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日本のシールド技術がアメリカで活躍

14th Street Tunnels, Park Road Tunnels 地下鉄工事
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 アメリカの首都ワシントンDCは、世界の政治の中心地である。ここでKECが施工を進めている二つの地下鉄工事が、今、最盛期を迎えている。
 ワシントンの地下鉄は、1969年の工事開始以来、路線が年々延長されている。現在はワシントンDC中心部への通勤手段として、地域住民の生活の足として、なくてはならないものとなっており、その快適性、安全性において、世界でもトップクラスを誇っている。

2工区を相次いで施工

 14番ストリートトンネルE−2c工区は、既設のUストリート駅からコロンビアハイツ駅までの掘削延長945mで、昨年3月に受注、4月に着工した。現在上り線トンネルの掘削は終了、下り線トンネルも約90%掘削を完了している。
 パークロードトンネルE−3b工区は、コロンビアハイツ駅とジョージア・アベニュー・ペットワース駅間の掘削延長965mで、昨年7月に受注、8月に着工した。現在工事はシールド発進立坑の掘削を完了したところである。この立坑は深さ25m幅20m長さ100mで、将来は地下鉄の操車場構造物となる。12月には上り線トンネル、1月には下り線トンネルの掘削がそれぞれ開始される。
 両工区との上下線2本のトンネルをシールド工法で施工するもので、掘削外径は6.3m、幅1.2mの4分割セグメントによる一次覆工、鉄筋コンクリートによる二次覆工を経て最終仕上がり内径は5mとなる。
 原設計では、1工区の上下線2本のトンネルを1台のシールド機で施工することになっていた。しかし同口径のシールド工事を相次いで2工区受注したことにより、それぞれの工区で上下線2本の2台のシールド機で一気に掘り進めることが可能となった。大幅な工期短縮ができる見込みである。

軟弱地盤での開放型シールド

 トンネルの掘削対象地盤は、砂、シルト、粘性土が入り混じった軟弱な互層構造で、地下水位も−5mと高い。地質から考えて、日本では土圧シールドが選ばれるところだが、ここは訴訟の国アメリカ。土圧シールドでは掘削中の切羽が見えないため、クレームがあった場合の対応が困難になる。そこで発注者側からは、開放型の半機械式シールド機の使用を指定された。そのため、多くの補助工法を組み合わせて施工を進めることとなった。まずトンネル全線と立坑部併せて210本のディープウェルを設置して、地下水位を低下させる。また、切羽の安定を図って地盤沈下を防止するため、トンネル内全線に薬液を注入。地盤改良を行った。グラウト削孔数はE−2c工区だけでも5,000箇所に達した。

複雑な線形をコンピュータ管理

 二つの工区はどちらも曲線施工が必要である。特にE−3b工区は、2本平行に発進された上り線と下り線のトンネルが、途中で上下に重なり、到達部で再び平行に戻るという複雑な線形をしている。このためトンネル線形管理に、ドイツ製のシステムであるトータルステーションを使ったコンピュータによる自動計測管理を導入した。このシステムは英仏海峡トンネル工事でも使用されたもので、シールド機の位置をリアルタイムに表示することができる。また、設計ラインからはずれたシールド機を、どのようにすれば無理なく最短で設計ラインに戻すことができるかなどの進路を計算し、表示する機能を持っている。このシステムを使用してE−2c工区では正確な曲線施工をすることができた。

アメリカでのシールド工事

 アメリカでは軟らかい地盤の工事が少ないため、作業員は概してシールド工事に不慣れである。都市土木といっても、日本で言う山岳トンネル工事がほとんどである。その中で、経験が少なく、質のバラツキもある地元ユニオンから来ている作業員を使っての施工、様々なクレームへの対応と、日本の工事ではあまりお目にかからない問題もたくさん出てくる。
 KECがアメリカ市場に参入して10年。競争の激しい市場の中で、これまでの経験と実績を生かし、多くの大型公共工事を手がけてきた。このふたつのシールドトンネルは、1997年に完成する。地下鉄開通は1999年の予定である。




写真は鹿島月報より転載

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