特集:鹿島本社ビル&鹿島赤坂別館が竣工

コンセプト―次世代ワークプレイスの追求

 企業では近年,従来の部署単位の仕事よりも,様々な分野の専門家で構成される横断的なチームによるジョブの比重が高くなりつつある。本社ビルの建設,本社機能の集約・再配置にあたり,それまでの業務プロセスが徹底的に見直され,仕事の進め方の無駄を排して効率的な業務・組織のあり方を志向した次世代のワークスタイルに適応する執務空間が求められていた。
 2003年7月に,本社再配置調整会議(総務部管財室,開発事業本部および建築設計本部とで構成)が結成され,社内コミュニケーションや社内外のコラボレーション(協働)の促進をテーマに,以下の3つのキーワードを掲げて計画が進められた。

(1)フレキシビリティ(柔軟性)
 様々な業務に適合した執務空間。ワークスペースの標準化。電子化による保管文書の削減で省スペース化を図り空間を効率的に利用。

(2)サステイナビリティ(持続可能性)
 地球環境に優しい“オン・デマンド”型の知的な省エネシステムを全面的に採用。

(3)セイフティ(安全)
 鹿島早期地震警報システムの導入。社員IDカードによる新入退館システムを導入,社外からのセキュリティの強化。

 これからの望ましいオフィスのあり方を追求した結果,部署,グループ(課)の垣根のないコミュニケーションを重視した開放的な空間が完成した。
 両ビルの執務フロアはともに,個人スペースを効率化し,会議室や打合せコーナーの共有化を図り,机,椅子,キャビネットなどの什器・備品類の規格を統一,モジュール化して,将来の組織改革,人員の変動などに柔軟に対応可能なレイアウトとしている。
 また,文書の保管期限を明確にし,紙で保管する必然性がない文書は電子化して保管する「ペーパーストックレス」を推進することとし,省スペース化,効率的な文書管理,情報の共有化による利便性の向上も図った。
オフィス基準階平面図(本社ビル)
標準化・規格化された什器・備品類で統一した執務空間(本社ビル)
プレゼンテーションルーム(本社ビル) 共用の会議室エリア(赤坂別館)
Design Concept
本社ビル
 「外観からディテールに至るまで,コンパクト,シンプルという考えで貫かれています。ガラスを多用した透明性の高いデザインで,白色の構造フレームを外側に出した外観は,旧赤坂別館,旧本社ビル1,2,3棟で確立された鹿島スタイルともいえる端正なデザインの流れを受け継いだもの。室内には柱がなく,ユニバーサルなオフィス空間とし,コーポレート機能は極力コンパクトに収めて無駄な空間をなくし,簡潔で効率的な平面計画としています」(建築設計本部建築設計統括グループ 塚本平一郎統括グループリーダー)

赤坂別館 
 「KIビルの隣地に建つ赤坂別館は,KIビルの外装デザインのディメンジョンにあわせ,細い柱形で表現しました。解体された旧赤坂別館のモチーフを使い,陰影のある和洋を融合したデザインとしました。港区の都市計画見直しにより生まれたKIビルと隣接するペアホースビルの余剰容積を連担建築物設計制度という手法を使い新ビルに上乗せし,建物をKIビル側に寄せ,9階までがオフィス,10階から15階は本社ビル分を併せた付置住宅が設けられています。無柱の大きなフロアプレートはワーカーに使いやすいように計画しました」(同 田名網雅人グループリーダー)
構 造
本社ビル
 「大地震等の災害発生時でも業務が継続可能で,防災拠点・災害対策本部として機能できるよう免震構造を採用(免震装置には鉛プラグ入り積層ゴムを合計22台使用)しました。耐震グレードは,最上級のSグレードとし,高い耐震安全性をスマートな構造フレームで実現しています」(建築設計本部構造設計統括グループ 村松匡太チーフ )

赤坂別館
 「上層階が住宅,下層階が事務所の建物で,それぞれの用途に必要とされる空間に対応した構造計画を行なっているため,構造架構を10階のトランスファービームによって切り替えています。また,耐震性能を高めるために制震構造(ハニカムダンパシステム)を採用しています。耐震グレードは,大地震でも大きな損傷が生じないAグレードとし,高い耐震安全性を確保しています」(同 吉貝滋グループリーダー)

 新しい本社ビルの完成に寄せて
 コンセプト―次世代ワークプレイスの追求
 適用されている環境設備の新技術
 こうして行われた大規模な移転
 本社の変遷