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設計担当者のコメント

日本橋TIビル

建築設計の立場から
「立体的なボリューム感を追求する」

安村 茂

三方が道路に面するという、都心の中規模ビルとしてはこの上ない好条件。それを十分に生かしたいという思いから始めた外観の検討は、行きつ戻りつしながら、層ごとに強いくびれのある立体的なボリューム感をもった外装に着地した。とはいえ、くびれの奥行きは図面上は40cmでしかない。その効果がどれほどか、模型をつくってみても十分な確信を持てるとは言いがたかった。けれども実物がたち上がってみると、コーナー部分ではシャープにエッジが鋭く立ち、壁面にはリズミカルな深い陰影が刻まれ、新旧の石貼りの建物がたち並ぶ日本橋地区にあって独自の存在感を放っていた。懸念はきれいに吹き払われ、検討段階での迷走の過程が懐かしく思い出されたのだった。

構造設計の立場から
「構造設計者としての出発点」

伊佐治 勝大

設計初期から施工部署と議論を重ね、意匠性・機能性だけではなく施工性・経済性についてもバランスがとれた合理的設計が行われた。例えば、外周全面足場という施工条件を利用して高さ3mの屋上目隠し壁をRC化し、また彫の深いスパンドレルを持つファサードを跳ね出しスラブと片持ち外装支持材によって実現した。各部署が意見・工夫を持ち寄り、議論を重ねて、解が洗練されていった。この設計・施工の連携こそがゼネコンの組織力であり、面白さだと思う。

設計から現場監理まで担当するのは初めて。「自分で決めた部材で構成された建物が現実に建つ」という責任の重さに、期待とともに不安を抱えていたが、上司、先輩ほか多くの人々に支えていただきやり遂げることができた。完成した建物を見た時の達成感は忘れられない。ここで得た経験・知識は私の構造設計者としての礎になるに違いない。

設備設計の立場から
「意匠と融合した設備デザイン」

大坂 泰

建主側に設備に精通された方がおられ、設備のスペック、貸し方など、専門分野でのコミュニケーションがとりやすい環境で設計が始まった。特に力を入れたのは二つ。ひとつは冬場の湿度維持で、少し特殊な設計を建主側と協議の上で実施したが、運用後の稼動も想定通りで、良好な室内環境が保たれている。もうひとつはスパンドレル部に空調用の給排気口を設けたことで、施工や増設にも配慮されていて、意匠と融合した設備デザインになり得たと思っている。

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