建物を目指した。 一方、施主からは高い省エネ性能と安全性、そして高効率であることを常に意識するよう求められ、徹底的に合理的な建物であることに細心の注意を払うよう心がけた。結果として、建物からはあらゆる面で贅肉がそぎ落とされ、シャープなディテールにまとめられた、シンプルで端正な建物が出来上がったのではないかと感じている。設計者としてあらゆる面で本当に自由であることへの責務を強く感じさせられた。
そうした経験は私に大きな充足感を与え、とても意義のあるプロジェクトとなった。

構造設計の立場から

西 謙一

自由度の高い空間や斬新なデザインを実現するために、制震装置や免震装置を用いて建物の振動性状をコントロールしながら設計することも「構造設計」かもしれないが、合理的な骨組み計画や加工度の少ない部材設計を創造することも「構造設計」の醍醐味であることを本プロジェクトにかかわることで改めて実感できた。
作品としての建物の良し悪しを決める要素の一つに、「建物の表情からたくさんの主張が汲み取れる」ことがあるのではないか。この建物をつくりあげるのに携わった人たちそれぞれの主張が、豊かで多彩な表情として現われていることを願っている。

設備設計の立場から

平田 達司

沼津事業所のシンボルとしてのデザイン、積極的な環境配慮、管理しやすい設備をテーマとして計画を進めた。ビル用マルチを利用した躯体蓄熱、氷蓄熱、余剰蒸気を熱源とした外気処理システム、照明制御等々の環境配慮手法を採用し、これら設備は施主が新規に開発した中規模ビル用BEMSによって、消費エネルギー、室内環境をモニタリングしながら最適運用が図られる。設備システムについての初期段階での議論、検討から始まり、実際のつくり込みまで、施主と私たちとが一体となってまとめ上げたことで、両者の想いが結実し、機能的で合理的な建物となったと思っている。当事業所で2件目の担当プロジェクトであったが、この新本館の出来栄えは、1件目から続く施主との信頼関係をより強固なものにできたとの自負を持てるものである。

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