特集:鉄とコンクリートの世紀

あらゆる構造物の建設を実現
コンクリート

●多様化したコンクリート技術
 コンクリートは、水・セメント・骨材などからなる。非常に単純な構成である。そしてコンクリートは水とセメントの混合比によって、その用途が変化する。例えば、重力式ダムにおけるコンクリート、橋に用いるコンクリート、そして超高層ビルのコンクリート。同じコンクリートではあるが、その用途によって水とセメントなどの混合比などを変化させる必要がある。
近年このコンクリートの混合比の多様化が、あらゆる構造物への適用を可能とし、構造物の実現の原動力となった。
 現在では、地上50階・200mを越える高さでもコンクリートが打設できる。ここでの主役は、流動化剤の添加である。水が少ないとコンクリートはぱさぱさになって打設できず、逆に水が多いと強度が得られない。そこで流動化剤を入れ、水を増やすことなく柔らかくしたコンクリートを地上から圧送する。高層マンションでは、遮音性能が重要視される。ここでも遮音に高い効果を発揮するコンクリートが、快適な住生活を確保するのである。
 また、明石海峡大橋などの橋台や橋脚の建設には、セメントのほかに産業副産物のスラグやフライアッシュも混入され、海底におけるコンクリート打設に大きな効果が得られている。

●現場では施工性が重要

 当然の話、コンクリート打設には施工がつきものである。いくら性能のよいコンクリートを開発しても、現場において施工性が良くなければならない。特に大量打設の時代では、この施工性が重要となる。例えば、前述の超高層ビルにおいては、いかに効率良く、所定の品質のコンクリートを高所までコンクリートを打設するか、圧送ポンプの能力など打設に付帯する施工技術が必要不可欠となっている。

●新しいコンクリートの誕生
 コンクリートはその使用の多様化とともに、新時代を迎えている。従来の観念を超えた新しいコンクリートの誕生である。
 のこぎりで切れるコンクリート、曲げに強いコンクリート、水に浮くコンクリート、水中で打設しても、水に溶けないハイドロクリートなどこれまでのイメージを一新するコンクリートの誕生である。軽く加工しやすいこれらの素材は、ビルの外装などカーテンウォールへ適用されるなど新時代への無限の広がりと可能性を暗示している。

奥只見ダム
奥只見ダム(1959年竣工)
新東京国際空港
新東京国際空港(1978年竣工)

女川原子力発電所1号機
女川原子力発電所1号機(1983年竣工)
川崎人工島・風の塔 川崎人工島・風の塔(1997年竣工)

南備讃瀬戸大橋・7Aアンカレッジ
南備讃瀬戸大橋・7Aアンカレッジ
(1988年竣工)
神田川・環状七号線地下調節池
神田川・環状七号線地下調節池(1995年竣工)
ザ・シーン城北
ザ・シーン城北(1996年竣工)

別府明礬橋
別府明礬橋(1989年竣工)




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