テクノプラザ

今号の目次に
もどる
他の号を
みる

鉄道からの固体伝搬音の影響度予測手法の開発


−鉄道からの騒音影響を評価し、最適な設計H法選択が可能に−

 電車は走行する際に振動音を発生する。 このうち、地盤や建物の中を伝わる音(固体伝搬音)により、周辺の建物がどの程度影響を受けるかを予測し、最適な防止方法を提案するのが『鉄道からの固体伝搬音影響度予測手法』である。 これにより、鉄道沿線や駅上部であっても騒音の影響が少ない快適な空間を得ることができ、居住環境に対する要求が厳しいホテルやオフィス、住宅の建設が可能となった。

○過密な都市交通網のなかで
 近年都市部においては、土地の有効利用・利便性の確保等の理由から、ホテルや音楽ホールといった非常に静かさを求められる建物までも、鉄道に近接して建設される事例が多くなっている。 これに伴い、鉄道からの騒音を如何に小さくするかが大きな課題となった。
 鉄道からの騒音には、空気中を伝わって外壁や窓から侵入してくる「空気伝搬音」と、地盤や建物の中を振動として伝わり、最終的には壁や床などから騒音として放射される「固体伝搬音」がある。
 空気伝搬音は、壁を厚くしたり窓の遮音性を高めることで侵入を防止できる。 しかし、固体伝搬音は地盤や建物の柱、壁、床が振動を伝えるため遮断が難しい。そこで、躯体に振動を入れないようにするか、あるいは壁や床から騒音を放射させない対策が重要となる。

○目的別に選択
  本予測手法は、利用者のニーズと予測レベルに合わせて、「初期計画段階」「基本設計段階」「実施設計段階」の3段階に分けた。 計画の初期段階から詳細設計に至るまでの各段階に応じ、それぞれ予測検討ツールと、必要とする対策の程度に応じた固体伝搬音の防止技術を整備した。
 これにより、鉄道からの騒音影響が評価でき、最適な設計により充分な音環境の確保が可能になる。

○JR小倉駅ビルでの適用例
 現在来年3月竣工に向け建設中のJR小倉駅ビル(北九州市)では、14階建て駅ビルの10階以上にホテルが計画されており、固体音防止のために約160mの区間にわたって防振軌道を採用した。 これにより、騒音を 30デシベル程度低減できる予定である。
 さらに、駅ビルの4〜5階中央部分にモノレールが貫通するため、軌道と建物との間に防振ゴムを挿入し、万全を期している。
 本予測手法は、こうした実績のない工法を採用するに際し、大いに威力を発揮している。今後も積極的な活用が期待される。



軌道床下部分と柱の間に設置された防振ゴム(小倉駅)


小倉駅断面図


写真は月報KAJIMAより転載

All rights reserved, Copyright(c)1997 KAJIMA CORPORATION