特集:ハウジング・プロデュース

鹿島の住宅づくりについてこう思う
Interview〈若きプロデューサーたちから〉

 住宅づくりは当社の事業のうち,極めて一般ユーザーに近い商品性を持つ分野である。99年東京23区で発売されたマンションは前年比42.1%増であり,特に首都圏での住宅市場は競争激化を呈している。これからは今までの実績ノウハウを踏まえ,当社ならではのコンセプト・ポリシーに基づく新たな住宅プロデュースが求められている。
 現在当社の住宅プロジェクトに携わる社員を代表して,開発事業・設計・施工・研究開発のそれぞれの立場から,若きプロデューサーたちに鹿島の住宅づくりについて語ってもらった。



清代 整 Development
住宅の企画・販売
「10年,20年先を見据えて」

開発総事業本部
検見川総合開発事務所

課長代理
清代 整(88年入社)
 再開発のような既成市街地での街づくりとは違って,新検見川では畑や草地を住宅地として開発してきました。区役所や小学校等も区画整理事業の中で整備されました。10年,20年かけて人が成熟していくようにこの街もこれから成熟していくものと考えています。
 実際に住宅販売を経験すると,顧客のニーズやクレームが明確に把握できます。その都度次の商品企画に反映させていくのですが,どうしても目にみえる内装や設備の豪華さに顧客の目はいきがちです。ここ新検見川では街づくりというトータルな視点でみて,環境共生とかコミュニティとか長く住まうことに対し非常に気をつかっているのです。
 当社の住宅づくりへのコンセプト・総合力による基本性能や品質の良さを,一般の人々にももっとPRして,鹿島のブランド力を活かしていきたいと思います。そのためにも,まずこの新検見川プロジェクトを早期に完成させて次の街づくりへノウハウを展開していかなければなりません。販売面で苦労することもありますが,一時的な流行に流されることのない商品企画を心がけています。(きよしろ せい)



宮崎 優美子 Design
住宅の計画・設計
「常にユーザー志向で」

設計・エンジニアリング総事業本部
建築設計部

宮崎 優美子(89年入社)
 住宅というのは,人が生まれ育って生活していくところです。一人ひとり住まい方が違いますから,戸建であれば100戸つくるときは100人の施主がいるわけです。マンションの場合は「集まって住む」という要素が付加され,敷地としても建物としてもプロデュースできる点が設計における面白さです。
 最近では,浴室やキッチン・洗面所等の水廻りの設備は格段にグレードアップしてきています。見かけの豪華さにとらわれず質のよいメンテナンスの容易なものを選び,プラン的にももっと大胆に女性の立場から提案をしていきたいと思っています。
 近年,住宅設計を取り巻く環境が激変し,鹿島の設計も集団として能力のベースアップが求められています。個々の個性を活かし集団の力に変えていくためにデータベース化を進めているところです。
 設計は立場的にエンドユーザーである顧客と直接接する機会に乏しいのですが,開発事業や施工の人たちと情報交換をしながら,顧客の生の声を反映していきたいと思っています。(みやざき ゆみこ)



山田 克浩 Construction
住宅の建設
「鹿島ブランドだからこそ」

豊玉北六丁目再開発
住宅新築工事事務所

工事課長代理
山田 克浩(87年入社)
 住宅は他の用途と違って,音とか振動とかに対して特にシビアに設計・施工していかなければいけません。ここでは当社施工の他物件と同じように戸境壁や床スラブ等の遮音性能をしっかりと確保しています。
 また200戸を超す規模なのに,顧客によるフリープラン・メニュープランを採用しています。これは住宅が売れないと仕様が決まらないということで,実は大変なことです。しかし新しい試みができるのもまたそれを確実に仕上げていけるのも鹿島ブランドだからだと思います。
 この建物はダブルチューブ構造を採用した当社保有の超高層技術であるHiRC工法となっています。室内に柱・梁が出ず,自由なプランニングが可能となっています。また,構造躯体の約90%をPCa化し,1フロア6日で工事が進んでいます。現場内は整然としていて職人さんにも作業環境が非常にいいと評判です。また同時に建設廃棄物も大幅に削減できます。地球にやさしくかつ作業がしやすいということが,当社ブランドとしての高品質にもつながるのではないかと考えています。(やまだ かつひろ)



武廣 絵里子 Reserch&Development
住宅の研究
「生きたデータがものをいう」

技術研究所
環境技術研究部

武廣 絵里子(84年入社)
 私は「住宅」,「クリーンルーム」,「美術館」等の空気質の研究をしています。近年,住宅の分野では健康住宅やシックハウス症候群といわれる問題が注目されています。この問題は人間が対象であり,個人差もあるため難しい面があります。問題自身の歴史も浅く,現状把握のために実際の現場で計測する事が必要なのですが,その度ごとに判明する事実が非常に多く,やりがいのある分野でもあります。現場を持っている建設会社ならではの研究への取組み方だと思います。
 今まで実際に当社が施工した新築住宅で生きたデータ収集を行い,化学物質の発生特性や挙動等の検証をしてきました。現場の協力により得られた貴重なデータを元に,健康に配慮した住宅づくりを行っています。また建材の選定や,施工中の作業員への健康管理にも役立てています。 国内の健康住宅の問題は第1ステージが始まったばかりではないでしょうか?環境への意識が高まる中,健康配慮住宅への要求はカビ,ダニ,結露,ニオイ等,多岐に渡り増加するものと思われます。現時点では化学物質だけが注目されていますが,トータル的な健康配慮住宅を目標に今後は研究を進めたいと考えています。(たけひろ えりこ)





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