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設計担当者のコメント

ザ・パークハウス新宿タワー

建築設計の立場から
「建築という行為と時間」

茨木 秀道

この計画は、古くからの住宅密集地の再開発事業の一部として1994年の事業計画決定を経て動き始めた。私が設計者として関わったのは2007年の街区コンペ着手から2012年の竣工までの約5年間だが、さらに遡ると、この再開発事業により整備が完了する放射6号線の都市計画決定がなされたのが1946年であり、約70年前に構想された都市計画の完成に立ち会ったことになる。建築をつくり上げること、都市をつくり変えることの長い道程をつくづくと意識させられた計画であった。
約5年間の関わりは事業主との濃密な付き合いを意味した。市況の影響を受けやすい分譲住宅を、事業主の強い思いを軸としてまとめ上げること。そのための協議とプレゼンテーションの積み重ねが、設計者として高い信頼を得ることに繋がったように思う。
関係者の熱意が結実した高い基本性能を持つ先進的な住まいは、都心の見通しの良い交差点に臨み、その静かな佇まいは末永く変ることがないだろう。

構造設計の立場から
「最新の技術と知見の活用」

河野 賢一

この計画では、住宅としての使いやすさ、住戸空間の多様なニーズに応えるフリープラン企画を実現するため、居室内の柱梁を可能な限り少なくする構造計画が求められた。そのため、鹿島が開発したHiRC技術と免震構造を採用、建物のコア部分に耐震要素の柱梁を集約し、それを中心に大型床版を周りに配置する構造計画とした。
構造設計は優れた構造技術に負うところが大きい。この計画で用いたHiRC技術は、技術研究所を中心に半世紀前に業界に先駆けて開発し、その後のニーズの変化により進化させたものである。また免震設計には関東平野で卓越する長周期域を回避する知見を反映している。このように当社には各分野のスペシャリストがそろっており、構造設計者は大変恵まれた環境のもと、最新の技術や知見の支援を得ながら設計を行っている。

設備設計の立場から
「環境と防災を考える」

中村 康隆

生活維持性能(LCP)を充実させた先進的な都心居住型住宅をめざすにあたって、設備設計として特に配慮したのは次の点であった。
共用部の照明には太陽光発電による電気を利用し、その発電量を共用部に設置したモニターに表示して居住者の省エネルギーに対する啓蒙を図っている。
雨水は地下ピットに設けた貯留槽に一時的に貯め、地域規模での雨水流出抑制に貢献すると共に、一部を屋外の潅水とし利用している。恵みの雨でもあれば、時としてゲリラ豪雨に変貌する雨水からいかに建物を守るか。建物内への浸入防止を第一に、敷地形状の特徴を考慮しつつ、万が一の場合には、安全な場所に雨水を溢れ出させる計画としている。
災害時の配慮としては、地震時に給水配管からの漏洩がないよう感震器連動の遮断弁を設置して水の確保を図り、自家発では72時間稼動対応のオイルタンクを設置して災害時以外でも保安用としてエレベーター、給排水ポンプなどを稼動できるシステムとし、より高い安心感の実現に寄与している。

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