ここから本文です
Top > Student Corner > 設計者のコメント > 群馬病院
設計担当者のコメント

群馬病院

建築設計の立場から
「ノルウェイの森のような病院を・・・ 」

高野 信

「ノルウェイの森のような病院を・・・」最初の打合せで顧客のトップが出された言葉である。ノルェイの森ってあの小説の?それから昔読んだ小説を読み返したが、今回要望された建物のボリュームと小説のイメージがなかなか重ならない・・・
「時計塔がほしい。最上階はアリーナに。病棟は2看護単位を1フロアに」次々出てくるリクエストに対し、プランをスタディし、模型を何度も作成する。時には仕上げ材のサンプルを担いでいって打合せを行い、顧客との合意形成を積み重ねる。社内の構造、設備の各担当者や現場所長、見積担当者とも対話を繰り返す。そうして1つ1つ課題をクリアしていく。ようやく竣工を迎えた建物はイングリッシュガーデンとケヤキの森による庭を囲むように静かに佇む。ファサードのボリュームの分割を意図した繊細ながらも芯の強さを示すバルコニーのPC製フレームの陰影は、季節や時間により刻々と表情を変えていく。 庭に面する渡り廊下を看護師と肩を並べて歩いている患者さんがいる。その様子を見たとき、ようやく「ノルウェイの森」のイメージとの重なりを実感できた。

構造設計の立場から
「緊密な共同の成果/ゼネコンならではの造り込み」

大井 英之

建築は一人の手では造れない。意匠、構造、設備それぞれの設計者の他に、施工や生産計画、資材の調達、作業員など大勢の人が関わりながら作り上げられて行く。立場を異にする人たちが独りよがりに陥らず、それぞれにプロフェッショナリティを発揮すれば、少人数で行う以上に素晴らしい建築が出来上がる。
この群馬病院は、計画の初期段階から社内外の様々な立場の人が、工期の適正化や建物価値の向上などについて多くの議論を重ね、それらが上手くまとめあげられて出来た建築である。構造設計の立場からは、施工担当の人とは各部の作り方を話し合い、資材調達担当の人とはより良い品質の材料を求めて検討を重ねた。こうした施工部署との緊密な共同は、ゼネコンならではの醍醐味だと思う。意匠や設備設計の担当者との間では、時として意見を異にする場面もあったが、思っていた以上の出来栄えとなった建築を目にしたときは、ともに取り組んだ大勢の人たちへの感謝の気持ちが自然に湧いてきたことを良く覚えている。

設備設計の立場から
「3つのテーマに取り組む」

飯田 純

設備設計担当として、この計画に際して取り組んだテーマは以下の3点だった。
A. 既存施設を生かしながらの工事。B. 長時間運転に伴うランニングコスト及び環境負荷の低減。C. 建物の使い勝手の作り込み。
Aについて。人間にたとえるなら血管・神経となる電力・給水・排水等のインフラ設備を24時間止めることなく盛り替えるために、顧客や工事関係者と検討と打ち合わせを重ね、無事に完了することができた。
Bについて。顧客と対話を重ね、提案を繰り返して、下階の余剰空気を最上階のアリーナに利用する空調方式、空調室外機のランニングコストを低減する散水装置の設置などを採用しランニングコスト・環境負荷の低減を実現した。
Cについて。モデルルームを作成して、看護や治療の動線等を検証・確認し、実際の計画に反映し、また顧客との打ち合わせを通して精神病院としての使い勝手、建物各部の配慮事項をマニュアルとしてまとめることができた。

Student
Corner