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設計担当者のコメント

リーガルコーポレーション本社

プランのチカラ

金子 俊介

洒落っ気のつき始めた14、5歳の頃、仲間内のマストアイテムはリーガルのスリッポン。夜な夜な磨き上げては意気揚々と学校へ履いていったものだ。四半世紀後、図らずもその本社ビルの設計を担当することになったが、親近感もあり、少なからぬ意気込みがあった。
計画に際し顧客から提示されたコンセプトは「変革、コミュニケーション、事業継続」。それに応えるべく検討を重ねた結果、柱のない整形の執務空間2つを中央のコアでつなぐ、いわゆるセンターコア形式で、コアに「オフィスの中心」としての吹抜けを設けるプランに行き着いた。
「もっと何かないの?」と言われても仕方のない極めてオーソドックスなプランである。これには正直迷いもあり、自問自答を繰り返したが、そのシンプルなプランを最後まで貫いたのは、同社の風通しの良い社風から、ワーカーが吹き抜けを上へ下へと自由に動き回って一体感が醸成されるに違いないと信じていたからである。
竣工後に訪れると、吹き抜けにかかる階段をワーカーが頻繁に行き交い、社長自らが階下の部署へ打合わせに降りて来られる場面に出会った。また他の方から「あの吹き抜けが成功だった」と言葉をかけていただくこともあった。そのたびに、当初描いたコンセプトからぶれることなく、シンプルながら力強いプランにまとめたことの意義を感じた。「プランの力」を改めて認識したのである。

構造設計がめざした方向

大輪 聡司

計画の初期段階から意匠、構造、設備の各設計担当者、そして発注者・利用者の方々が同じ方向に向かっていた気がする。それには計画案のシンプルな平面と明快なコンセプトの寄与が大きかったことは間違いない。
格子状のファサードは扁平柱と扁平梁で構成、これら外周の柱梁とセンターコアの柱梁で床を支え、地震力に対してはセンターコアと妻面にある耐震壁が負担。床は鉄骨梁を根太状に配して合成デッキを敷き込み、軽量化を図った。構造システムは単純明快である。そんな中にも、耐震壁に高性能スリット(KCJW工法)、杭頭の曲げ応力をコントロールするためのキャップリングパイル工法と、当社独自の技術も採用した。
構造躯体がほとんどそのまま建築の表現になっているが、構造的に無理はない。建物は四角いが、構造的には角ばっていず、自然体。もちろん、躯体の微妙な形状や寸法は、全体形状やバランスを常にイメージしながら細心の注意を払って決めて行く必要があった。意匠が進む方向を、ある時は先読みし、ある時は追いかけての作業。最終的には、結構良いところに着地できたのではないか。
3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震で浦安市では震度5強を記録した。敷地周辺は埋立地のため液状化の被害が発生し、建物の被害も一部で報告されたが、この建物には被害がなかった。構造設計者としてあの地震に対して思うことはたくさんあるが、この建物についてはイメージ通りに地震力を処理できたのだと思う。

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